AFP通信の記事で、「ビタミンサプリメントの摂取は多くの場合不要で、逆効果の場合もある」という研究結果が報道された。
以前から同じような研究報告はいくつも出されているけど、また出たということはアメリカ人のサプリメント好きは相変わらずなのだろうか。
記事は次のとおり。
サプリメントの摂取は大半の人で不要、逆効果も 研究
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2834166/7907095
2011年10月11日 13:45【AFP】
【10月11日 AFP】ビタミンサプリメントの摂取は大半の人では必要ない。それどころか、年配女性では死亡リスクが高くなる恐れもある――。米国医師会(American Medical Association)の内科専門誌「アーカイブス・オブ・インターナル・メディシン(Archives of Internal Medicine)」に10日、このような研究結果が発表された。
米国では、2人に1人が何らかのビタミン剤を摂取している。東フィンランド大(University of Eastern Finland)と米ミネソタ大(University of Minnesota)の研究チームは、200億ドル(約1兆5000億円)規模のサプリメント産業が既に栄養状態の良い国民の寿命を延ばすことに貢献しているかを探るため、米アイオワ州の女性を対象にした健康調査「Iowa Women's Health Study」のデータ(参加人数3万8772人、平均年齢62歳)を分析した。
1986年、1997年、2004年のサプリメントに関する自己申告を見ると、当初サプリを使用していたのは全参加者の66%だったが、04年にはこの割合が85%に上がった。
サプリを使用している人は健康的なライフスタイルを示す指標が高かった。サプリを使用していない人よりも非喫煙者が多く、低脂肪食の割合が高く、運動量も多かった。
ただし、サプリを使用した人の死亡リスクが使用しない人よりも高くなるケースも多数あった。特に、鉄分のサプリは総死亡リスクの上昇と強く、かつ用量依存的に結びついていた。
一方で、カルシウムのサプリは一貫して総死亡リスクの低下に結びついていた。用量依存性は不明という。
研究チームは、鉄分サプリの使用者で死亡リスクが高くなる理由について、サプリを使用せざるを得ない根本原因が存在する可能性を排除しておらず、さらなる研究が必要だと述べている。
■年配女性に有益なサプリはビタミンD3だけか
今回の結果を受け、医師らは、栄養不足を解消するために必要な場合を除き、摂取した場合のリスクを考慮すべきだと呼び掛けている。
セルビア・ニス大(University of Nis)のGoran Bjelakovic医師らは、解説記事で、「『多ければ多いほど良い』というパラダイムは間違いだ」と述べた。
今回の結果は、ビタミンE、ビタミンA、ベータカロチンなど一部の抗酸化物質のサプリが有害になりうることを示す新たな証拠だとした上で、「ビタミンとミネラルのサプリは、少なくとも栄養状態が良い人には予防措置としてすすめられない」と記している。
Bjelakovic医師らによると、年配女性、そして恐らくは年配男性にも有益と見られる唯一のサプリは、ビタミンD3だという。食事または日光暴露により十分なビタミンD3を得られなかった場合に有効だという。
なお、カルシウムサプリを摂取すべきかの問題については、「さらなる調査が必要」としている。(c)AFP
(記事ここまで)
記事をよく読むと、アメリカ人のサプリメント好きは「相変わらず」どころではなく、以前よりサプリメントを摂っている人は増えているようだ。
サプリメントによって健康になったり、長生きできるようになったりしないことは、ずいぶん昔の研究結果でもいわれていることだ。ビタミンE、ビタミンAなどの脂溶性ビタミンは、摂りすぎがよくないことは指摘されていた。またベータカロチン(ベータカロテン)は体内でビタミンAに変わる物質だが、これも摂りすぎは命を縮める可能性が、ずいぶん前から言われている。
鉄分に関してのコメントは、ここではずいぶん控えめに書かれている。鉄分を多く摂るほど死亡リスクが上昇するが、これは「鉄分を摂った人の身体には、鉄分を摂らなければならないような異常があって、そのために死亡リスクが高くなった可能性がある」ために、鉄分が悪者だとは断定できないという書き方になっている。
しかし鉄分の摂りすぎが良くないことの傍証はたくさんある。鉄分は赤血球の中で酸素を運ぶヘモグロビンに、必須の物質である。しかしそれ以外の細胞では、鉄はおおむね邪魔者だ。赤血球は約120日の寿命を終えると脾臓で分解され、できた鉄は門脈を通って肝臓に運ばれ、肝臓で蓄えられる。つまり、全身には流れていかないようになっている。
体にとって鉄が多い状態は、さまざまな病気を引き起こす。鉄は肝臓、膵臓、心臓、脳、肺、神経などの細胞に蓄積して損傷を与え、機能障害を引き起こすことがある。鉄が細胞を傷害する仕組みにはいくつかあるが、ざっと理解するには「細胞に鉄さびがたまっていく」と考えれば良いと思う。鉄欠乏性貧血(貧血の中では一番多い)以外の人は、積極的に鉄分を摂る意味はなく、むしろ体を錆びさせている可能性がある。
ウイルス性肝炎の人に、無理のない範囲で瀉血(血を抜くこと)をすると、生命予後が延長するという研究結果もある。40単位(一人の体内の血液量の1.5倍ぐらい)以上の輸血をした人は、鉄を取り除く治療が推奨されている。鉄が体に余分にある状態というのは、望ましい状態ではないと覚えていて良いと思う。
「貧血に○○○○○」というような宣伝を、テレビでよく見る。しかし世の中一般に「貧血」というと、立ちくらみのことを指している場合が多い。ふらつく感じがあるとか、元気が出ないとか、そういう人の中に本当の貧血(ヘモグロビンが足りないこと)の人は、どれくらいいるのだろう。
ヘモグロビンが足りない「本当の貧血」の人は、鉄分を摂取しても良い。でも本当の貧血かどうかを知るには、血液検査をしなければわからない。血液検査の中でも、MCVが小さく、フェリチンが少ないというような「確かに鉄欠乏性貧血」という証拠がなければ、鉄剤は投与してはいけない。
医者の中にも、ヘモグロビンが少なければMCVやフェリチンを見ないで鉄剤を処方する医者がまだいるかもしれないが、鉄欠乏性貧血以外の貧血が隠れている可能性があるので、そういう医者は危険。でも見分けるのは結構難しいかもしれない。
米国人は、ビタミンさえ摂っていれば大丈夫という「ビタミン信仰」が強い人が多いらしい。しかし何でも「過ぎたるは及ばざるがごとし」だし、普通の人が必要なビタミンは普通の食生活をしていれば(米国人は普通じゃない食生活の人も多い気がするが)摂れるものだし、だいたい機能性食品とか栄養補助食品の多くは「売ってやれ、儲けてやれ」の人が作ってるものだし。「摂らなきゃ健康な生活が送れない」と思っている人は、自分の洗脳を解く努力をした方がいいかも。
ビタミン売って儲けている人、鉄剤を売って儲けている人、逆鱗に触れたらごめんなさい。
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