
午後3時から6時まで、山梨県甲府市の山梨厚生年金会館で「がん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用推進のための講習会」が行われました。講師の一人として参加してきました。主催は「財団法人麻薬・覚醒剤乱用防止センター」です。
「麻薬・覚醒剤乱用防止センター」といえば、「ダメ。ゼッタイ。」のキャッチフレーズで有名な「麻薬・覚醒剤・大麻・シンナーの乱用をなくそう!」キャンペーンをやっているところです。今回の講習会は、医療用麻薬を上手に使いこなして患者さんの症状を楽にしようという内容ですが、資料が入っている封筒には大きく「ダメ。ゼッタイ。」と印刷してあります。前から言っているんですが、医療用麻薬の適正使用の講習会の時のために、別の封筒も用意していただいた方がいいのではないかと。
さて、講師は私を含めて三人。最初が私で「緩和ケアのこれまでとこれから」、続いて山梨県福祉保健部衛生薬務課主幹の古屋敏彦先生の「医療用麻薬の法律上の取り扱いについて」、休憩をはさんで前山梨大学医学部附属病院薬剤部麻薬室長兼緩和ケアチーム薬剤師の丹澤泉先生の「大学病院に置ける医療用麻薬の適正使用と現状」、最後に甲府のふじ内科クリニックで在宅ホスピスケアをやっている内藤いづみ先生の司会で質疑応答が行われました。
参加人数は最終的に100人近くになったのではないかと思います。しかし事前の参加予定者名簿を見ると、看護師さんや薬剤師さんの参加が多いのに比べて、医師の参加が圧倒的に少ない。当日参加の医師も数人いたようですが、この程度の人数では「新しい定義に基づいたこれからの緩和ケア」の普及に弾みがつきません。日本の医療は医者が変わらないとなかなか変わっていかない構造になっています。医者のモチベーションに働きかける活動は、特に日本の場合には非常に重要です。
私の話は、緩和ケアの定義(WHO)が2002年に大きく変更されたこと、それに基づいて国も「疾患の早期から緩和ケアが関われる体制」を目指していること、緩和ケアの需要はどこにでもたくさんあることを提示して、その後にモルヒネを中心とした鎮痛薬の使い方についての話をしました。
古屋先生の話も実務的な役立つ内容だったし、丹澤先生の話はうまい具合に私の話で手薄だったところを補うような内容になっていて、全体的にいい構成の講習会になっていました。最後の質疑応答では、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課の高橋正薬事専門官にも参加していただき、早ければ来月にも医療用麻薬の規制がもう一段緩和され、患者さんが使いやすくなる(たとえば入院中に、患者さんに渡した麻薬製剤がこぼれたりしても、管理者の責任は問わないなど)制度変更が行われることが報告されました。
山梨県内のあちこちから参加して下さった皆さん、お疲れさまでした。今日学んだことを地元に持ち帰って、がんを持ってしまった人ができるだけ快適に過ごせるように活かすとともに、まわりの人にも新しい緩和ケアの定義を広めるように、発信源になっていただきたいと思います。
さて終了後は、現在諏訪中央病院の緩和ケアに実習に来ている山口大学の学生さんと食事をして帰ろうかなと思っていましたが、内藤いづみ先生に誘っていただき甲府市湯村のちょっと奥にある「松山」という居酒屋で、内藤先生ご一家(息子さんは遠くて不参加)+αとごはんをご一緒させていただきました。びっくりするようなマスターのこだわりの料理が次から次へと出てきます。付け出しは「あんきも」だし、能登半島以外ではほとんど食べられないという「香箱がに」(ズワイガニのメス)は出てくるし、その他にもちょっと公には書きにくい飲み物が出てきたりと、おいしいものを満喫しました。 実は今日は内藤先生のご主人ピーターさんの誕生日祝いも兼ねています(だいぶ過ぎてしまったようですが)。おいしいものに舌鼓を打っていたピーターさんですが、数年前から「牡蠣アレルギー」になってしまったそうで、宮城産のおいしい牡蠣が出てきましたが、残念ながら食べられませんでした。3年ぐらい食べるのを休んで、アレルギーが解消されるのを待ってみるそうです。まあ、牡蠣以外にもおいしいものが山ほど出てきたので、十分満足はされているようでした。
帰らないといけないので午後9時頃には店を後にしました。おいしいものを食べると幸せな気持ちになります。ご家族団らんに押しかけてしまいましたが、ありがとうございました。またよろしく(何を?)お願いします。