
1月31日(月)午後7時から8時過ぎまで、「北信がん診療・緩和ケアネットワーク」の出張合同カンファレンスが、愛和病院のHearty Hall(ハーティーホール)でおこなわれました。
この「出張合同カンファレンス」というのは、「北信がん診療・緩和ケアネットワーク」の活動の一環で、1回目
は県立須坂病院で昨年3月1日に、第2回は長野市民病院で昨年11月29日(ブログ記事にし損ねました)におこない、今回が3回目です。
愛和病院のHearty Hallには、34人の参加者が集まりました。(直前まで別の会議をしていたので、会場への案内が全く不足していてすみませんでした。暗いし凍っている道を渡らなきゃいけないし、ご不便をおかけしました)

これまでの出張合同カンファレンスは、その病院の緩和ケアチームのカンファレンスに「北信がん診療・緩和ケアネットワーク」の世話人が加わるような形でおこないましたが、今回はミニ学会のような発表形式を採りました。
演題は「地域における愛和病院の役割
〜その人らしい生を支える1週間〜」で、愛和病院に入院してから一週間未満(1〜6日)で看取らせていただいた患者さんについて、看護師の視点から出来るだけ客観的にまとめて、発表しました。
入院期間が一週間未満だった患者さんは、入院全体のうち約2割でした。そのうち、他の病院からの転入院が6割強、在宅緩和ケアを受けていて入院した人は4割弱でした。愛和病院では、入院していただいた時に、病気についてどのような認識を持っているかと、今希望することは何かを、必ず聞いています。そのような患者さんやご家族の言葉をカルテから抜き出して、加工せずにそのまま発表しました。
短期入院となった方の中には、愛和病院に入院して本当に良かったと思ってもらえる方もあり、こんなに短いのなら転院しなければ良かったと思われる方もおられます。後者のパターンになってしまうと、大変残念な思いがご家族だけでなく、スタッフにも残ります。そうなってしまわないように愛和病院で心掛けていることも含めて、実際の症例も交えて発表しました。

続いて愛和病院の山田院長が「緩和ケア病棟から在宅ホスピスケアへ」という演題で、愛和病院と同じ医療法人に属する「居町往診クリニック」(在宅療養支援診療所)で看取らせていただいた方が、どこで亡くなられたかの発表をしました。在宅で亡くなられた方が51%、愛和病院で亡くなられた方が41%、紹介元などの急性期病院で亡くなられた方が9%でした。
世の中の在宅ホスピスケアを頑張っている診療所では、診ている患者さんのうち9割以上を自宅で看取っているところもあります。それに比べると、居町往診クリニックの在宅看取り率は約5割と、かなり低いことがわかります。これはどちらが良いかという問題ではなく、在宅看取り率が高いところは「どんな状況でも家で対応できる」力があるということですし、居町往診クリニックと愛和病院の組み合わせでは「家にいてしんどくなってきた時には入院できる」という強みがあることを示しているのでしょう。
居町往診クリニックで自宅で看取った率と、自宅から愛和病院に入院していただいて看取った率を合わせれば、91%以上になります。入院した理由として多いのは、息苦しさやせん妄(家の人が一睡も出来ないほど落ち着かないなど)で、痛みが理由で入院した人は多くはありませんでした。それから考えると、居町往診クリニックと愛和病院の組み合わせで「その時の状況により適した環境で緩和ケアを受けられる」ことは、大きな長所だと思います。
私が2年近く前まで緩和ケアをやっていた諏訪中央病院でも、入院でも在宅でも緩和ケアを受けられます。その時にも「その時の状況に応じて、望む場所で緩和ケアが受けられる」のは、患者さんやご家族にとって大きな自由と満足を得られる環境になっていると感じていました。愛和病院+居町往診クリニックでも(もちろん訪問できる距離に住んでいる方だけですが)同じ環境を提供できるというのは、緩和ケア医としては非常に恵まれているのかもしれません。
とまあ、私のことは置いておいて、山田院長の発表の後、全体で意見交換をしました。今回の合同カンファレンスの目的の一つは「地域の医療機関は愛和病院に何を求めているか」を知ることでしたが、それについては「とても良く頑張ってもらっている」という評価で、何を望むのかという意見はあまり出ませんでした。
発表の中で示した症例は「短期間だったけれども転院してもらって満足いただけた例」と「頑張ったけど時間の壁などで満足・納得が得られなかった例」のような2症例でしたが、「とても短い人は転院させない方がいいのだろう」と思われた方も多かったようです。でも一概にそういうわけではなくて、来てすぐに亡くなられた方でも大変満足して下さった方もいるので、「これで良かったのだ」と思ってもらえるような配慮が大切なのだろうと感じました。
夜なので病院見学はしていただけませんでしたが、地域の医療機関の方たちに愛和病院がどのようなところかを見てもらえて、愛和病院ではどのようなことを考え、どのようなことをしているのかを知っていただけただけでも、今日の出張合同カンファレンスをやって良かったと思います。

出張合同カンファレンスは8時過ぎに終わり、北信がん診療・緩和ケアネットワークの世話人のメンバーは、引き続き毎月恒例の世話人会をおこないました。今時間をかけて話し合っているのは、あちこちの地域でも進んでいるであろう「がん地域連携パス」についてです。
長野二次医療圏は、がん診療連携拠点病院が2つ、それ以外でがん診療を頑張っている病院もいくつもあり、緩和ケア病棟も2つあり、緩和ケアチームがある病院はだいぶ増えてきていて、在宅緩和ケアもそれなりにあるという、比較的恵まれた地域だと思います。その地域の中で、がんになった人が途方に暮れなくて済むような、「医療があって助かった」と思ってもらえるようながん診療・緩和ケアネットワークを作るにはどうすればいいか、毎回ああでもないこうでもないと意見を出し合いながら、でも着実に前には進んでいる気がします。
今回は、緩和ケアが必要になった時にスムーズに緩和ケアを受けられるようなパスにしていくには、何をどのように工夫すればいいかについて、かなり時間をかけて話し合いました。いつもは午後9時には終わる会議が、出張合同カンファレンスがあったこともありますが、9時半頃になってようやく終わるという白熱ぶり。でもみんな、地域でがんにかかった人やそのご家族ができるだけ納得・満足できる医療を提供しようと、本当に真剣です。
終了時間は遅くなりましたが、中身のある意見交換ができたような気がします。結論は急がず、少しずつでも、いつも柔軟に進化し続けるネットワークになっていけばいいなと思います。参加した皆様、お疲れさまでした。
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