奈良県は、
11月16日に大阪高裁で一審と同様「県立奈良病院の産科医の宿日直は、労働時間である」という判決が出されたことを不服として、11月30日付けで最高裁に上告した。
記事は次のとおり。m3.comから。
11/30号 県が最高裁に上告、奈良・時間外手当裁判
2010年11月30日【m3.com】(医療従事者専門サイト)
奈良県は11月30日午後5時過ぎから記者会見を開き、奈良県立奈良病院の二人の産婦人科医が、未払いだった時間外手当(時間外・休日労働に対する割増賃金)の支給を求めた裁判について、最高裁に30日付けで上告したと発表しました。
大阪高裁は11月16日、「宿日直勤務は、実際に診療に従事した時間だけではなく、待機時間を含めてすべて勤務時間」であるとした一審の奈良地裁判決を支持する判断をしていました。
記者会見した県医療政策部長の武末文男氏は、「この裁判が起された当時の、県立奈良病院産科の過重な労働環境を争うものではない」とコメント。その上で、今回の判決によれば、24時間365日対応する地域の救急医療について、(1)宿日直勤務のすべてを時間外勤務で対応するとなれば、労働時間の制約があり、入院患者の急変や夜間休日の救急に対応できなくなる、(2)交代制勤務については、医師不足の状況の中、直ちに実施することは困難になる、としました。
「これは奈良県だけの問題にとどまらず、全国の救急医療を担う病院などにも同様のことが言える。県では対応が困難であり、厳しい医師の労働環境、全国の救急医療の状況、医師の需給状況などの現実的な状況を踏まえた慎重な判断を上級裁判所に求める」(武末氏)。
(記事ここまで)
奈良県は、何を考えているのだろう。宿日直業務という名目で病院に泊まっていても、実診療がそれなりにあればそれは「宿日直とは認可しない」と労働基準監督署が勧告している。以前は労働基準監督署は何故か「見て見ぬ振り」をしていたが、最近では救命救急センターなどから出た「宿日直扱い」の申請は、労働基準監督署に却下されるようになっている。
現状の宿日直が労働基準法違反だとわかっているからこそ、「この裁判が起された当時の、県立奈良病院の過重な労働環境を争うものではない」とコメントしたのだろう。それをわかっているなら、裁判を起こした医師を相手に最高裁へ上告するというのは筋が違う。国を相手に裁判を起こすべきではないのか。
宿日直を含む医師の労働に労働基準法を原則通りに適用すれば、全国の救急医療を担っている病院は、医師不足で診療がままならなくなる。労働基準法に定められた時間外手当を支払ったら、それに見合った診療報酬が設定されていないことから、病院の経営もままならなくなるだろう。だから労働基準法違反をそのまま放置すべきだという理屈なのだろうか。
そうではなさそうだということは、武末氏のコメントからは、何となく窺える。ならば、なぜ原告医師と最高裁まで争うのだろう。原告医師に対しては高裁判決を受け入れて時間外手当を支払い、奈良県としては「国の無策や愚策の結果で、現場で労働基準法が守れない状態になっている」として国を訴えれば良いではないか。
もしかしたら、最高裁で2審判決を支持してもらって、大阪高裁の判決を「判例としてより強固なものにするために」上告したのかな? それならあっぱれだとは思うけど、まさかね。
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