テレビCMで最近まで「補助金9月末まで!」と言っていたエコカー補助金。最近は「もうすぐ終了」などに変わっているが、今週末で予算が尽きる可能性が高まってきた。少なくとも「9月末」までは持たない。
記事は次のとおり。
エコカー補助金、今週終了?…未反映9万3000台が発覚
http://response.jp/article/2010/09/07/144797.html
9月7日(火)1時0分配信【レスポンス】
次世代自動車振興センターは6日、エコカー補助金の申請に関して未反映の約130億円、9万3000台の修正を「エコカー補助金の執行状況」により発表した。3日現在の補助金残額は約218億円となり、今週一杯で打ち切りとなる可能性が高まった。
3日の申請受理金額も約62億円、4万6000台分となり、これまでの40億円ペースであと5日、3日の60億円ペースが続くとあと3日で終了となりそうだ。
同センターの発表によると、8月下旬以降の申請件数の急増に伴い、申請は確かに受理していたが、翌営業日中に公表された申請受理金額には反映できていなかったものが一部存在していた。このため、改修したシステムに基づき申請データの改修を行なった、としている。
直近5営業日の1日の申請受理金額は、8月30日・43億円、31日・42億円、9月1日・38億円、2日・31億円、3日・62億円と、平均すると1日あたりおよそ43億円を消化している状況。補助金総額約5837億円に対して申請受理金額は約5619億円となった。
(記事ここまで)
エコカー補助金は、景気の腰折れを防ぐために、平成22年3月31日までだったのを9月30日までに半年延長したが、「予算を使い切ったらその時点で終了」ということも、あまり大きな声ではないがちゃんと言っていた。予算を使い切る方が先に来たらその時点で打ち切り、再延長はしないとも追加発言していた。
ここで売り上げ減を食い止めるために、自動車会社各社の中には「もし申請して通らなかったら、その分はこちらで負担します」などと言っているところも出てきている。その補填を9月末まで保障する動きも出ている。そんなことを各社がやり始めたら9月末までの約3週間、1台あたりの売り上げが10万円ほど減ることになる。
そうやって販売台数を確保しても、10月からはエコカー補助金特需の反動で、販売台数が激減することが確実視されている。そりゃそうだ。ここまでの好調な売り上げは、需要を先食いしているだけなんだから。ここで台数を稼ぐことがいいのか、売って損するのを避けて会社の体力を温存するのがいいのか。
どれぐらい需要を先食いしてしまっていて、今後どれぐらい冬の時代が続くのかは、これからの「日本全体の景気」によって変わってくる。景気がそれなりに良くて国民の可処分所得が守られれば、今まで通りのペースで買い換えられていくだろう。しかし景気が沈めば、できるだけ買い換えを先延ばししたり、一家で複数台所有していれば車の台数を減らしたり、乗らない選択をする人も増えて、売り上げ台数が少ない状況が続くだろう。
菅直人首相は、民主党代表選の街頭演説では「雇用」ばかりを連発している。この人は選挙のたびに「ワンフレーズ」を変えてくるが、どうも中身を理解して主張するフレーズを決めているようには見えない。ざっと眺めて「これ良さそうだな」と思ったものについて、中身をよく勉強することもなくタイトルだけを連呼しているのではないかと思う。それを見ると、景気は当分良くなりそうもないなと思ってしまったりする。
補助金の反動で販売台数激減が続いたらどうなるか。日本の自動車産業は、コスト削減を極限まで進めている。下請け部品会社は現状でも、潰れるか潰れないかのぎりぎりの価格で親会社に納品しており、人件費などの固定費は減らせないので納品数が減れば採算ラインを割り込む。親会社だって人件費の削り込みや社会保障費削減の根回しなど相当頑張っている。そうやって国際競争力を維持しているわけだが、円高によって人件費が割高になるなど、相当苦しんでいる(と表向きには大声で言っている)。
親会社が本当に苦しいかどうかは、海千山千の経営者たちのいうことだから、そのまま鵜呑みにするべきではないかもしれない。でも10月からの国内市場の動向は、エコカー補助金があった期間に比べれば苦しくなることは疑いようがなく、それが長引けば本当に赤字になる親会社も出てくるだろう。世渡り上手な会社はなんとかしてもらって、真面目な会社は割を食うという構図がさらに強まり、潰れる有名企業も出てくるかもしれない。
日産はマーチを海外生産して逆輸入し、ベーシックグレード車は100万円を切る価格で売っている。スズキも海外工場で組み立てる車の部品について、日本で調達するのは諦めて現地調達率を高めるなど、コスト削減に躍起になっている。こうやって再び日本の産業は空洞化していくのだろうな。
トヨタがどのような手を使ってこの窮地を切り抜けるのかは、見ものだと思っている。本体を守るために下請けがバタバタ倒れるようなことをすれば、日本の自動車産業全体が壊滅状態になるかもしれない。そうならないことを祈る。でもこれまでのように税金をおまけしてもらったり補助金を入れてもらったりして生き延びるのでは、本当に強い企業とはいえない。
勝てば何でもいいんだという価値観よりは、本当の実力を持つ者の方が価値が高いという価値観の方が、私は好きだ。トヨタの製品は、リコール騒動などはあったが、十分実力を誇っていい出来だと思う。だから、もうちょっと値段を上げても買ってもらえるんじゃないかと思ったりもするが、各国がなりふり構わぬ「国内産業延命手当て」をジャブジャブ注ぎ込んでいる間は、日本もジャブジャブしないと太刀打ちできないのかな。
どの国が最初に耐えられなくなるかのチキンレースをしているように見えてしまう、今日この頃の実体経済。そのうちどこかの国か数カ国が協調してバブルを引き起こして、それで世界経済が一息ついてしまったりするのかもしれない。ある程度の金融経済のバブルがなければ実体経済は持たないと、オバマ大統領も内心は思っているのではないかと思うし。絶対口には出さないけれど。
というわけで、今後の影響が心配になってしまうエコカー補助金終了のニュースだが、米国のエコカー補助金のように
「補助金で売れたのは外国の車でした」となってしまわなかっただけ、良かったと考えることにしよう。でもやっぱり先行き不安だなあ。
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