民主党の鈴木寛文部科学副大臣(医療現場の危機を打開し再建する国会議員連盟幹事長)は、ロハスメディカル4月号に「地域医療の崩壊を防ぐために、今回の診療報酬改定は頑張った」と書いている。
記事は次のとおり。
地域医療崩壊に歯止めを
特定機能病院の入院収入は平均7%増
医療現場危機打開・再建国会議員連盟幹事長
文部科学副大臣
鈴木 寛
2010年4月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
http://medg.jp
診療報酬引き上げなどが、厚生労働省の中央社会保険医療協議会で決まりました。
民主党がマニフェストで約束した「入院診療の増額」実現のため、初めて政府側で財源配分を決め、入院診療は4400億円、外来診療は400億円の増額です。10年ぶりのプラス改定を果たしたことで、地域医療の崩壊に歯止めをかける一歩となります。
特に国立大学の附属病院の運営費交付金は、5年間で377億円削減され、病院経営を圧迫していました。そこで、09年度の補正予算と10年度予算で、大学病院などへの支援に487億円を計上しています。平年度ベースで約200億円になります。
これに約760億円の診療報酬の増額が加わるので、地域医療の最後の砦を担う大学病院など特定機能病院の収入は、約1000億円弱の改善が見込まれます。
今回は命に直結する救急や産科、小児科、外科に手当てするため、救命救急センターや新生児集中治療室を設置した病院の入院料や、ハイリスク分娩加算などを優先し、大学病院などの入院料改定率は7%増。
また、地域医療に貢献する診療所を評価するため、24時間体制で患者からの問い合わせに応じる開業医への加算も新設されました。
今後の課題は、地域の慢性期医療や病院と診療所の連携など、今後の高齢社会を見据えて切れ目のない医療を提供できる体制を評価していくことです。2年後の次回改定に向け、様々な分野で貢献している医療機関が正当に評価されるよう、エビデンスに基づいた報酬額算定へ制度設計を見直すことも必要です。
医師不足解消のために医学部定員が増員されましたが、現在の勤務医の負担軽減のため、コメディカルとの役割分担も課題です。年末に閣議決定した「新成長戦略」で、今後我が国はライフ・イノベーションによる健康大国戦略や、科学・技術立国戦略を行っていくとして、医療・介護・健康関連産業の成長産業化や海外市場への展開、研究開発促進などを進めていくことを決めました。本来大学病院は日本の医療をリードしていく存在であり、地域医療とともに、医薬品・医療機器の開発研究や、国際支援の分野などで活躍できるよう環境を整備していくことも求められます。
(この文章は『ロハス・メディカル』4月号に掲載されました)
(記事ここまで)
全体的な評価をあちこちで聞くと、たしかに大学病院などの特定機能病院は、今年度から今までに比べてだいぶ楽に生きていけるようになりそうだ。鈴木寛氏が書いているように、診療報酬だけでなく、その他の予算措置などもかなり手厚くなっている。「今後の課題」も掲げられており、これで終わりではないという安心感も持てる。
しかし、医療崩壊を防ぐためにマニフェストに掲げられていた国民との約束が、かなりの部分実行されていないことには触れていない。その点が、やや手前味噌な報告のような気がする。「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」の幹事長という立場なのだから、「日本の医療を再生に向かわせる確固たる意志」を、もっと強く示してもらいたい。
自民党時代にさまざまな手法で続けられてきた「医療費抑制政策」の歪みを、政権交代後半年で全部解消しろというのは、とても無理だということはわかる。野党だった頃には見えなかった「変えるのに時間がかかる歪んだ構造」が見えてきたために、現実的な対応にはかなりの時間がかかるだろう。
しかし今回の診療報酬改定に関していえば、「先進国並みの医療費を目指す」、つまり大幅増額を目指すとしていたマニフェストに比べて、実際にはゼロ改定に終わっている(プラスだと評価するには、あまりに小さいプラス幅。しかも後発医薬品使用促進によるマイナスを加味していないなど、ごまかしもある)。
これまでの構造と折り合いをつけながら良くしていこうというバランス感覚は持っていても良いが、これまでの構造に配慮するあまり、あちこちで必要な医療が消滅してしまうので本末転倒だ。
参院選で勝利するためには、民主党の実績をアピールしておく必要があるのだろうとは思うが、まだ結果の出ていない今年度改定に肯定的な評価をするよりも、「今後への意気込み」に力を入れてくれた方が、私は投票したくなるような気がする。まだ守りに入るほど長く与党をやってないんだから、強気で行ってほしい。
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