2008年度のがん検診受診率は、それ以前に比べて軒並み低下していたことが判明した。2008年度から導入したメタボ検診の影響ではないかといわれている。
記事は次のとおり。
市町村のがん検診受診率低下 メタボ健診で混乱か
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/life/CO2010041601000889.html
2010年4月16日(金)18:46【共同通信】
08年度に市町村が実施した胃がんや肺がん、大腸がん検診の受診率が前年度に比べ落ち込んだことが、厚生労働省の調査で分かった。自治体関係者は、08年度に始まった特定健診(メタボ健診)実施による混乱が影響し、受診率が低下したとみている。自治体では「特定健診とがん検診の周知がうまくいかなかったり、一緒に受けられなくなったりした」(名古屋市)などとしている。
(記事ここまで)
具体的な数字はネット上に見つからないので、続きは信濃毎日新聞から。
厚労省は、市町村に加え、職場などで実施されるがん検診の受診率を07年度から5年以内に50%以上にするがん対策推進基本計画に基づき、昨年推進本部を設置、受診率向上を目指している。
大腸がん検診は前年度まで受診率が上昇傾向にあったが、2.7ポイント下がり16.1%に低下。前年度唯一20%を超えていた肺がんは17.8%(3.8ポイント減)、胃がんは10.2%(1.6ポイント減)と下がった。子宮癌は19.4%(0.6ポイント増)、乳がんは14.7%(0.5ポイント増)とわずかに上昇した。
07年度までは、市町村が基本健康審査とがん検診を実施。しかし、08年度に基本検診が廃止され、代わりに始まった特定検診は市町村運営の国民健康保険(国保)に実施が義務づけられ、がん検診と実施主体が分かれた。
市町村で基本検診を受けていた健康保険組合加入の会社員の妻などが、健保組合で特定検診を受けるようになったことも影響した。
県内のがん検診受診率で増加したのは子宮がん検診のみで、07年度比3.6ポイント増の19.2%。その他は減少しており、胃がんは8.8%(1.1ポイント減)、肺がんは13.8%(3.8ポイント減)、大腸がんは16.8%(3.0ポイント減)、乳がんは5.7%(2.4ポイント減)だった。
(記事ここまで)
厚生労働省は「がん対策推進基本計画」を策定し、2007年からの5年間で「がん検診の受診率50%以上」を目指している。各都道府県や市町村でもそれなりに意識はしているようなのだが、少なくとも2008年度に関しては大失敗である。
メタボ検診を「やります」と厚生労働省が発表したのが実施の1年半前。その時からこのブログではメタボ検診の準備不足、おかしさ、がん検診への悪影響を
取り上げていたが、その後の周知も全くなっておらず、メタボ判定基準も「日本だけの特殊な基準」であることが明らかになり、数年後の集計で結果がついてこなかったら「世紀の愚策」といわれることになるだろう。
厚生労働省の「がん対策推進室」は、圧倒的な人手不足ながら、よく頑張ってきていると思う。でも人手不足や人材不足は厚生労働省だけではなく、各自治体の保健医療福祉担当者も足りないし、現場の医療従事者も足りない。どんなに良いがん対策推進基本計画を絞り出しても、現場が動けないのではどうしようもない。
がんは日本人の死亡原因の第一位であり続けているのに、検診受診率が下がっていったら死亡者数が減るわけはない。日本人の疾病分布や体質を考えると、メタボ対策は市町村に負担をかける「メタボ検診」なんかせずに「メタボ撲滅キャンペーン」をやっておいて、浮いた力を質の良い有効ながん検診に振り向ける方が、良いのではないかと思う。
長野県のがん検診受診率の低下は、全国平均に比べても大きい。受診率そのものも、大腸がん以外は全国平均より低いが、全国では受診率が増加している乳がん検診でも長野県では8.1%から5.7%へ低下するなど、よほど県も市町村も力を入れられなかったのかなと思う。
これからは団塊の世代が、がん適齢期というか、がんが発見されやすい年齢層に突入する。これから数年のうちに、有名人ががんになったとか、がんで亡くなったというニュースが、これまでよりさらに急増するだろうと予想している。その時に日本のがん検診やがん治療体制がスカスカだったら、国民はずいぶん不安になるだろう。
がんを自覚症状で発見できるのは、ほとんどが進行がんだ。早期がんや、進行がんでも治せる状態のうちに見つけようと思えば、がん検診や人間ドックなどの検査を受ける必要がある。検診の中には、種類によってはあまり有用とはいえないものもあるが、より良い検診を目指して国や地方自治体でも検診内容を検討しており、今後も少しずつ良くなっていくだろう。
検診をきちんとやればがんの死亡者数を減らせそうなことは、日本より受診率が高い他の国の報告を見れば、まず間違いないだろうと思う。今回の調査結果を見ると、がん検診を受けていない人の方が圧倒的多数ということになるが、受けずに進行がんや末期がんで発見されても後の祭り。それでいいという人はいいけれど、治せるものは治したいと思う人は、がん検診やドックを受けてみて下さい。
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