寒天や海苔は「カロリーがあっても吸収されない」とされて、ダイエットには最適と言われてきた。ところがこのたび、日本人の一部にはそれを分解・吸収する人がいるかもしれないことが仏パリ大学の研究で判明した。
記事は次のとおり。
ノリや寒天、日本人は栄養に…ダイエット?かも
2010年4月8日【読売新聞】
寒天の原料のテングサやノリなどの海藻(紅藻類)は人間の消化酵素で分解できないため、ダイエット食品としても使われているが、日本人の一部は腸内細菌の力を借りて、紅藻類を分解して栄養分にしていることが仏パリ大学の研究で分かった。北米では、こうした腸内細菌を持っている人は見つからず、食習慣の違いが影響しているらしい。8日付の英科学誌ネイチャーに発表する。
研究チームは、紅藻類を分解する酵素を海洋の微生物から発見。公開されている遺伝子のデータベースを調べたところ、この酵素の遺伝子を持つ陸上の微生物はいなかったが、日本人の腸内細菌から見つかった。
日本人では13人中5人がこうした腸内細菌を持っていたが、北米の18人で持っている人はいなかった。日本人は古くからノリなどをよく食べており、腸内細菌は、ノリなどと一緒に口に入った微生物から紅藻類を分解する遺伝子を取り込んだらしい。
東京大学の服部正平教授(情報生命科学)は「腸内細菌は健康や病気に影響を与えている。解析が進めばコンニャクを分解する腸内細菌なども見つかり、食品の機能評価も変わるかもしれない」と話している。
(記事ここまで)
まだこれだけでは、日本人の一定割合の人は寒天や海苔がダイエットに向かないと、決まったわけではない。
その理由は、「日本人には紅藻類を分解する酵素を持った腸内細菌がいる人の割合が多い」ということが、データベースをひっくり返したらわかっただけということだから。腸内細菌は腸の後半の「大腸」にいて、栄養の吸収はその手前の「小腸」でほとんどおこなわれる。つまり、大腸に分解する酵素があっても、分解されても吸収されなければ、カロリーにはならない。
だからおそらく、「寒天や海苔は、日本人の一部の人にはダイエットには向かない」ということにはならないだろうと思う。
寒天は、私が住んでいる長野県諏訪地域の特産品だ。鎌田實諏訪中央病院名誉院長も、「寒天ダイエット」を宣伝しまくっている。これが「ダイエットには向かないかも」と言われたら、その影響がちょっと心配になる。根拠のない「風説の流布」に当たらないか、注意しておいて下さい。そういえば、以前読売新聞の広告に鎌田先生出てたな。
話は変わるが、このニュースを見て、同じ手法が食糧問題の解決に道筋がつながるんじゃないかと、ふと思った。人間には分解できないために栄養も吸収できないセルロースも、この手法を応用して人間が吸収できるようにすれば、栄養源になる食べ物が飛躍的に増やせるのではないか。
ヤギや羊、牛などは、紙や草を食べる。あれはなにもダイエットや腸の掃除のために食べているわけではなく、自分の栄養にするために食べている。つまりセルロースを分解吸収して栄養にする仕組みが、それらの動物の中にはある。
人間にはセルロースを分解する酵素がない。だから人間は、紙を食べても草を食べても、栄養にできない。セルロースを分解する酵素を持った腸内細菌を人間に入れても、上に書いたようにその栄養は吸収はされないだろう。でも、その酵素を持つ細菌によって分解したものや、酵素そのものを使ってセルロースを分解して食品にすれば、人間の食べられるものは飛躍的に多くなる。
もしかしたら、リサイクルで出している古新聞や古雑誌も、新聞やトイレットペーパーに生まれ変わるだけでなく「ごはん」に生まれ変わるかもしれない。林業をする人が減って荒れている山も、畑と同じ意味を持つようになるかもしれない。花粉をいっぱい出す種類の杉を食べてしまって、花粉の少ない杉や別の木に植え替えれば、花粉症も減るかもしれない。
今回のニュースに書いてある「寒天や海苔は日本人の一部の人にはダイエットに向かない」というのは、多分事実ではないと思う。でもそこから拡げて考えれば、うまく行けば世界の飢餓が減らせるかもしれないと思ったニュースでした。
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