財務省の野田佳彦副大臣は、来年4月の診療報酬改定について「総額3%のマイナス改定」と明言した。これについて何か言いたいと思ったが文字にする時間が取れなかったところ、医療構想・千葉代表の竜崇正氏が「公開書簡」の形で文字にしてくれたので、便乗。
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医療ガバナンス学会 NEWs
▽ 財務副大臣 野田佳彦殿 ▽
医療構想・千葉代表 竜崇正
2009年11月21日
MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
http://medg.jp
日頃より財務行政にご尽力いただき感謝申し上げます。
ところで去る19日の記者会見において、野田副大臣は「報酬全体を上げなくても、配分の見直しで調整できることが相当ある」として、来年度の診療報酬改定において総額3%の引き下げを明言したと一部メディアで報じられました。またそのための方策として、副大臣が薬価の引き下げと開業医から勤務医への報酬配分の見直しについて言及されたとも伝わっております。
自民党政権下、小泉元総理の主導などで2002年から2008年までに診療報酬総額は7.68%も削減されてきました。今回、3%の削減となれば、8年間で1割超の削減となります。人命を扱う医療費の1割カットは地域医療の現場に大きなひずみをもたらします。
収入が多いとされる開業医ですが、経営者としての開設コストやランニングコスト、従業員への人件費等が重い負担となっており、都市部ではリスクと負担の低いビル診療所が急増して、病院と診療所との地域連携が崩壊するという問題も生じています。また財務省の示す開業医の給与には債務の返済等が差し引かれておらず、これを差し引いた平均手取り収入での評価が不可欠です。今回のような開業医の報酬の一律削減は今後の診療所の激減を招き、引いては病院に来る必要のない患者が病院に押し寄せて勤務医をより一層疲弊させるという悪循環を引き起こすであろうことは火を見るよりも明らかです。
先の総選挙に当たって民主党が支持されたのは、「コンクリートから人へ」のスローガンの下、医療、介護、年金といった社会保障や、子育て、教育への財政投資を惜しまないとのメッセージが国民に向けて発せられたからにほかなりません。現在の医療崩壊はもはや診療報酬配分の見直しといった小手先の手段で解決できる問題ではなく、先の総選挙で民主党がマニフェストに掲げたように、医療費総額をOECD諸国並みに増額し、また医療制度全体の抜本的な見直しを行う以外にありません。
昨日の野田副大臣の発言は、開業医と勤務医の間に要らぬ対立を煽り、かつ財政的に窮乏した医療現場の疲弊をより一層、招くものであり、その撤回を求めて強く抗議するものであります。
以上
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MRIC by 医療ガバナンス学会
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