昨日投開票が行われた東京都議会議員選挙は、与党(自民・公明)が過半数割れし、民主党が第1党に躍進した。報道も局によっては当確速報を常時画面に表示するなど、国政並みの扱い。
記事は次のとおり。
都議選 首相の進退問題浮上は必至 民主は不信任案提出へ
7月13日0時20分配信【毎日新聞】
東京都議選の自民大敗で、麻生太郎首相は08年9月の政権発足以来、最大の危機に直面した。首相は選挙結果にかかわらず衆院解散を断行する意向を強調してきたが、首相の進退問題が浮上するのは必至。与党内には態勢立て直しを求める声が強く、次期衆院選は8月下旬以降に先送りされる見通しになった。民主党は13日中に衆参両院に麻生内閣不信任決議案と首相問責決議案を提出する方針。
反麻生の姿勢を強めてきた自民党の中川秀直元幹事長は13日未明、「私は『名誉ある決断を』と言ってきたが、その思いは変わらない」と記者団に述べ、首相の自発的退陣を求めた。さらに「党再生の議論をする両院議員総会を求めていくべきだ」と指摘した。尾辻秀久参院議員会長は12日夜、「麻生首相の責任は重い。首相の賢明な判断を期待する」と記者団に語った。
これに対し、同党の細田博之幹事長は12日夜、東京都内のホテルで河村建夫官房長官と会談した。両氏は「都議選の結果と国政とは別。首相責任論には及ばない」との認識で一致した。さらに、自民党首脳は「解散は首相に一任する」と述べたが、首相サイドの守勢は明らかだ。首相に近い自民党の菅義偉選対副委員長は12日、民放番組で、衆院解散に反対する閣僚が出た場合の首相の対応について「強い意志で解散に臨むだろう」と強調したが、公明党の斉藤鉄夫環境相ら一部閣僚が反対しても首相が解散権を行使できるかは不透明。同党の北側一雄幹事長は13日未明の会見で「(衆院選に向け)立て直しの時間が必要かもしれない」と述べ、早期解散に否定的な見方を示した。与党には鳩山由紀夫・民主党代表の政治献金疑惑を追及し反転の手がかりとしたい思惑もある。
参院で問責が可決されれば、衆院で審議中の貨物検査特別措置法案の成立は困難になるが、民主党は早期解散に追い込む戦略だ。【中村篤志】
(記事ここまで)
今朝のニュースでは、麻生首相は14日にも自らの手で解散に踏み切るのではないかと報道されている。仲間であったはずの自民党に退陣を迫られるくらいなら、伝家の宝刀「解散権」を行使するということなのだろうか。ここまでずっと抜けなかった伝家の宝刀。すでに錆びきっているけど、一度は抜いてみたいんでしょうね。麻生首相の性格だと。
確かに総理大臣には解散権がある。しかしこのタイミングでそれを行使するのは、愚の骨頂だ。半世紀以上前に麻生太郎首相の祖父である故吉田茂首相は国会で「バカヤロ」とつぶやき、それがもとで内閣総辞職に追い込まれ、退陣にもつながった。いわゆる「バカヤロー解散」である。もし今麻生首相が本当に解散するなら、それをはるかに下回る「バカ麻生解散」だ。
都議選で自民党が大きく議席を減らした今のタイミングは、民主党がどうとかいうよりも、自民党に票が集まらない大きな流れができている。ここで解散して選挙に打って出るというのは、どう考えても自民党にとって損ばかりであろう。選挙戦になれば起死回生の大逆転ができるつもりかもしれないが、もしそんな手があればとっくに回生しているだろう。
麻生首相は典型的な、自分の実力よりも「自分が思っている自分像」が大きいタイプだと思う。普通の人はそのギャップを埋めるために謙虚さを身につけたり実力を伸ばしたりするものだが、麻生首相は生まれつきなのか育ち方を誤ったのか、どんな状況でも自分には絶対の自信を持っているように見える。しかしその自信には、たいていの場合根拠がない。
「経済の麻生」「外交の麻生」というキャッチフレーズも、ことごとく看板倒れであることが全国民にバレてしまった現在、麻生首相に残っているのは「根拠のない自信」と解散権と、世の中の空気を読まない一部の取り巻きぐらいではないのか。首相の椅子を与えてしまった自民党は、これ以上日本に損害を与えないように、何とかする責任がある。
麻生首相は就任直後の解散を期待されるタイミングで、「政局より政策」と言って解散しなかった。たしかに解散して政治空白ができることを許さない世界の経済情勢ではあったが、今から見れば総選挙をできるぐらいの隙間はあったのではないかと思う。既得権益に群がる人たちの分捕り合戦になってしまった景気刺激策は、逆に後世に禍根を残した。
民主党は衆議院で「内閣不信任案」を、参議院で「首相問責決議案」を提出して首相を退陣に追い込むつもりのようだ。こちらも「選挙」一本に絞られてしまっている。今回の都議選で民主党は、予想以上に強い追い風が吹いているのを見て、当初は候補者でなかった人をあわてて擁立して、その人たちも当選している。まるで4年前の郵政選挙の自民党を見ているようだ。
今のタイミングで総選挙に入ってしまったら、これまでも寄せ集めの要素が強い民主党が「巨大な烏合の衆」になってしまうのではないかと心配している。民主党が政権を取るための準備は、党内部では着々と進めているだろうと信じてはいるが、それでも準備は不十分なのではないか。今総選挙をやれば民主党は圧勝するだろうが、それは民主党にとって幸せなことなのかどうか。勢いに乗って退陣を迫り、準備不足で政権を担えば、「やっぱり自民党じゃないと駄目だ」といわれることにならないかと、少し心配している。
政治には考えるべきことが山積している。今すぐ選挙になだれ込まれてしまうと、それらは先送りされたり廃案になったりする。そのことによる国民の損害は少なくない。また国民にとっても、今選挙戦となれば自民党と民主党の「人気投票」になり、十分に考えないで勢いで投票する人たちばかりになるだろう。そしてそれを政党も利用し、国民に考えさせない「ワンフレーズポリティクス」を狙う。民主党のワンフレーズ「政権交代」は、それ自体には何の中身もない。
国民が選ぶ政治家がこの国を動かしているのだから、形の上では民主主義だ。選挙だといわれれば、誰に投票するかを考え、投票しないわけにはいかない。しかし、放っておいてもあと2カ月足らずで任期満了を迎える衆議院にとって、今すぐ総選挙をすることの「国民への」損と得を考えれば、任期満了までしっかり仕事をしてもらう方がいいのではないかと思う。退陣だ解散だ選挙だと騒いでいる政治家の言葉からは、国民を思いやる気持ちが少しも感じられない。