「殺人に関する短いフィルム」
原題/Krotki Film o Zabijaniu
英題/A Short Film About Killing
監督/クシシュトフ・キェシロフスキ
出演/ミロスワフ・バカ、クシシュトフ・グロビシュ、ヤン・テサシ、他。
あらすじ/
87年、冬のワルシャワ。貧しい身なりの青年ヤチェック(ミロスワフ・バカ)は、目的もなく町をさまよい、行き過ぎた悪戯を繰り返していた。その頃、弁護士になるための最後の面接試験に合格した若い司法修習生のピョートル(クシシュトフ・グロビシュ)は、その知らせを妻に伝えるために、旧市街近くの喫茶店に向かっていた。その喫茶店でヤチェックは、バックの中から一本の紐を取り出し、その長さを確かめると店を出て、タクシーを拾い、町外れの川堤まで車を走らせる。停車させたところで彼はその紐で、タクシー運転手(ヤン・テサシ)の首を後ろから締め、抵抗する彼の手を棒でたたきつぶし、車から引きずり出すと、血だらけの男の顔に毛布をかぶせ、大きな石を振りあげ、何度もその頭に振り降ろすのだった……。
(goo映画より)
こんばんは、wataruです。
先程の記事で今夜の映画は
「男くさい」か
「ゴリゴリにストロングな切株」か
「死ぬ程凹む」の
どれか、と書きましたが
ジャジャーン♪
「死ぬ程凹む」映画でございます!
その名も、「殺人に関する短いフィルム」。
先日自分ひとりで盛り上がりまくった、キェシロフスキ監督の「デカローグ」の、第5話の劇場版。
若き新米弁護士、ピョートルの背景などを加えた「完全版」でございます。
デカローグ、でのこの話は
ちょうど2週間前に観たんですけど
2度目に観ると、前観たときよりもズッシリと重たく感じましたね.....
1度目はビデオで
今回はDVDでの鑑賞でしたが
やはりDVDの方が音もイイですし、画像もパリッとしてる。それに、あの不穏な色使いも鮮やかさを増す。
多分デカローグ本編には無かったと思うんですが
冒頭、いきなり
猫の首つり死体
という超ショッキングなシーンで幕をあけます。
「テーマは暴力。それ以外の何ものでもない。」
この映画について、キェシロフスキさんは そう語っています。
猫を残酷に殺す。
街角での若者のケンカ(一方的な)。
衝動的な殺人。
.....そして、「死刑」という、国家による殺人。
つきつめて考えていけば、究極の暴力、っていうのは「戦争」になるんですが
人間の中には「暴力」という悪魔が住み着いています。
それは、子供の中にも存在します。
教育、というもので倫理を学んで、人間の持つ残酷な一面を押さえつけるようにして
人は社会に出て行き、みんなで上手くやって、平和に過ごしています。
.....しかし、何かの拍子に、押さえつけていたものが噴出してしまう事がある。
それが国家レベルになったものが、「戦争」なんじゃないかな、と漠然と考えたりする。
↑人生最期
主人公ヤツェクの、殺人に至るまでの話。
だから何だ、人を殺した事には変わりないじゃないか。おまえは犯罪者だ。
.....そう突き放して考える事が、僕にはどうしてもできません。
何故突き放せないのか。僕にもそういう衝動があるからなのか?
ヤツェクは殆ど意味のない殺人を犯し
その償いとして法によって殺される。
この最後の死刑執行のシーンのテンションが異常に高く、
死が目の前に迫っている、という恐怖を味わう。
あのタクシー運転手だって死の直前はこんな恐怖を味わったのだろうし
報いとしては当然なんですが.....凹みます......
追加シーンで印象的だったのが、ヤツェクの弁護にあたる新米弁護士・ピョートルのラブラブなシーン。
面接に受かり、今日から弁護士!
ヤッター!
とうかれまくって街中をバイクで爆走。
知らないオッサンにも
「オレ、弁護士になったんだよ!」
.......って
知らんがな!っていうかアンタ誰やねん。そのオッサンにしちゃいい迷惑ですが
念願の職につけた若者の喜び、が伝わってきてイイですねぇ。
しかも奥さん物凄い美人だし!
アンタの未来は明るい!うらやましい(笑)!
そうしてラブリーにカフェでイチャイチャしてる後ろを、殺人計画実行前のヤツェクが通り過ぎる....
「なんだかうまく行き過ぎて怖い.....何も起らなきゃいいが」
と、突然不安になるピョートル。虫の知らせ。
その後ヤツェクと関わる事になり、弁護士としての初めての仕事が
「死刑」
という、ヒジョーに苦いスタートを切ることになってしまいます。
初めての仕事、っていうのもあるのか、ピョートルはヤツェクに激しく感情移入していきます。
ラストシーン、誰も居ない草原に車を止めて
さめざめと泣くピョートル。
デカローグ本編では、泣きながら
「憎んでやる!憎んでやる!」
と悪態をついてましたが......ふがいない自分を?法というシステムを?
これはこれでグサリと突き刺さるエンディングですが
僕はこっちのほうが切なくて、好きですねぇ。
これから彼はどうなるんだろう。
裁判長に、
「繊細すぎるのはこの職業には向かないぞ」
と言われていましたが.....それでも彼は弁護士を続けるのだろうか。
どーしても僕は、このピョートルが、同じくキェシロフスキ監督の
「終わりなし」の
幽霊弁護士・アンテク
に見えてしまってしょうがないんですけど.....
アンテク生前の、一番苦い思い出、的な。
それにしても、あの死刑執行人とその付き人、こわかったなぁ....
死刑執行人は、アングルと光の加減で伊武雅刀に見えてしまうし(笑)
付き人はもう、コレ楽しんでるとしか思えないですよ。
「もっと巻け!巻くんだ!」
「こうですか!?こうですか!?」
絞首刑にされるヤツェクの首に縄を巻くこのシーン.....
めちゃめちゃこえぇよ......
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