「コード・アンノウン」
原題/CODE INCONNU
英題/CODE UNKNOWN
監督/ミヒャエル・ハネケ
出演/ジュリエット・ビノシュ、テイエリー・ヌーヴィック、他。
ちぃーっす。wataruっす。
9月末から、1ヶ月に及んだハネケ祭り.....別名
逆撫で祭りもこれで大団円を迎えました。
逆撫で王子(別名 凹ませ大魔王 もしくは 生殺し大魔王)、ミヒャエル・ハネケの映画、この「コード・アンノウン」で全て制覇したことになります。いま、素直に思う事は
コード・アンノウン最後にとっといて良かった!
もう、これに尽きますね.....いわゆる「ハネケ流」がギッシリ詰まった、大傑作だと思います。
ハネケたんがフランス映画に進出した第1弾がこれなんですが
なんかとっても「絵」が明るいんですねえ。
「パリ〜♪ジュ・テ〜ム」と喜んで撮影してるハネケたんが目に浮かぶ、というか.....かといって「明るい話」では決してないんですよね、コレが。ハネケたんが「明るい話」なんか撮るわけ、
ありまへん。とりあえずそこんとこ、ヨロピク♪って感じでこの映画に臨んでもらえれば、あなたもハネケ・ワールドにドップリ漬かること間違い無し......かも。
この映画の成分は、「71フラグメンツ」が7割、「隠された記憶」が3割。
まあだいたいそんな感じかな、と。
パリで暮らす映画女優。
その彼氏のジャーナリスト。
その「彼氏」の弟は実家の牧場を継ぐのがイヤで家出、パリにやってくる。
弟、道端で物乞いをしているオバサンに無礼をはたらく。
それを見ていた、正義感の強い、若い黒人が弟に詰め寄る。
揉め事になり警官がやってくるが、警察署に連行されたのは弟のほうではなく
黒人と物乞いのオバサン......
登場人物の殆どが、この異常に長いワンカットのオープニングで一同に会するのですが
あとはそれぞれバラバラに散らばっていき
それぞれのその後、を「71フラグメンツ」方式のぶつ切りワンカットで断片を映し出す。
その断片を、観てる方は繋ぎ合わせていくしかありません。
それぞれが抱えている問題、生活......淡々と、それを描いている。
一見、なんでもない日常でも、ふとした事で、彼らの奥底には「根深い」問題がある事に気が付きます。
男女間の問題だったり家族の問題だったり格差社会の問題だったり人種差別の問題だったり。
「隠された記憶」でも、路上で、ダニエル・オートゥィユにぶつかってきた黒人青年に、過剰な反応を示したり、とか......「コード・アンノウン」の冒頭でも、連行されてったのは黒人と物乞いですから。やっぱり、あるんですねえ、こういうの。すごく根が深くて、今日明日にでも解決できる問題ではないんです。物乞いのオバサンにゴミを投げつけた弟にしたって.....この冒頭で、この人達の抱えてる問題.....それは日本においても無関係ではなくて、「世界」が抱えている問題を、ギュッと凝縮して見せつける。
その後のバラバラの断片たちは、ちょっとしたニアミスをしながら
ほぼ平行線で、最後まで交わることはありません。
いつものことながら、「答え」なんかありません。
何もないまま、この映画は終わっていきます。
今回は「ドッキリ」なしです(笑)。
この映画は「不完全な」状態で終わっていきますが、映画の中の「彼ら」の生活は、延々と続くのです。
これはそのまま僕らの今生きている世界そのもの。
生きている限り、それは決して終わる事はなく
解決の糸口は見えそうで見えず、また新たに別の問題を抱え込んで
人間は生きていくのです。これから先、ずっと。
↑このシーンは凄く印象的だった
いやしかし、最後は物凄くドキドキした......
いつもは「音楽」のないハネケたんが、延々と「ドラム」の音を鳴らし続けて
それぞれの断片たちの「この映画におけるラストシーン」を撮っていくのですが
もう、これ、観てる方は気が気じゃないです。
「な....なにかとんでもない事が起るんじゃないのか!?」
と心拍数だけは
ハネケ映画史上MAXだったのですが
特に何も起らず......あくまで「日常の一部」としての場面だった事に、ホッと胸を撫で下ろす。
最後に、聾唖の子供が(最初にも出てくるが)、何かを伝えようとして
身振り手振りで一生懸命なのだけど、観てるこっちには何も伝わらない。
多分、これがこの映画のテーマを物語っている。
71フラグメンツでもそうでしたが、この映画は
「コミュニケーションの不在」をもっと深く掘り下げたものなのかなあ、と。この後に「隠された記憶」に繋がっていく、というのは流れとして自然ですね。こちらは差別、格差についてもっと「深い」ところに到達してますしね。あの映画において
「やましさ」という言葉が物凄くグサリ、ときたので。
ああ、あのあと、あの人達はどうなったんだろう....?と考え込まずにはいられない。
同時に、それに付随する社会問題にも考えずにはいられない。
映画という手段を用いて、普段ノホホンと生きてる僕らに「考える機会」を与えてくれたハネケたん。
答えは出ないけど、少なくとも「考えない」のと「考える」のは全然違うのです。
ハネケ祭り.....とりあえず終了ですが
最新作はリメイク版「ファニーゲーム」らしいので
極悪ハネケたん、待ってるぜ!
チャオ!って感じで、また会う日まで......♪
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