遠くまでティッシュを取りにいくときは箱ごとちゃんと持ってくること 志井一
「ティッシュ」が手もとになく、しぶしぶ部屋の隅だかとなりの部屋にとりにいき、2、3枚を必要な分だと見積もりシュッシュとぬいてもといた場所に戻り、こぼしたものをふいたり、鼻をかんだり、でも見積もりが甘く足りなくなって、あー、箱ごと持ってくればよかったと思い、自分自身へ「箱ごとちゃんと持ってくること」と注意勧告する(そしてたぶんそれは次も守られない)。書かれているのはそれだけのことだが、短歌定型におさめられ、繰り返し読まれると、「ティッシュ」は単なる「ティッシュ」ではなく何かの象徴と化し、より深遠な真理にふれた箴言のように響く。ただ、そこをぐっとこらえて「ティッシュ」を「ティッシュ」のままにするように読みたい。そうすることで、ちょっと大げさな物言いの「遠くまで」が、ほんとうに「遠く」になる。部屋のすみだかとなりの部屋だかが、スロベキアよりもベガよりも「遠く」になる、そんな感じを得たい。
(@c100162 6:13 - 2010年12月20日https://twitter.com/c100162/status/16602067539861504)

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