ハンサムなしょくぱんまんを好きになるように娘は育てるつもり 佐藤真由美
鑑賞者はアンパンマンに詳しいわけではないが、同程度のアンパンマンリテラシーの人は、まず、あの世界で「しょくぱんまん」のルックスはかっこいいことになっていることを呑み込まなくてはいけないかもしれない。「ハンサムなしょくぱんまんを好きになるように」は、まじめな性格込みの「ハンサム」さに惹かれるようにという意味もあるだろうが、どちらかというと、みんなが思う「ハンサム」さを同じように「ハンサム」さだと思い、疑問もなく惹かれるように、という気持ちだろう。いい悪いは別にして、そのほうが生きやすい世界であることを母である主体は知っているから。そして、自分はそうではなかったから。ここに若干の親のエゴを感じてしまうが安心していい。あくまで「つもり」なのだ。「娘」の幸せを祈ると同時に、親の思うような幸せに乗っかってくれない事など端から分かっている。なぜなら、他ならぬ自分がそうであったから。
(佐藤真由美『プライベート』、マーブルブックス、2002年/集英社(集英社文庫)、2005年)

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