2009/1/3

忙中閑あり 第1回  投稿ストーリー

会員K・Yさん投稿の琵琶湖要塞外伝です。
数回に分けてお届けします。

琵琶湖に確実な春の訪れを告げてくれるのは、東に連なる伊吹山地の残雪たちである。
湖南は瀬戸内型の気候をしめすこの琵琶湖も、その湖北―これら伊吹の山々においては日本の深雪地帯の南西端にあたり、平均積雪が3mにも及ぶ。ゆえに琵琶湖の本当の春は、伊吹山地に春が届いたときだ、といわれるのである。
その今まで白かった頂きが緑に萌える時、昔から人々の心にも命の、生きることへの喜びを運んで来てくれるのである。
琵琶湖の春はそういう春である。
こと、戦いを前にした若者には、その春の訪れは新鮮だった。
「海もいいけど、あの山の上を飛んでみたいなぁ」
真新しい海軍准尉の襟章を付けた若者が独り言のようにつぶやく。
「そうですね。空もたまにはいいんでしょうね」
と、傍らの若者が受ける。
「次の非番がいつになるかわからんが、偵察部隊の知り合いに頼んで飛んでみるか」
「そんときは、わたしにも声をかけてくださいよ」
CODE1997の開戦まで、あと3週間と幾日かに迫ったこの日、列島軍兵士たちは開戦前最後の休暇をとることが許された。
わずか二日間の休暇であったが、覚醒してすぐに睡眠学習と新しい所属部隊においての訓練に追われた隊員たちにとっては、なによりのプレゼントであった。
長浜沖に浮かんだこの連絡用警備艇『ちどり』では、前CODE1995終戦近くに散ったミサイル巡洋艦『戸隠』の主だったメンバーが、言葉巧みに要塞直衛軍からチャーターした艦上で船上パーティーと洒落こんでいた。

<つづく>
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