そんなわけで既に東京に戻って仕事を始めているわけだが、実家で仕入れたネタをもう一点。
かれこれ運転停止から4年になろうとしている浜岡原発(静岡県御前崎市)の半径30km圏内にある我が実家ですが(^ ^;、東京に戻るべく準備をしている最中に、横で新聞折り込み広告のしていた母の手元にこんな一枚(写真は表・裏)があるのを発見。「平成26年」とあるからもちろん昨年に配布されたものだが、その「イベントスケジュール」は今年の春に開催のぶんまでぎっしり掲載。
原発の運転は停止していても「原子力館」はなおも運転もとい展示中。というか、ほとんどテーマパークのようだ。裏面は周辺観光MAP。さしずめ原発を抱えている電力会社自らによる「ダーク・ツーリズム」というところか。
それにしてもウチの実家がとっているのは朝日新聞(このあたりは静岡新聞の圧倒的な牙城なので珍しい、とまでは言わないが少数派)である。もちろん新聞本体と販売店とは別会社だし、販売店にとって折り込み広告は貴重な収入源だから仕方がないのかもしれないが、それにしても一応ASAとして各世帯に配達しているわけだからな(といっても静岡県人は基本的に呑気なので、こういうことでとやかく言う人はあんまりいないんだろうけど)。
とはいえ気になったので東京に戻ってきた後で母に電話して尋ねると「うーんとね、はっきり覚えてないだけーが、確か『県議会だより』か何かと毎回それが一緒に新聞に挟まれてくるだよ(以上、静岡弁)」とのこと。
静岡県の川勝平太知事は浜岡原発再稼働に反対の立場を取っていると言われる(が、それは表向きで実は原発推進派じゃないかとの声もある)が、一方で静岡県議会では3年前に原発再稼働の是非を問う「住民投票条例」案が否決されており、その背景には電力労組の圧力があったとの噂もささやかれてきた――との話は私も知っていたから、上記のような母のあんまりはっきりしない話を聞きながらも「やっぱりそういうことなのかねえ」とか、これまた静岡県民的なアバウトさ(って言ったらずっぽりネイティブな静岡県民から怒られるかもしれないけど)で何となく納得してしまったのであった(だから「そりゃ違うぞ」とのご意見の方は遠慮なくメッセージをお寄せください)。
「ウチのマンションにも中部電力の社員の人が住んでるだだよ」と母は言った。「前にマンションの何かの集会の時にもその人が原発のことで、あんまり強い調子じゃないけど話していたっけねえ。あたしゃ何を話してただかすっかりわすれちゃったけど(笑)」
といった話を聞くに、俺自身の記者稼業にあるまじきアバウトかつ呑気な性格はこうした風土から培われたのかとか考え込んでしまうと思うと同時にf(^_^;)、既に建設計画の表面化から約50年を経て地域にずっぽり根をはってしまった原発関連産業の複雑さを思う。
ただ、そんな藤枝市だが、浜岡から30km圏内のへりにあるにも拘らず、また市内には特に有力な産業もないにも拘らず、人口減になやむ近年の市町村の中では珍しく、最近はかなりの勢いで人口が増えている(私も休み中に市街地北側の谷底みたいな場所を歩きながら「こんなところにも住宅街ができているのか」とびっくりした)。背景には県都の静岡市まで電車で20分(しかも日中10分置きに発車)という利便性によるベッドタウン化もあるが、あの3.11以降は榛原町や御前崎市など浜岡原発に近い海沿いの街、あるいは漁港のある焼津市などからの転入も増えているそうだ。
静岡県は――来るぞ来るぞと言われながらもう40年ぐらい経った今でもまだ来ないが――東海地震と、それに伴う津波被害への恐れが県民レベルで染み渡っている。そして藤枝市の隣りの焼津市といえば、あの第五福竜丸の母港だった。呑気な気質の県民でありながらも、前述の否決された「原発」住民投票条例案に、住民からの直接請求に際して約16万5000人もの有効署名が集まったのは、故のないことではないのだ。

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