『美しい顔』問題に関連して、私(岩本)から講談社の渡瀬昌彦常務取締役あてに送った質問(4月18日・5月9日の2回)の全文、および5月10日付けで渡瀬常務より同社広報室経由で寄せられた回答の全文を以下に公開致します。
質問はともかく、なぜ回答まで全文公開するかというと、下記にもある通り渡瀬常務より「
『週刊金曜日』で執筆される場合には」「
誤解を招かないためにも一部を抜粋したりせず全文を掲載していただきますよう」にとの断り書き付きで寄せられたものだからです。もっとも、17日発売(既に16日には一部の定期購読者などには雑誌が到着済み)号で私が執筆した長さ1ページ(文字数にして1600字強)の記事の枠内では紹介しきれない長さのコメント(だって400字以上ありましたからね。他にもレポートの中ではいろいろなことを書かなければ、私としても読者に事のあらましをきちんと説明できませんし)であったため、やむをえず「誤解を招かないためにも」全文をこのブログエントリにて掲載し、同誌の記事中には本エントリのURLのみを記載することとした次第です。悪しからずご了承くださいませ。ではでは。
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◆5月9日、岩本太郎から講談社・渡瀬昌彦常務取締役あてに送った取材依頼と全質問項目(4月18日に送ったものの再送信)
講談社 常務取締役
渡瀬 昌彦 様
お世話になっております。先月にはたびたび取材申し込みの電話、メールを送らせていただきました。ご多忙な渡瀬様を煩わせることになってしまったのではないかと、正直なところ私自身も申し訳なく存じております。
とはいえ、やはり改めて渡瀬様に『美しい顔』の単行本化に関わる件(金菱清氏や新曜社との交渉の件、「出版人」との件 等)についてのお話を伺いたく、再度になりますが取材を申し込ませていただく所存です。
質問項目につきましては、基本的には先月お送りした項目に未だお答えをいただいていないということで(乾様には電話でお話は伺いましたが、各項目への回答という形は遠慮したいとのお話でした)再び同じものを以下にお伝えいたします。
ただ、既にご覧いただいたかとお察ししますが、先月に19日には『文徒』にて乾様への電話インタビュー、同25日発行の『出版人・広告人』5月号では新曜社への取材記事を掲載させていただいております。これらについての貴社、そして渡瀬様の見解についてもお伺いしたい旨も併せてお伝えしておきます。
なお、これも先月と同様、この取材自体はあくまでもフリーランスのライターとして『出版人』『週刊金曜日』の双方にて仕事をしている私自身の発意に基づくものであることも改めておことわりさせていただきます(具体的な記事掲載の時期・形態については未定です)。
以上、改めまして何卒宜しくご検討をいただけますようお願い申し上げます。
(1)
『文徒』4月9日号(通巻1482号)が掲載した「【記事】 東北学院大学教授の金菱清が講談社に「お知らせ」の撤回訂正を求める」について同日、貴社広報室長の乾様は今井に対して電話で「正式に抗議する」と仰られたとお聞きします。
今井はこの電話について「名誉棄損云々と言った話があるばかりで、記事の何が問題であったのか判然としない」と言っていますが、乾様ご自身はこうした電話を今井に対して本当におかけになられたのでしょうか?
(2)
上記の電話が事実とするならば、乾様はここで今井に対して具体的にどのような内容の話をされたのでしょうか(「記事」のどの部分が、どのような理由で問題であり、誰の何に対する「名誉棄損」に当たると指摘されたのでしょうか)。
(3)
その後、今井からの問い合わせに対して広報担当常務の渡瀬様は「金菱氏の言説は事実と異なるものである」「抗議は社としてのものである」と返答されたとお聞きします。これは事実でしょうか。
(4)
また、上が事実であるとするなら「金菱氏の言説」とは、先に講談社が出した『美しい顔』単行本化についての告知に対し、金菱氏がTwitterに投稿していたツイートのことを指すのでしょうか。
(5)
金菱氏のツイートを指すものであるとすれば、それを「金菱氏の言説は事実と異なる」とする根拠は何でしょうか。
(6)
上記のメールに関連したやり取りの中で常務の渡瀬様は今井からの「事実と違うという情報発信をされるのですよね」との問いに対して「この件に関して現時点で公式リリースはいまのところ流していません。金菱氏の出方によります」と回答されたと今井は『文徒』で報じています。これは事実でしょうか。
(7)上が事実であるとするなら、その後の現時点(18日)で貴社として金菱氏のツイートに関する公式リリースを出す予定はおありでしょうか。
(8)
乾様の最初の電話での抗議が「社としてのもの」とするなら、それは社内でのどのようなプロセスを経てどなたの権限の下に決定されたものなのでしょうか。
(9)
翌10日には乾様より今井に対して、『文徒』が4月12日号などで掲載した「お世話さまです。/何度かお電話しましたが、ご不在のようでしたのでメールにて失礼いたします」との文言で始まるメールが送られてきたと聞きます。乾様ご自身はこうした内容のメールを確かに今井あてに送られたのでしょうか。
(10)
メールの内容が事実であるとするならば、「本件について特段のご返答はいただいておりません」としつつ「あす4月11日の吉川賞贈賞式につきましてご来場をお控えいただきますようお願いいたします」というのは第三者にとっても不可解なものだと思えます。
『美しい顔』の件と吉川賞贈賞式への出席の件は本質的にまったく別件のように思えるのですが、これが「ご来場をお控えいただ」く理由になるというのは、いかなる根拠に基づくものでしょうか。
(11)
4月12日には出版人の今井あてに簡易書留で、渡瀬様の御名前による「このたび弊社役員会にて、下記のように決定がなされたことをお伝えいたします」「これまで御社発行の「月刊 出版人・広告人」に対して雑誌掲載料として××××××円(税込)を毎月お支払いしてまいりましたが、今月のお支払いを持ちまして御社へのお支払いを終了させていただきます」などの内容の含む4月11日付の書面が送られてきたと、今井が同15日付『文徒』などで紹介しております。
この書面は確かに貴社から送られてきたものでしょうか。また、『文徒』に掲載されたその内容に間違いはないでしょうか。
(12)
上記の11日付簡易書留および送付の内容が事実とするならば、文中にある「このたび弊社役員会にて、下記のように決定がなされたことをお伝えいたします」とある中の「弊社役員会」とは貴社の法務上の「取締役会」のことでしょうか。それとも実務上の「役員会」のことでしょうか(その場合は社内的にどのような位置づけの会合であり、構成メンバーはどのような方々でしょうか)。
また、その決定がなされた「役員会」は何日付で、当日の議事録はあるのでしょうか(また、そこに上記の「決定」については記載されているのでしょうか)。
(13)
ここまで事実確認などをさせていただいた内容以外で、『文徒』が今回の『美しい顔』問題についてこれまで報じてきた記事について、貴社として「ここは間違いだ」という部分がありましたら、忌憚なくお聞かせください。また、できましたらそれらを間違いだとする具体的な根拠についても合わせてお答えください。
(14)
今井は上記の簡易書留の文面について『文徒』で「講談社の広報活動において、広報から発信される文章は、どういうチェックを受けているのだろうか。最低限、法務を担当する部門からのチェックがあってしかるべきではないだろうか」と批判しています。実際にこの書面は、そうした貴社の社内でのチェックを経たうえで今井あてに送られたものなのでしょうか(チェックを受けているとすれば、それは具体的にどの部署になるのでしょうか。具体的にお教えいただければと存じます)。
(15)
『週刊金曜日』4月12日号に私が寄稿した記事「『美しい顔』問題は解決したのか」についてお尋ねいたします。この記事において私は貴社広報室の小野祐二氏に4月9日に電話で問い合わせ、同日にいただいたコメントとともに、上記の金菱氏によるツイートも紹介しています。
もし金菱氏のツイートが上にあったような「事実と異なるものである」とするならば、『文徒』で記事を書いた今井に対してと同様に、『週刊金曜日』や私に対しても同様の抗議があってもおかしくないと思うのですが、これまでのところ貴社よりそうした抗議を含めた反応は一切いただいておりません。『週刊金曜日』の私の記事の内容については「誤りはない」との認識でよろしいでしょうか。
(16)
4月4日付で貴社が公表された「『美しい顔』刊行についてのお知らせ」および翌日発行の『群像』5月号に掲載の告知文には「文献編著者および関係者との協議と交渉を経て、著者自身の表現として同作を改稿いたしました」とありますが、この「文献編著者および関係者」とは具体的にどのような方々でしょうか。また、その中には金菱清氏と新曜社も含まれるのでしょうか。
(17)
上記に関連して、4月9日に私が貴社広報室・小野様よりメールでいただいた「コメント」には「金菱氏には陳謝するとともに版元を通じて誠意をもって交渉を続けてまいりましたが、残念ながらご理解をいただけませんでした」「金菱氏との交渉は最終的に先方から斥けられました」とありました。では、金菱氏の著書『3.11 慟哭の記録』の版元である新曜社(および同社の前記書の担当者)との間では斥けられることはなく合意に達することはできたのでしょうか。
(18)
また、小野様よりいただいた上記のコメントには(『週刊金曜日』ではスペースの都合上全文は掲載できませんでしたが)「これまでに金菱氏とは新曜社を通じて交渉をした事実はあります。告知文にはその事実を記しております。しかし、その交渉が最終的に先方から斥けられたことについては4月5日の告知文では言及しておりません」とも書かれていました。だとすれば4月5日の告知文で「言及しなかった理由」とは何でしょうか。
(19)
これは『週刊金曜日』での取材時に小野様にもお尋ねして回答を得たことですので確認の意味を込めての再質問になりますが、講談社としては金菱氏とは直接の交渉、つまり実際にお会いしたり他者を介さずに直接的に電話や書面での交渉をすることは最後までできなかった、という理解でよろしいのでしょうか?
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◆5月10日、講談社・渡瀬昌彦常務取締役より同社広報室経由で岩本あてに届いた回答全文
岩本太郎様
すでにご承知かと存じますが、弊社とメールマガジン「文徒」との関係は途絶しており、そこで定期的な執筆を続けておられる岩本さんに対しても、お答えすべきことは特にございません。
その点、くれぐれもご留意ください。
「週刊金曜日」で執筆される場合には、以下のコメントをお使いいただきたく、よろしくお願いいたします。
「『美しい顔』に関して、主要参考文献のひとつである『3・11慟哭の記録 71人が体感した大津波・原発・巨大地震』の編者である東北学院大学教授金菱清氏および金菱氏の代理人である版元・新曜社のご理解を得られなかったことはまことに残念です。それ以外の主要参考文献である4作品の版元(新潮社・東京大学出版会・ポプラ社・文藝春秋)ならびに著者編者の方々に対しても、金菱氏および新曜社への対応と同様に初出時の参考文献未掲載の過失を、「群像」編集部が作者の北条裕子氏と共にお詫びいたしました。また、金菱氏と同様に一部著者に対しては不備のあった点の修正についてご提示申し上げました。昨年12月まで及んだ当該の著者編者の方々との協議と交渉を経て、4月17日に単行本を刊行させていただきました。金菱氏および新曜社以外の著者編者の方々からのご異論やご批判は、現在まで私共が把握している限りでは、ございません。
関係各方面ならびにお読みいただいた読者諸賢のご批評ご批判を真摯に受け止め、今後の出版活動の糧といたしたく存じます」(講談社常務取締役 渡瀬昌彦)
以上です。誤解を招かないためにも一部を抜粋したりせず全文を掲載していただきますよう、くれぐれもお願いいたします。
2019年5月10日
講談社
渡瀬昌彦拝
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◆岩本太郎から講談社・渡瀬昌彦常務取締役あてに5月13日に送った確認のための問い合わせ
お世話になります。お忙しい中にも拘らず手数をおかけし、本当に申し訳ありません。
渡瀬常務様のコメント、確かに拝受いたしました。
一点、確認させていただければと思いメールを差し上げました。お送りいただいた書面中、『文徒』に対しては「お答えすべきことは特にございません」としたうえで「『週刊金曜日』で執筆される場合には、以下のコメントをお使いいただきたく、よろしくお願いいたします」「誤解を招かないためにも一部を抜粋したりせず全文を掲載していただきますよう、くれぐれもお願いいたします」とのことですが、『文徒』で執筆する場合においてはいかがなのでしょうか。また『文徒』『週刊金曜日』に関わらず、いただいたコメントの全文を紹介せず部分的に紹介した場合には、どのようなご対応をお考えなのでしょうか。
以上、念のため確認させていただければと存じます。たびたび誠に恐縮ですが、何卒宜しくご対応のほどをお願い申し上げます。
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◆5月14日、講談社・渡瀬昌彦常務取締役より同社広報室経由で岩本あてに届いた返答全文
岩本太郎 様
お世話になっております。お問い合わせの件に関しては、5月10日付の書面で記させていただいたとおりです。岩本様におかれましては、ご賢察のほどよろしくお願いいたします。
2019年5月14日
講談社 渡瀬昌彦
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