今日の東京は朝から久々の曇り空。昼頃から雨。
が、ほとなくやんで午後には雲の合間から薄日が差し、まるで春先みたいに生暖かく強い風が都心でも吹くようになった。実際、外を歩いていて少し汗ばんだくらいだ。
そんな天気の中を、いけない歩きスマホをしながら気になっていたのは糸魚川での大規模火災。
かつての酒田での大火も天気が荒れて強い風が吹いていた日だったよな……と、風にあおられたビニール傘を慌てて押さえながら思い起こす。今回もこの風が火事を引き起こしたんだろうか。
新潟県の西部と言えば、ご縁をいただき毎年のように訪ねている上越市があるけれど、糸魚川にはそれよりずっと昔、25年くらい前に初めて訪ねて一泊したことがあった。テレビの画面にもうつっていた、消波ブロックが並ぶ海岸線に佇んで冬の海を眺めていたのを覚えている。あの時以来だろうか。
いや、夏に上越を訪ねて「くびき野ビデオ祭り」に参加した際、私を含めた審査員のみなさんと一緒に最優秀賞に推したのが、糸魚川市内にある海洋高校の生徒さんたちが新たに始めた「魚醤」作りについて紹介した作品だった。富山との県境に近い糸魚川は食文化的にはどちらかというと西日本、魚でいえばブリの文化圏に入る一方、近年ではベーリング海まで回遊しに行った鮭たちが還ってきて生誕の地の川まで遡上してくる南限の地でもある。そうした街で高校生たちが新たに始めた特産品づくりを、地元の酒場のカウンターで制作指導にあたった海洋高校の先生と、金融関係の仕事で全国各地を渡り歩くなかで赴任したこの地がすっかり気に入ったという男性が、その魚醤「最後の一滴」で郷土料理を味わいながら紹介する――そうしたほのぼのとした内容だった。
その糸魚川での火事だ。
だからやはり気になってしまう。あの海洋高校の先生や生徒諸君をはじめ、ビデオ祭りにも参加していた糸魚川近隣に在住やお勤めの方々は……暗くなってから再び雨が降り出した東京の自宅で、雨だれの音を聞きつつ、気をもみながら過ごす夜だ。

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