てなわけで明日は総選挙の投票日なんですね。師走の選挙ってことで私は仕事の年末進行とモロにぶつかってしまい(と言いつつ仕事が片付かないうちにここで書いてますけど。ちなみに一昨年末もそうだったけど、あの時は半失業状態だったからなあ)、ここまで街に出て選挙がらみの動きを観察することもほとんどできないままに過ごしております。
そのへんは野党側も政権からいきなり喧嘩を売られた格好で後手に回り、今回は準備不足のままに突入せざるを得ないということで苦労しているようですね。ただ、教訓としては総選挙に限らず首長選挙や地方議会選挙みたいな「いつ何時おっ始まるかわからない」選挙に対しては、野党とは言わず現政権や政治の現状に物申さんという人たち(それこそ「現政権を転覆させてやる」と考えている人たちも含めて)は「常在戦場」状態で常にスタンバイしておかなきゃいけないってことなんでしょうね。少なくとも衆院選に関しては与党圧倒的多数の現状の中では内閣不信任案可決によって突入するケースは当面考えにくいし、解散権は首相に握られているし、現行の小選挙区制&比例代表制下ではオセロゲーム的な結果が出ちゃうということはここ何回かでよくわかったわけだし、オセロゲーム盤の四隅を押さえて引っくり返す戦略を常日頃から考えておかなきゃいけない。
その点では任期が決まってて中選挙区制がまだ採られている参院選では東京で山本太郎や吉良佳子といった人たちが当選したり、三宅洋平が投票前日に渋谷駅前ハチ公口をぎっしり満員にして約17万7000票と、社民党の又市征治さん(選挙後に党首代行になった)を上回る票数を獲得したのに落選した(「緑の党」としての比例区からの出馬だったんでそうなった。まあ、このへんも今の選挙制度の問題点でもあろうが)みたいなダイナミズムがまだ現出しやすいんですよね。
もっとも、4年に一度は必ず行なわれる都知事選で石原慎太郎の首をとうとう取り損なったり、その後も今年初め(何だか大昔のことのように思えるけど)の都知事選で反原発陣営が分裂選挙をやっちゃって敗北した(一方で家入一真みたいな人が脚光を浴びてそこそこ票数を取ったり、他方で「田母神閣下」が自身の予想の倍の票数を集めたという不気味な動きもあったりして、こういうのは拙速ではなく迅速かつ綿密に分析して絶えず「スタンバイ!」状態でいるべきなんだろうなあ、とも思ったりする。
その意味で今回は突然で意表を突かれたことで三宅洋平や家入一真みたいな動きはさすがに出てきづらかったんだろうなあ……と思っていたら出てきましたね北海道で。「
支持政党なし」
という名前で立候補した政治団体が。
「
『支持政党なし』と書くと投票したことに! 北海道で発生している選挙の問題がネットで話題」(grape)
ウェブ上では「違和感がある」「詐欺だ」(≒どの政党にも投票したくないとの意思表示でそう書いたら、その団体の得票になる)「不真面目だ」といった意見も多いみたいだけど、俺はこれって大いに「あり」だと思うなあ(^-^)。まあ、この代表である
佐野秀光(
『新党本質』⇒『安楽死党』⇒『支持政党なし』代表、だそうである)という人が、仮に国政に議席を得たとして、どういうことをやろうとしているのかは、まだ見極められないんだけどね。
だいたい何で俺たちは実質的に限られた数の「政党(およびそこに所属の候補者)」に投票しなきゃいけないんだという思いは私にも昔からあったし、実際に多くの世論調査で「無党派層」とか「支持政党なし」と答える人がかなりの比率を占めるようになっているわけだから、それに応えて「支持政党なし」という団体名で立候補するというのは、むしろ極めてまっとうなことのような気もしますが。というか、選管がよく認めたなという気もする。まあ、認めるのが当たり前なんだけどね。その昔には「
田中角栄を政界から追放する勝手連」なんていう政党も立候補していたわけだし。でも、そうすると「投票するな!」「棄権しろ!」とかいう政治団体でも立候補できるのかな?(´▽`)ノ
私は選挙に出ようなんて思ったことがない人間だけど、かつて国会で「共謀罪」法案が審議されていた頃に「共謀罪に反対する表現者たちの会」に参加して、メンバーの女性たちが中野駅前でメイド服を着て共謀罪反対のチラシを配布する様子を「
共謀罪ブログ(2006年5月22日)」に載せたら、翌日に朝日新聞でも写真入りで取り上げられたこともあって一日に5000以上のアクセスが殺到して「してやったり」と思った覚えがある。
もちろん、その時も「不真面目だ!」「こんな連中が反対運動をやってるなら俺は共謀罪賛成に回る!」といった趣旨のコメントも多数戴いたわけだが、それまで共謀罪反対運動をやってて「与党(当時は小泉政権)はともかく、一般の人で『共謀罪に賛成する人』ってどういう人たちなのかな」と思っていた私は、そこで合点が行った。
ようするに共謀罪にしろ、その後の秘密保護法や集団的自衛権にしろ、それに賛成する人たちの層は「『それに反対する人たち』に反対する人たち」が中心をなすのである。だから在特会のようなアホな連中を見ていてもそう思ったのだが、連中は結局「戦後民主主義」や「リベラル」とかいった政権に「反対したい」というのが主なモチベーションで、「在日特権」なんていうのは、今も地域社会に残りネット上に表出する差別主義を唱える層を獲得して自らの運動を広げるための所詮「方便」だったのである。まあ、桜井誠が在特会からトンズラこいたのも、そうした手法に基づく在特会という組織の中心人物という立場は自分にとってもはや(裁判その他のことを考えても)デメリットこそあれメリットはないと考えていたからではないかと思う。
で、少し話を戻すと、前述の共謀罪関連のことで「不真面目だ!」という批判を浴びた私は、敢えて反論する場合に「不真面目で何が悪い」と答えていた。
ようするに目的は「共謀罪法案を潰す」ということなんであって、そのやり方が真面目か不真面目かなんてことは所詮は「手段」に対する評価である。別に不真面目なやり方で共謀罪を廃案に追い込めるならそれはそれでいいと思ったし「真面目に反対しましたけどダメでした」なんて言い訳を後からするよか全然いいだろう。実際、共謀罪法案はそうした我々の「不真面目な」反対運動を踏まえながら、当初はそれほど盛り上がっていなかったのが最終的に国会で野党共闘を成立させるところまで盛り上げたあげく、当時の自民党がことごとくボロを出したあげくに政権交代に追い込まれる中で廃案になった(ただまあ、あれから再び政権交代があり、今度の選挙後の来年の通常国会にまた出してくるんじゃないかという不安はあるわけだが)。
だから敢えて言う。「
真面目に投票なんか行くこたねーよ。どうせいくなら面白がりなさい。政府や役所が勝手に決めたルールなんか、今度の選挙も含めてこれからみんなで“茶”にしてやれ」と。
ちなみに前述の共謀罪の時にやはり「不真面目だ」だったか「真剣みが足りない」とかいったメールを私あてに送りつけてきたオッサン(といっても私より2歳上で、左翼が跋扈する大学に勤めながら「アカ嫌い」で、今や“風化した”と言われるオウム問題にかれこれ約20年こだわり続けているのは、まあ立派だ)が少し前、以下にこんなことを書いていた。
「
みんなの党と橋下徹、あるいは政党禁止法」
(オウマー日記 2014年11月21日)
暴論・極論の類ではあるが、むしろ今やこういった言説のほうが正論(同名の雑誌とは無関係)ではないかとすら思えるイカれた状況になったということだろう。
【追記】「支持政党なし」代表の佐野氏は今日になって「
光栄です(動画)」「
悪名も無名に勝る」との記事を自身のブログに寄稿したうえで、さらにYouTube上に以下のような「政見放送」(?)を昨日に掲載・公表していた。
◆「支持政党なし 一言言わせて下さい。2014/12/13」(2分24秒)
つまり「『支持政党なし』という政党があると知ってたうえで投票、知らずに『支持政党なし』と書いて投じた票の双方とも無効票にせずに、その両者の思いを国政に活かすパイプとなるために、このような手法を採った。ただ、その場合は逆に特定の政策を事前に持つわけにはいかないので『政策は一切持たない』と宣言し、選挙後にみなさんからの意見を聞きながら政策を立て、国政に反映させていく」ということらしい。
これには上の「オウマー日記」西村雅史氏が「
中森明夫の『棄権党』のパクリではないか」との指摘もあろうし、今年初めの東京都知事選で家入一真氏が「
政策は立候補した後でSNSなどを通じて一般から集めて決める」としたやり方の延長線上にあるともいえる(もっとも家入氏は最終的に集まった意見を集約のうえ投票日に臨んだわけだが)。
だからこの佐野氏の考えややり方をどこまで額面通りに受け止めるかは判断の分かれるところではあろう。私も既に書いた通り本人の真意は未だ見極められていないし、幸か不幸か私自身の投票先の選択肢からは予め外れている(何しろ彼らは北海道でしか立候補していないのだから)。
ただ、あるいは彼らの真意は、首相が突発的に言い出して始まった今回の選挙において「投票結果」を求めるということよりも、政治家や候補者、さらには有権者を含めた一般の人々に対して「『選挙』って何だ?」「今の選挙制度や政治のあり方っていったい何だ?」という根源的な疑問を「挑戦状」的に叩きつけるところにあったのではないか……という気もするのだ。
ちなみに「支持政党なし」は北海道での立候補だが、本部は東京都内の大田区蒲田にあるという。ならば選挙後に、ちょっと話を聞きに行ってみようかなあとも思っているところだ。

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