以下のサイトに関連して、私の思うところを続いて書きますね。
「
噴火1分前、山頂付近にいた安否不明の登山者に対する朝日記者が非常識すぎると炎上中」
(grepe)
あのですね、最初に言っておきますけど、この朝日の記者のようなツイートをすること自体を、私は全然非常識だと思いません。それは何も今回の送り主が読売だろうが産経だろうがそう思います。
(ただ、書き方や依頼の仕方ってものがあるだろうとは思っていて、その点では「Nスタ(TBSテレビ) 」の「大変な状況のところ恐れ入りますが、御嶽山に関して掲載された写真をお借りしたくフォローをお願い致します」なんて文面のほうが露骨過ぎて、俺は嫌だけどね)。
これは先日もあるところで発言したんだけど、今や事件や事故、災害の現場において「一番最初のニュース発信者」になりうるのは「たまたまその現場にいた一般の人々(小学生の子供かも、近所にお住まいのご老人かも、偶然出張中や旅行中にその場に出くわしたビジネスパーソンや学生かも)」である。だって今やみんなスマホとかを持ってて、その場で即座に写真、さらには生中継画像をネットを通じてアップできる時代。
だから実は「ニュース(NEWS)」「報道」とか銘打ちながらのこのこ現場にやってくるマスメディアの取材陣というのは、その場にいた当事者の人はもちろん、警察や消防署や救急車よりも後の「一番遅れて現場にやってくる存在」なんですよ。
そのことを謙虚に認めたうえで(前記の朝日の記者さんらが「謙虚に認めていたか」はまだわからないけど)マスメディアやそれ以外の人間、それこそ私自身が(今回は外出先でスマホで「えー、噴火したんだ!?」と思うくらいだったが)現場にいた人にウェブで直接アクセスして情報を得ようとすること自体が、別に悪いとは(重ねて言いますが相手への伝え方を含めたデリカシーの問題はあるにしても)私は思いません。
「
今、どこかで大事故が起きたとして、テレビ局がまず考えることっていったら『映像を誰か持ってないか、探せ!』ですよ。自分で撮りに行こうというんじゃなくてね。ですから最近は視聴者提供の映像が凄く目立つ」
というのは今から7年前、『GALAC』という放送専門誌で私が司会を務めた「戦場ジャーナリスト座談会」での綿井健陽さん(ビデオジャーナリスト)の発言だ(同誌2008年2月号に掲載)。既に7年前のその時点でそうだったし、今回の御嶽山噴火でだって、たぶん上記の朝日やTBS以外にも、噴火に際して御嶽山に登山中の人たちにアクセスしようとしたマスメディアの人間が他にもいなかったとは断定できまい。
冒頭にリンクしたページではたまさか朝日新聞が例の件で目下針のムシロ状態にあることからそういうタイトルになったんじゃないかという気がするが(違ってたらタイトルをつけた人はご連絡ください)。
それは別に上の綿井さんの7年前の発言以前、14年前のコンコルド墜落事故の際に、滑走路から火を噴きながら離陸しようとしていた墜落機を、たまたま同じ空港で別の機の中にいた客が撮影した写真が『ニューズウィーク』の表紙に使われた(撮ったのは日本人ビジネスマンで「使い捨てカメラで撮影したあの一枚が440万円で売れた」との噂も出ているが、真相は定かではない)頃から、あるいは既にもうマスメディア関係者にも(認めたくはなかったのかもしれないが)「わかっていた話」だったのである。
もう一つ、
今回の御嶽山噴火でおそらくテレビ局などマスメディア関係者の古参社員たちの脳裏をよぎったのは、23年前(1991年)の雲仙普賢岳噴火の際の報道だったのではないか。
あの時は噴火による火砕流によって記者やカメラマンに16人もの犠牲者が出た。
上記の座談会での綿井さんも、あれが「一つの大きな転機」になり、「そこも『社員の安全確保』という問題が出てきているわけですよ」と語っていた。
マスメディアの記者やカメラマンも「正社員」ならば、当然危ない取材先への取材には社内の労働組合も敏感になるし、特に放送局などは免許事業だから、渡航自粛勧告が出ている海外の紛争地やら、行政が立ち入り禁止にした区域への潜入取材はどうしても「お上」の顔色を伺って慎重になる。
んじゃ、そういうところからの最新かつ生々しい映像・写真・レポートを誰がするかって?
もちろん「マスメディアの正社員」以外の人間(フリーランスジャーナリストや、その現場にいてたまたま当事者や第一目撃者になった一般の人々)ですよ。それでも今は別に困らない。繰り返すが「今や誰だって映像や写真や活字で、しかもリアルタイムでネットで発信できる」からですよ。
ちなみに上記の「戦場ジャーナリスト座談会」は、2007年9月末にビルマ(ミャンマー)でフリージャーナリストの長井健司さんがヤンゴン市内での紛争中に射殺された件を受けて企画されたもので、放送局の社員がそうした普賢岳噴火などを経て行かなくなった危なそうな現場へと、長井さんと同様にフリーランスのジャーナリストである綿井さんや山本宗補さん、あの「不肖・宮嶋」こと宮嶋茂樹さんら6人にご出席いただいて実現したものだが、その中には山本美香さんもいた。その後、彼女が一昨年(2012年)のシリア取材中に銃撃されて命を落としたとの報を最初に聞いた時には、本当にいたたまれない気持ちになった。
だから今や大災害や戦場の現場の、一歩間違えれば命に関わるような現場にマスメディアの社員は(絶対にとは言わないが)そもそもいないし、そうした現場からの生々しい映像や写真を伝えるのは、フリーランスのジャーナリストか、たまたまその現場にいた一般の人々だったりする場合のほうが多いのだ。
だとすれば、こうしたメディア環境下でマスメディアの記者が、噴火現場の近くにいた人をネットで探してみつけるなどして、現地からの報告を頼むこと自体は(これも繰り返すが頼み方の問題はあるとしても)もはや「当たり前のことだ」と思ったほうが正しい。
そこでさらにまたさらに繰り返すが、そうした現場から映像や写真を送ってくれる人々に対して心からの心配やケアをすべきは、別にマスメディアに限らず、それを視聴したり読んだりする「私たち」全体について言えることなのである。
別にマスメディアの記者の送ったメールをあげつらうのはどこの社の社員に対してであろうと構わないが「じゃあ、そういうテメーはどうなんだ!?」との問いは、マスメディアの社員に限らず誰にでも投げかけられるべきものなのだ。
(と書くとまた馬鹿が「マスメディアの問題を不問にするのか?」とか言ってくるかもしれないが、それに対しては「俺が不問にしているように見えたなら、お前が自分の責任においてマスメディアを問い詰めろ」と言っておこうか)
しかし、仕事の原稿を抱えている時に限って(だから今日も飲み会の御誘いを断ったのに)こういうことを書きたくなっちゃう事態が起こるんだよな。
まったくもう!(-_-;
あと最後に、冒頭にリンクしたサイトの末尾に
「
多くのユーザーとともに、『enari』さんのご無事をお祈りしています。」
とあるが、これに対しては
「
偽善を書くな、馬鹿野郎!」
と書いておく。そんなの、今さらお前が(どこの誰べえだか知らないが)末尾を体よく締めるために書くまでもないことだ。

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