というわけで静岡・藤枝まで「青春18きっぷ」で一昨日「帰静」。今日には「帰京」します。
ちなみに「青春18」旅で西へ往く人々がよく嘆くのは「
静岡県がなが〜い!」ということだ。
確かに静岡県内は東は熱海から西は浜松の先(豊橋の手前)の新所原まで約180kmも往く東海道本線は、主要幹線であるにも関わらず、終日にわたり(途中から支線に乗り入れていく特急を除けば)各駅停車しか走っていない。
しかも使われている車両はいわゆる通勤型(東京の山手線や東急、大阪環状線や大阪市営地下鉄のように窓に背を向けて横向きに座るベンチシート)ばかり。つまり「この区間を新幹線を使わず乗り通したいなら、通勤電車の各駅停車で、約180kmの区間を3時間ぐらい我慢する乗る覚悟で乗れ」という設定になっている。
一方で東京〜熱海間には1時間に何本も快速が走るし、ゆったり座りたい客向けにグリーン車(ちなみに「青春18」利用者でも500〜1000円の追加出費で利用できる)が全列車についている。また、静岡県から2駅西へ出た豊橋から先、兵庫県の姫路までは快適な座席(2人ずつ前を向いて座れる)を備え、かつスピードもやたら速い「新快速」や「特別快速」が終日15〜30分間隔でびゅんびゅん走っている。
何でそうなるかというと、おそらく静岡県内のJRには競合する路線がないからだ。同じJRでも、東京から熱海までは新幹線(JR東海)と東海道線(JR東日本)で会社が違うし、小田急などの並行私鉄もあって競合が発生するので、東海道線にも伊豆行きの特急や快速が走る。また、西のほうでも米原から先は新幹線(JR東海)、東海道線(JR西日本)で会社が違い、なおかつ阪急や阪神、京阪といった競合私鉄が並走する。豊橋〜名古屋〜岐阜では新幹線も東海道線も同じJR東海だが、この区間にも名古屋鉄道(名鉄)という大手私鉄が長年のライバルとしてほぼ並んで走っている。
要するに競合相手がある区間では車両・スピードともにサービスを充実させるけど、それ以外の区間にあたる静岡県内の東海道線ではJR東海も露骨に手を抜いているのである。
が、それも無理はないなと思えるのは静岡県の場合、東から熱海・三島・新富士・静岡・掛川・浜松と新幹線の駅が6つもあり、そこを「各駅停車の特急」である「こだま」号が日中ほぼ30分間隔で走っている。しかもそのこだま号は、需要の大きい「のぞみ」や「ひかり」と、ダイヤが乱れた時の柔軟な運用変更を見越して同じ16両編成(うちグリーン車3両)で走っているのだが、これは静岡県内の各停車駅間における輸送需要を考えれば明らかに供給過剰だろう。だからJR東海としては「もし急いでゆったり行きたいなら鈍行なんか使わず新幹線を使ってくださいよ。せっかく県内に6つも停車駅を作ったんだし」というのが本音なんじゃないかと推測する。
でも「青春18」利用者が途中で新幹線を利用しようとしたら、静岡県内だけでも800〜2000円ぐらいする特急料金のほかに乗車券も別途買わなければいけない(せめて特例で「『青春18』利用者でも一駅間だけ500円払えば新幹線に乗れますよ」とでもすりゃいいのに、と思うのだが)。
で、いかにもまた「鉄」的に前置き解説が長くなってしまったが、そんな中で私が今回、その“苦行”の区間を往く“裏技”として使ったのが、下の写真の「ホームライナー浜松」。
いわゆる特急用車両を、夕方の勤め帰り客用に安い料金で走らせる「ホームライナー」は東京や大阪などでもおなじみだが、静岡県内の東海道線でも夕刻に何本か支線直通用の特急車両を使って走っており、中でも沼津駅を18時32分に出る「ホームライナー浜松3号」は前述の東西に長い静岡県内をほぼ特急並みの停車駅で、しかも「青春18」利用者でも一律320円のライナー券をホームの自販機で購入すれば乗車できるという実にありがたい(私の実家最寄りの藤枝駅にも停まる)存在だ。
しかも大半のホームライナーが通勤客利用のない土日休日は運休となるが、この「浜松3号」は基本的に毎日運転で、しかも浜松から先は普通列車に変わって豊橋まで行くらしい。(一方で逆方向はもっぱら反対に朝の通勤客目当てで、しかも途中の静岡駅を境に系統がわけられているので、「青春18」族にはあまり旨みがない)。
それにしても「ムーンライトながら」も今や季節限定の臨時列車化されてしまったり、以前は山陽本線を大阪から九州まで夏休みなどに走っていた臨時夜行快速も廃止されて久しいなど、「青春18」きっぷも昔に比べて使い勝手がどんどん悪くなる中で、「鉄」方面の人々はこうした少しでも快適に安く長距離を往ける裏技的列車を虎視眈々と探しているのだが、おそらく一方ではJR側もダイヤ改正のたびにそうした列車を潰しにかかっていて(- -;)、しかもそんなことをやってるうちにかつての「鉄」少年たちは私も含めてみなことごとくオジサンになってしまったというのが今日の世知辛い社会なのであった(苦笑)。

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