「青春18きっぷ」のポスター集ってのが公開されている。
特に優れた作品ばかりというわけでもないけど、「ああ、そういえばこういう作品もあったな」と印象に残っているのが結構多い。
「
前略、僕は日本のどこかにいます。」
「
いつかは、急がなければいけない日がくる。」
「
『決められたレール』は、無いほうがいい。」
「
学校を卒業すると、春は黙って行ってしまうようになる。」
「
『早く着くこと』よりも大切にしたいことがある人に。」
「
思わず降りてしまう、という経験をしたことがありますか。」
「
初めてに、年齢制限はありません。」
なんてコピーは、このきっぷならでは。特に最後のはきっぷの販促上も重要だな。今だに「え、『青春18きっぷ』って18歳以上でも使えるの?」とか言う人が結構いるし。「ジパング倶楽部」の会員さんになれるような御歳の方だって、旅慣れた方は結構使ってらっしゃいますよ?(^-^)
個人的には、確かこのきっぷをJRの前身の国鉄が最初に発売したのが1982年の春。まさに私が18歳になろうとしていた時のことだった(当時は「青春18のびのびきっぷ」という名前だった)。その私がそろそろ「ジパング倶楽部」に加入できそうな齢になるまで続いてきたんだから大したもんだね。
実際、このきっぷには10代の頃から本当にお世話になってきた。大学(岩手大学)時代も盛岡から静岡まで、2200円の1日券(当時は1日有効券の5枚セットでの販売だったのを大学生協でバラ売りしてくれたのだ)で帰省したことがある。確か盛岡を朝5時55分に出る鈍行(電気機関車が戦前製の古い旧型客車を引っ張っていた)に乗り込んだのを手始めに、何度も乗り継いで、静岡駅に着いたのが夜の9時すぎじゃなかったかな?
東京に出て就職してからも、帰省の際によくお世話になった。何せ東京からだと快速や鈍行乗り継ぎでも3時間で着いてしまうからだ。新幹線だと1時間だけど、5000円以上かかる。その半額以下で、しかも自宅から実家へ帰ったその晩は泊まりだから、1時間が3時間になったところで大してしんどくもない。
あと、正月休みの帰省ついでに「北陸のほうにでも行ってみようか」と思いながら西へ旅立って、京都まで行ったところが発車案内板に博多行きの夜行快速の発車時刻の表示が出ていたのを見て、発作的に行き先を変更して九州まで行っちゃったこともある(20代の頃の私はしょちゅうそんなことをやっていた。休日の朝に「伊豆の温泉に行こうか」と思いながら家を出たのに、夕方には函館山から夜景を眺めていたのは25歳の夏のことだったかな?)
サラリーマンを辞めてフリーライターになってからも「青春18きっぷ」にはプライベートどころか仕事(というか取材)でずいぶんお世話になってきた。関東各地でオウム信者の移転騒動が頻発化した1999〜2000年頃には毎度お世話になったし、2001年に熊本県の山江村で行なわれた「住民ディレクター」のワークショップを取材しに行った時なんかは「青春18きっぷ」のワンセットと夜行快速の座席指定券(500円)を使って総計約1万3000円で東京から九州まで総計30回近く乗り換えながら往復したからな(笑)。
また、某誌でも「岩本太郎の青春18メディア紀行」というタイトルの連載記事を5年ぐらいやってたことがある。これは全国各地で活動している「市民メディア」を、私が「青春18」や安い交通手段で取材に行くという企画だった。
あと一昨年の1月にも、事故を起こした福島第一原発の半径20q圏内ぎりぎりのところまで見に行ってこようと(同時にネット中継もしようと思って)東京から、常磐線が寸断された北限の広野駅まで「青春18」の2300円で往復したんだけど、駅から警戒区域まで10qもあったためにタクシーを使ったら3000円以上もかかって(東京からの往復代よりも高い!)、仕方なく帰路は駅まで徒歩で帰ろうとしたら途中で車に撥ねられ(少し接触しただけで別に怪我はなかったけど)、撥ねた男性が詫びてきたついでに途中まで車に乗せてもらったら東電の臨時社員だったんでいろいろ話を聞いたなんてこともあった(
2013年2月22日付「とりあえず“警戒区域”の前まで行こうとB(楢葉町からの帰り道で交通事故に遭う ^_^;)」参照)。
だから公私ともども「青春18きっぷ」には若き日からの深い思い入れがある。どっからが「公」でどっからが「私」だか、もはやわからんというかどうでもいいような状況になっとりますが(汗)。
もっとも、その「青春18きっぷ」の使い勝手自体はこの20年ぐらいでずいぶん悪くなってしまった。
上記の通り、かつては1日有効券の5枚セットだったのが、金券屋対策で5日分有効券1枚にまとめられたのは何年前だっけ? ようするに1日利用するごとにスタンプを押す形にしてバラ売りできなくしたわけだ(もっとも今でも金券屋では誰かが2〜3日使って余った分を買い取って売ったりしているけど、店に上乗せされてしまって高い)。
何より「18族」ご用達だった長距離の夜行快速列車が次々に廃止されたり、新幹線の開業でJRから経営分離された並行在来線が「18きっぷ」では乗れなくなってしまったり(一部に乗車可能な第3セクター鉄道もあるが)。
上のコピーの「いつかは、急がなければいけない日がくる」状況は、他ならぬJR自身が促進してきたんじゃないかって文句の一つや二つや三つも言いたくなるところだぞ。けれども、かくいう私自身も、以前はシーズン毎に必ず買っていたのが、最近は正月やお盆の帰省時に買うくらいで、春休みはパスしちゃうことが増えた(新宿から静岡までの格安高速バス路線もできたしね)。
まあでも、日本の「鉄旅文化」を支えてきた貴重な存在のきっぷだとも思うしね。きっぷ自体の廃止説も既にだいぶ前から噂されているけど、できたら末永く存続してもらえるように、これからもなるべく使うようにしようと思っております次第。

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