こういう論考↓のご紹介をいただいた。
「
Vol.150 中華人民共和国憲法と自由民主党日本国憲法改正草案 〜Series「改憲」(第4」
(医療ガバナンス学会 2013年6月19日 18:00)
ようするに「
今の自民党が進めようとしている改憲草案が通ると、目下喧嘩している相手である中国の憲法に近くなる」という趣旨。
なるほど。やっぱり「
激しく対立する二者は、対立が深まるほど互いに似る」ってことなんですかね。それとも現政権は両国が互いに似たような憲法を持つことで日中関係の改善に寄与できるとか思っているのかな?
それはともかく「安倍政権支持」とか「憲法改正すべき」とか「中共はファシスト政権だ」とか盛んに言ってた人たちは「支持してきた安倍政権が憲法を改めたら、批判してきたファシスト政権と同様の憲法を日本が持つことになる」との指摘に、はたしてどう答えるのかな?
ちなみに私、ガチガチの護憲論者でも「憲法原理主義者」でもないです。現行憲法9条の精神は守るべきだと思っているけど、自衛隊の存在をいつまでも解釈論で先送りするわけにいかんだろうし「自衛隊っていったい何のための組織で、何をやってよくて、何をやったらいけないのか?」はもちろん「あれは軍隊か否か」(だいたい英語名じゃ「Japan Self-Defense Forces」=「日本自衛軍」だものね)を、天皇同様「主権の存する日本国民の総意に基く」形で決めたほうがすっきりすると思うんだけどね。
一方では9条でそう決めた限りは、例え中国だろうが北朝鮮だろうが韓国だろうがロシアだろうが台湾だろうがアメリカだろうがが軍事力で攻め込んできた場合にも丸腰で対峙できる誇り高き「日本男児」でありたいとも思っております。
あ、それと第一章の天皇条項も何とかしたほうが思っております(^ ^; だって第一条からして「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」って言ったって、これまでその日本国民の「総意」が確認されたことなんてなかったわけだし、そもそも山本太郎さんが園遊会で手紙を渡しただけであんな馬鹿げた大騒ぎが起こっちゃう現状があるからね(だいたい「国民の総意に基づく象徴」であるはずの天皇に、国民(しかもこの場合は「国民の選挙で選ばれた」国会議員)が直接会った際に手紙渡すのが何で悪いのか、国際社会からすれば意味不明だろうし、そこをきちんと説明できるか? できないから山本太郎さんは今も堂々と国会議員をやってるんだよ。
それに昔、同じ園遊会で米長邦雄さん(棋士・東京都教育委員=当時)が「日本中の学校にとにかく、国旗を揚げて、国歌を斉唱させるというのが私の仕事でございます」と天皇に言ったのに対して「強制になるということでないことがね、望ましいと」と答えたこと(ちなみに米長さんは「本当に素晴らしいお言葉をいただきまして、ありがとうございました!」とか返答してたけど ^ ^)が、国旗・国歌を公共機関である学校でどう扱うかという極めて政治的な問題に天皇(憲法第四条で「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」とされている)がそういう発言をしたことに対して「憲法上どうか」と異議を唱えた声は寡聞にして聞いたことがなかったし、それで山本太郎さんが手紙を渡したことに対して憲法をタテに「天皇の政治利用だ」とか騒いだところで所詮ダブルスタンダードなんだよ。
おまけに
バカな週刊誌がそれを「手紙テロ」とか書いてたのが、その後の特定秘密保護法案採決前の石破「テロ」発言の温床を用意しなかったとは言わせない(同週刊誌はこの件についてはすっかり知らんぷりを決め込んでいた)。放送や新聞など免許制度や記者クラブ制度に牛耳られてきたマスメディアへの対抗言論だったはずの出版社系総合週刊誌の雄にしてこの体たらくだからな。まあ、今の週刊誌や出版業界の状況からするに、大手出版社としてもそっちに与したほうが安全策なんでしょう。出版社の編集者だってサラリーマンで、親の介護や子供の教育費や自分の年金のことを考えたら、余計なことをやって自分の将来に向けた生活設計が揺らぐことはやりたくないんでしょうし)。
話がそれたので元に戻すと、自民党の改憲草案は以前にも目を通したけど、上記の天皇や9条にとどまらず、私なんかからすれば「この野郎、そう来たか」と思わせる箇所が多い。逐一述べると長くなるのでなるべく簡潔に済ますが、第12条や第13条、第20条、第21条などは明らかに「骨抜き」にかかろうとしている意図を感じる。
そうしたあたりを、上にリンクした論文では個別にチェックしながら
「
自民党憲法改正草案では、国民に対する国旗・国歌の尊重義務が盛り込まれたり、後で述べるように集団主義が強まったりするなど、価値の多様性が大きく後退した。この意味で、自民党改正草案は、現行の日本国憲法に較べて中国憲法に近い。」
「
自民党改正草案では「公共の福祉」に代えて、「公益及び公の秩序」を用いており、集団主義に大きく振られている。公益や公の秩序を政府が認定するとすれ ば、政府の恣意で、人権が制限できる。多様な価値が認められにくくなる。この意味では、自民党改正草案は、中国や北朝鮮の憲法に近い。」
「
自民党改正草案は、現行憲法に比較すると、立憲主義の観点からは、中国憲法に近い。」
などと再三に渡って「中国憲法に近い」としている。中国を「ファシスト国歌」と批判しながら憲法改正を目指す人々が目指す日本は「ファシスト国家と同じ憲法のもとに国民を縛る国」だというのであれば、お笑い種というほかない。
もう一つちなみに、私、中国って大好きです(笑)。昔バックパッカーとして旅した14ヶ国・地域(当時はまだ香港もマカオも中国に返還されていなかった)の中で、列車や宿の手配から人々の対応からして一番アタマに来たのが中国だったんだけど、それも今はいい思い出。それも6年前に仕事で天津に行った時にはずいぶん変わっていたしね。「市民メディア」の世界に関わりながら、日本にいる中国人の人たちとも(尖閣問題以降も)ずいぶん語りあったし、国籍や文化や風土の違いを超えて、私は中国も韓国もベトナムもインドも、訪ねた国はみんな好きになれた。
だからといって、それらの国々の政府や政体に対しても全肯定できるかといったら、それは別問題。俺から見たって今の日本政府がひどいと思う以上に、中国人は自国の政府がひどいということは日本人以上に思っている(というか、中国人って基本的に「政府」ってものを信用してないし、彼らからすれば「日本人は何でこんなに政府を信用するんだ!?」ってのが率直な思いじゃないのかな。だって言われたもんね、日本に来た中国人に「社会主義国から出てきて日本にきたら、日本こそ本当の社会主義国だった」って。
まあ、今や中国が社会主義国だなんて誰も思ってないだろうし、そりゃあんだけどでかい国なんだから矛盾なんて盛り沢山だなんてのは、少しでも訪ねたことのある人間だったら誰でもわかる。それを批判するのも別にどんどんやるべしと思うけど、やってく中で自分の国が批判相手の国と同じ欠点を抱える国になっちゃてもつまらんでしょ? その前に非力な「愛国者」かつ最近では「テロリスト」扱いされている私としては、せめて自分の国が何とか変なことにならないようにと思う次第であります。かつて戦前にも国を想うがゆえにテロに走った人は大勢いたけど、それに比べりゃ天皇に手紙渡したり国会前で絶叫してるテロリストのほうがはるかに平和的でいいでしょ(^-^)。ではでは♪

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