というわけで14時20分頃、高幡不動駅から多摩モノレールに乗り換えると、ホームでフラスコワークス氏(カウンター側)と出会う。「いいんですか? 私(岩本)と一緒にいて」と聞くと「大丈夫ですよ」とのこと。
何しろ今回の場合はいつもの新宿や新大久保のケースとは違い、場所的にデモ参加者もデモに反対する者も呉越同舟的にこの多摩モノレールで現地に向かう形にならざるをえない。高幡不動から万願寺までは一駅だが、それでもやっぱり周囲に誰がいるか気にならざるを得ない。ちなみに私もこの日は知り合いが「デモ参加者」のほうにいて、自宅を出る前に電話で「現場で会っても知らない振りをしてましょう」とお互いに話したばかりだった(何でも前日に発売の『週刊金曜日』に私が書いたヘイトデモについての記事がまた先方を刺激したらしい)。
なのである程度予想はできたのだが、万願寺駅で下車して階段を降りると――やはり改札口のすぐ向こう側には制服・私服の警察官と機動隊員が、狭い切符売り場前の空間に大勢待ち構えていた。さっそく「どちらに行かれます?」「デモ参加者のかたですか? それとも反対側?ですか」と尋ねられる。
「反対側ですが、基本的には取材に来ています」
「でしたら、こちら側(デモ隊集合場所の公園につながる出口:既に機動隊員がぎっしり)に行くのはちょっと待っていただけますか? トラブル防止のためにということで」
と、警視庁警備一課から来ているというその若い私服警官は言った。
「わかりますけど、んじゃ我々はどうすればいいんですかね?」
「4時になればこの真下の道路(※モノレールの万願寺駅は道路の真上にある)をデモの人たちが通りますので、それまで待っていただければ……」
「駅の外には出られるんでしょうか」
「こちら側からでしたら」
ということで公園方面とは反対側の出口を示される。つまりデモ隊が通る車線の反対側にいてくれ、ということだ。
そこまで話したところで「参加者」の知り合いから携帯に着信。「いやあ、みんなかなりいきり立っています。デモが通る時にはなるべく近づかないでください」
とはいえ、このぶんでは近づこうにも近づけなさそうだ。時刻はまだ14時30分、デモ前の集会が始まるまで30分、デモ開始まで1時間もあったが、まずは駅構内からUstで状況を立ちレポする(なお、映像中で「上北台駅に来ている」というのは当然「万願寺駅」の誤り)。
■8.24日野万願寺「原発推進」デモ映像報告その1(1分36秒)
Video streaming by Ustream
中継する私を横で見ていた先刻の警備一課の警官が「それで中継されてるんですか」と、終わった後でにこやかに聞いてきた。新大久保や浅草のデモの際にも警備に来ていたそうなので、私のことも少し覚えていてくれたのかもしれない。「新大久保のデモはもうできないんですか?」と訊くと「う〜ん、まだちょっとわからないですね」との返事。
ともあれ階段を下りてデモコースと反対側の歩道に出ると、ここでも機動隊員数名が待ち構えて「どちらへ行かれます?」。カウンターの姿はまだ少なかったが、どうも機動隊員は相当な数が動員されたようで、反対側の道路にはさらに大勢のヘルメット姿が見えた。
もっとも、この時点ではまだ開始まで時間があったせいか、すぐ先の交差点の横断歩道を渡って反対側の歩道に出ることができた。「駅の出口を固めた意味ねーじゃん」と思ったけど、やっぱりこっちでも出口のすぐ先に鉄柵が置かれ、機動隊員に「ここから先はすみません」と静止される。ここからでも集合場所の下田つつじ公園までは住宅街を北へ徒歩3分の距離だ。
一時的に電波が上手くつながらなかったので写真を撮ったりしていたが、やはりほどなく「すみません。そろそろ向こう側に移動してもらえますか」と言われ、機動隊員さんたちと一緒に再び駅構内を通って反対側へ。先刻の若い警官が「どうかお願いしますよ」と苦笑しながら声をかけてきた。
反対側にはぼちぼちカウンターの人たちも集まり始めていて、常連さんとも次々に会う。もっとも新大久保でのぐちゃぐちゃ状態なんかの時と違って、この日はしばき隊はもちろんプラカ隊も来ていないし(というか後者は組織だった団体ではないし、呼びかけ役の木野トシキさんもこの日は立川や高幡不動も含めて不参加だった模様)、あくまで個人としてやってきた人たちが最終的に40名程度。デモ呼びかけ役の
瀬戸弘幸さんは予め「最大で見積もって千人以上の左翼が集結する事も考えられ」とか言ってたけど、実際はそんなものであった。
なので、私も撮影しているとカウンター側の参加者の話が聞きづらくて(^_^; 新大久保のような状態だったら逐一断ってる余裕もないのでそのままカメラも回しちゃうが、こうした本来なら郊外の閑散とした場所だと「顔出しNG」という人が多いのである。仕方なく断続的に、かつレンズを横に向けたりしながら撮る。
上の写真に移ったうちの一人のかたは4年前の蕨市におけるカルデノンさん一家退去デモの頃からカウンター活動に関わってきたが、当初はデモ隊が喚き散らす醜悪な罵声やに対してカウンター側が怯えつつ肩身を狭くしながら見届ける状況だったとのこと。それが今では形成が完全に逆転し、向こうが「左翼が千人やってくる!」などとビクビクしながらそれでもしつこくデモを続けるという状況になっている。
■8.24日野万願寺「原発推進」デモ映像報告その2(20分22秒)
Video streaming by Ustream
所在なく佇む機動隊員2人に話しかけてみた(上の映像の18分25秒頃から)。デモ隊がここを通る時刻を訊ねると「16時すぎぐらいですね」とのこと。ただ、16時スタートでぐるりとコースを回ってくるとなると16時10分ぐらいになるのではないかと思ったら「いや、すぐに来ちゃいますよ。15分で終わるデモなので」と言う。
「15分で終わる!? デモがですか」
「そうです」
「じゃあ、そこの公園を出て(表通りを)ぐるっと回って(同じ公園に)戻っていくだけ?」
「ちょうど一回りするだけです」
「でも15分って言ったらコースはせいぜい2kmぐらいしか……」
「2kmもいかないです」
後で聞いたらこの日のデモは参加者が約100人、カウンター側はさっきも言った通り40人くらい。それに対して機動隊側は、これも後で他の人が機動隊員に直接聞いたという話に寄れば2000人が動員されていたそうである。デモ隊やカウンターに対して一〜二桁違うぞ(笑)。
「そのデモのためにこんだけのおまわりさんたちが来て(警備を)やるなんて、何だか理不尽だと思いません?」と訊いた私に、人の良さそうな機動隊員さんたちは苦笑して答えない。
すみません。ここでまたちょっと中断して、続きは後で。しかし、俺も「所要15分、コースにして2km弱」のデモの報告を、よくもこう延々と書くもんだよな f(^_^;;
(つづく)

3