一ヶ月以上前に書きかけたまま放っておいた記事(↓)。以下にアップします。
先日、雨の日の午後に外出中、中途半端に時間が空いたので、
副都心線(東京メトロ=地下鉄)と
東横線の直通電車にちょっとだけ乗ってみることにした。3月に直通運転が始まってから始めての乗車だ。
新宿三丁目駅の副都心線ホームに下りると、ちょうど同駅始発で東横線直通の元町・中華街行きが発車するところだった。先日まで副都心線は池袋から渋谷まで通しで走る列車ばかりだったが、直通運転に伴なうダイヤ改正で、途中の新宿三丁目で折り返し終着・始発となる東横線直通列車が生まれた。おそらくこの辺は乗り入れ各社(東急・メトロ・東武・西武)間での協議や、実際に直通させてみた後の需要の見極めも念頭においてのことだろうし、今後も同じ系統が残るかどうかはわからない(今のうちだけかもしれない)。
渋谷駅の副都心線ホームは、すっかり「主要駅」の雰囲気になっていた。ホームが2面、線路が4本設けられていたうち、直通運転開始まで使われていなかった中央部分の4番線に電車がつくと、どどっとお客が乗ってきた。今やここが横浜への東横線の始発駅。5年前の副都心線開業時点ではいかにも安普請でガラガラの駅という感じだったが、さすがに様変わりした。
ただ、渋谷が直通運転開始でまるっきり「中間駅」になっちゃったというわけでもなくて、どの列車も結構長く停車する。当然、鉄道会社の境界駅だから運転士もここでメトロ→東急に交替するし、ワンマン運転の副都心線とは違って東横線の列車には今でも車掌が乗務する(発車するやすぐに肉声の車内放送が流れるからわかる)。また、渋谷では急行が各駅停車と接続のうえ追い抜くほか、「以前だったら渋谷から座って帰れたのに!」という以前からの勤め帰り客のために、渋谷始発の横浜方面行き列車も結構残されているようだ。東急電鉄としても駅上に「ヒカリエ」を作ったのに続いて渋谷駅前再開発に乗り出しているし、直通運転開始で渋谷駅が素通りされてしまうのも好ましいことではないのだ。
ともあれ直通列車は地上へ。隣りの代官山駅はホームのすぐ東側が旧線と新線の付け替えポイントで、今なお残りの工事が続いていたが、駅のたたずまいはほぼ従来のまま。東急ってのは本当にこういう器用な工事をソツなくこなす会社だなと感心する(以前の二子玉川駅での田園都市線と大井町線のホーム入れ替え工事なんかもそうだった)。トンネルをひとつくぐった中目黒駅はメトロの日比谷線との合流駅だが、今回の副都心線乗り入れに併せて、日比谷線と東横線が同駅経由で50年近く続けてきた相互乗り入れ運転は廃止された。東京の地下鉄と私鉄との乗り入れ運転が廃止されたというのは、たぶん初めてのケースだろう(一説には、日比谷直通車両と東横線車両とでは車体規格が違ってドアの位置が異なるため、最近首都圏の各線で進められているホームドアの設置工事が行ないにくかったからだとも言われている)。中目黒駅のホームには、今や東横線内に入ることもなくなった日比谷線の車両が佇む。
とりあえず私は、自由が丘駅まで行って折り返す。自由が丘駅のホームは、写真を見ても(ホームの路面や屋根の形状から)分かる通り、以前より長く延ばされていた。従来の東横線は8両編成が主体だったが、乗り入れ相手の副都心線や東武・西武はいずれも10両編成の電車が走るため、とりあえず直通してくる急行列車の停車駅に関してのみホームを延伸したのだ。ただし各駅停車は今でも8両編成が主体のため、通過待ちの各停はホームの中ほどに止まる。
そんな各駅停車を尻目に、副都心線経由で埼玉方面へと直通する急行・特急が行き交う。帰路のホームで待っていたら、西武の車両による「特急 西武球場前ゆき」がやってきた。この日は西武球場でライオンズのナイトゲームがあったらしいが、それにしても東横線から、そんな行き先の電車に乗る日が来るとは! まあ、やがて当たり前になるんだろうけど、十数年前に横浜(現DeNA)と西武が日本シリーズを戦ったみたいな機会がまた来たら、結構沿線もそれで盛り上がるかもしれない。
それにしても、こうした他社間を直通する列車でややこしいのは「列車種別」(つまり特急・急行・準急・快速・普通)の問題だ。なぜなら、鉄道会社ごとによって列車種別に対する考え方が違うからだ。
例えば上記、私が東急線内から乗った「特急 西武球場前ゆき」は副都心線に乗り入れる渋谷からは「急行」になり、さらにその先の西武線内に入った途端に「快速」になる。乗客からすれば「何で?」って感じだけど、そのへんのややこしさは今回の直通運転に関わる各社(東急・東京メトロ・西武・東武ほか)も認識しているらしく、乗車した「西武球場前ゆき」車内のドア上にある液晶モニターには、副都心線内(ここでは「急行」)でこんな案内が出ていた。
ようするにこういうことだ。東急の場合は「特急」といってもJRの特急列車のような特別料金や座席指定の要る特別な列車ではなくて、急行や各駅停車と同じ車両を使って運行される、あくまで「一番停車駅が少なくて速い電車」でしかない。
で、東京メトロはというと、過密化した都心部を基本的に各駅停車で運行するのが中心。通過駅なんか設けると逆にその駅から苦情が来るし、地下路線ゆえに他の私鉄のように急行が各駅停車を追い越せるような設備や規模を持つ駅を作ろうとしたらトンネルを掘る金からして予算が膨らむ。
だから東西線(路線の東側は千葉県内の新規埋立地に作った高架線なので追い抜き施設も作りやすく、千葉方面からの利用客が「都心に早く通いたい」とのニーズに応えて快速運転を実施)や、今度の副都心線(ほぼ並行する山手線や埼京線の混雑緩和を見越して、途中駅で「急行」が各駅停車を追い越せるように予め造った)以外は基本的に各駅停車のみの運行が中心。
ただ、数年前から千代田線が乗り入れ相手の小田急線からの通勤利用客のニーズに応えて、小田急名物の「特急ロマンスカー」を乗り入れさせるようになった。このロマンスカーはメトロ千代田線内でも「特急料金」が必要。だから同じ会社の中で料金が必要な特急と、そうでない特急を混在させるわけにはいかない。まして副都心線と千代田線は渋谷の隣りの明治神宮前(原宿)駅で接続しているので、乗客をまごつかせるわけにもいかない。
さらには、その先の乗り入れ相手・西武池袋線も「レッドアロー」というロマンスカータイプの有料特急電車を走らせている。しかも西武池袋線ってのがまた、列車種別がたくさんかつ煩雑(快速急行・急行・通勤急行・快速・通勤準急・準急)とあって、例えば快速急行の停車駅を通勤準急が通過したりで、よそ者には(「鉄ヲタ」の私でも)いったいどの電車に乗ったら一番早く目的地に着けるのか、わけがわからない(
ここ参照)。
まあ、ようするに高層ビルのエレベーターと同じで、各台ごとに停止階(停車駅)を散らせることにより利用客(ビルなら1階、池袋線なら池袋駅に最終的に集中する)を少しでも分散し混雑を緩和しようという苦肉の策なんだろうが、しかし今後は東急線内から所沢や西武球場を目指す客をまごつかせることになりそうだな。
その点、もう一つの乗り入れ相手である東武東上線は「TJライナー(有料制)・快速急行・急行・準急」の順なのでまだわかりやすいけど、同じ東急の田園都市線が東京メトロの半蔵門線を介して乗り入れている「東武スカイツリーライン」の場合は有料特急の「スペーシア」の次に速いのが特別料金不要の「快速」「区間快速」で、その次に「急行」が来るのだから、このあたりの調整は乗り入れ各社間でさぞやいろいろ調整に手間取ったんではなかろうか。
しかも将来的には「西武と横浜DeNAが対戦するんで」あるいは「所沢や川越から横浜の中華街まで」「横浜から“小江戸”川越や秩父方面まで」のんびり座って行きたいってなことで有料ロマンスカーを直通運転させようとかいった話にならないとも限らない(なんたって今後は人口が減る一方でそういう高齢者の観光需要はどんどん増えるから)。並行するJRの山手線・埼京線の利用客減少にも既につながったそうだし、そうした諸々の観点からもこの直通運転、はたして今後どうなるんでしょうかね。

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