私も物心ついて以来の「鉄」だけど、これまであんまりこういう駅を見た覚えがないなというのが、今年10月21日(日)に、10年以上の歳月をかけてようやく高架化工事が完成した
京急蒲田駅(東京都大田区)。まるで要塞のような高架駅だ。
首都圏以外の方に説明しておくと、
京浜急行電鉄というのは東京都内の品川駅(JR山手線や東海道新幹線などに接続)を実質的な主要ターミナルとして、横浜や三浦半島(逗子、横須賀、久里浜など)方面のほか、20年近く前からは羽田空港への旅客輸送も担うようになった大手私鉄である。
で、その横浜・横須賀方面への「京急本線」と、羽田行き「空港線」の分岐点になってたのが上記の京急蒲田駅。上の写真左側にあるのが駅本体で、その右側へと上下2本の真新しい高架線で横切っていくのが「空港線」。
で、その2本の真新しい高架線の下を通っているのが「第一京浜」こと国道15号線だ。何しろ東京と横浜の間を結ぶ幹線道路だから交通量は相当なものがあるわけだが、写真の2本の高架線が完成するまでは道路上に京急線の踏切が存在し、しかも羽田空港と東京・横浜を結ぶ直通電車がバンバン往来するもんだから、ここの前後では常に大渋滞が発生するという問題がかなり以前から顕在化していたのだ(以下、YouTubeにも映像が出てます)。
">■間もなく廃止 京急蒲田 第一京浜踏切 〜駅伝の名所でもあった踏切〜(2分59秒)
ちなみに、この第一京浜は上記の映像タイトルにもあるように、明後日(2日)から行なわれる「箱根駅伝」の1区および10区の名所(迷所?)にもなっていた。京急はなるべく選手の邪魔にならないよう踏切通過ダイヤの調整も従来から行なっていたが、数年前には復路の10区で某大学の選手がここで線路に足をとられてリタイヤし、チーム自体も棄権となる悲劇も生じた。それがようやく解消されたということで、たぶん今度の2・3日の中継では紹介されるでしょうから、御覧の方はどうかご注目あれ。なお、私が11月初旬にわざわざ(^_^; 現場見物に行った際には、まだ高架下に踏切跡のレールが残っていた。今ではもう撤去されたかな?
そう、この踏切、御覧のように「単線」だったのだ。そこを東京や横浜からひっきりなしに羽田空港行きの電車が行き交うようになっていたというのがそもそもの問題だった。だから今回の高架化では、一番上の写真の通り上下二段式の複線になった。
東京都心から羽田空港へと言えば、浜松町駅から延びる
東京モノレールが長らく主要なルートだった。一方で京急はといえば、いちおう昔から京急蒲田より分岐する「空港線」はあったが、羽田空港とは川を一本隔てた駅が終点で、およそ空港利用客が使う路線ではなく、実際に京急蒲田と同駅との間を各駅停車が細々と行ったりきたりするローカル線でしかなかった。
それが一転して空港アクセス路線として脚光を浴びるようになったのは、1990年代中盤に羽田空港が沖合展開したのに伴ない新たなターミナルビルが開業し、京急の空港線もその真下の地下駅に乗り入れたのだ。運輸省(現在の国土交通省)も増え続ける羽田利用客をモノレールだけでさばくのは無理だと考えたのだろう。まして京急が羽田空港までつながれば、横浜駅からも電車で空港まで行けるようになり、東京モノレールだけではカバーできなかった利用客への利便も図れる。
京浜急行はそれまで品川〜横浜・横須賀方面間でJRの東海道線や横須賀線と競合関係にあるということで時速120kmの「快特」(快速特急の略)を並行区間にバンバン走らせる戦略を採っていた。実際、乗ってみるとそのブッ飛ばしっぷりが何とも爽快だったわけだが、それ以降は羽田空港の利用客輸送も経営上の大命題と位置づけるようになった。ところが本線から羽田への分岐点となる京急蒲田駅の設備が前述のように貧弱で、せっかく新規マーケットとして拓けた神奈川県内〜羽田空港間利用客用の直通列車も当初は満足に走らせられない有様だった。そこで、京急本線の高架化と併せ、京急蒲田駅の大改築工事をこれまで10年以上かけて進めてきた。
で、その末にようやく新装なった京急蒲田駅は、先日紹介した京王線の調布駅と同様、上下線のホームが二層(上下)に重なる構造になった。ここから枝分かれする主要2線が互いに運行を支障させないための工夫だが、調布駅(地下駅)と異なるのは地上の高架駅における二層構造だということと、実際の運行系統を踏まえたホームの造り方の違い。そしてこれがまた、活字でどこまで説明できるかというぐらいにややこしい。
まずは品川方面から羽田空港行きの「エアポート快特」に乗ってみる。品川から空港の「国際線ターミナル」駅まで京急蒲田も通過で、所要わずか12分で運賃400円。確かに速いし安い。これは浜松町からのモノレール「空港快速」が同13分・470円に対抗したものだろう。ただし京急蒲田駅を通過としたことで、蒲田に区役所を置く大田区は大いに不満を抱いているらしい。
(京急蒲田を通過しながら空港線へ:つまり冒頭の写真に写った上の線路に乗りながら撮影)
んで、いったん羽田空港駅まで行った後に折り返して京急蒲田駅へ戻り、3階の「下りホーム」へ。このホームの両側、1番線からは羽田空港or横浜方面行きが、3番線からは横浜・三浦海岸方面行きが発車する。どちらも東京・品川方面から見れば「先へ行く」列車になるので、ホームの案内表示で行き先さえ確認すれば、そんなに迷うこともなさそうだ。
が、よく考えてみると同一平面のホームの両端が何で「1番線」と「3番線」なんだ? と思うわけだが、実はこのホームの南方(横浜方面)の先に、ホームの西側(3番線側)を欠き取る形で「2番線」があるのだ。品川から京急蒲田まで各駅停車でやってきた電車が停車し、3番線にひっきりなしに到着しては横浜方面に発車していく快特や特急を退避して先に行かせるのだ。
つまり、この下りホームには同一平面状に3つの番線が存在する。ちなみに京浜急行の列車は最大で12両編成まであるから、こうした構造を採用した結果、ホームは東海道・山陽新幹線なみに長くなっている。だから歩きながら撮影して正直疲れたけど(汗)、しかしこの真下の2階には全く同じ作りの上りホーム(4〜6番線)が存在するのだった(大汗)。図面にするとこうなる(↓)。
ともあれ東京方面に戻るべく、その2階の「上りホーム」にエスカレーターで降りてみると、こちらは結構混乱していた。
4番線の隣りが6番線で、奥にホームを欠き取った5番線があるというのは上を見てきたからすぐにわかったけど、ここでの問題は4番線から「品川方面行き」と「羽田空港行き」という、全く逆方向の列車がほとんど交互に発車するということだ。
何でそうなるのかというと、京急が今回の高架駅開業に合わせて「品川方面⇔羽田空港」と、「横浜方面⇔羽田空港」の列車をどちらも10分間隔で運行するという大幅な増発を行なったからだ。品川から羽田への列車は3階の下りホーム1番線から出るが、横浜から羽田への列車は2階の4番線から出る。そのためホーム上には「羽田空港方面専用」の発車案内が掲出されているが、この京急蒲田駅から乗って羽田へ行こうとする客は、発車案内を見ながら2階に行くか3回に行くか即座に判断しなければならない。
(※ただ「快特」は品川方面からで空港線内ノンストップ、「急行」は横浜方面からで空港線内は各駅停車という違いはある。前者が東京モノレールとの競合上スピードを優先したのに対し、後者は横浜近辺など沿線各駅から直接羽田まで行きたいというニーズを優先したのだろう)
しかも上記の通り品川方面に行こうとする乗客にとっても羽田行きと同じ4番線のほか、反対側の6番線、あるいは長いホームの端まで歩いた5番線からも列車が出るので、いったいどっちに行くのが早く品川へ着けるのか、案内表示を見ながらまごつく様子の客もいた。品川までの各駅停車も5番線と6番線の両方から出るので、案内板を見ながらホーム上を大移動しなければならない。
そういったことも予め見越してか、京急側も2階の上りホーム上に、珍しく下のような案内所を設けていた。ある意味でよくできた駅だとは思うのだが、運行系統の複雑さからしてどんな客にもパーフェクトとはいかないし、案内上それなりの苦労はやっぱりあるだろう。
そんな京急蒲田駅だが、その新幹線駅か要塞かという偉容の反面、隣接した駅ビルなどの大型商業施設は無い。駅のすぐ東隣は前述の通り第一京浜でスペースが無いし、西側は小さな商店街や密集した住宅街があるのみ。もともと蒲田の中心部は京急蒲田駅から西側にかなり離れたJRや東急の蒲田駅周辺にある(大田区役所もJR駅前だ)。当初、京急が空港行きの快特を原則的に蒲田通過にしようとしたのもそのせいかもしれない。
ただ、地元では以前から“蒲蒲線”という構想がある。東急の多摩川線を地下で京急蒲田駅を経由して空港線に接続させ、羽田への利便を向上させようというものだ。
周知の通り、来春には東急が副都心線を通じて新宿や池袋、さらには所沢や川越とつながる。なのでこの構想が実現すれば、都内西部や埼玉からの羽田への利便は確かに向上する。もっとも東急と京急は車両規格が違うので直通運転が難しいほか、地元では反対運動もあると聞く。まあ、実現したら更にまたこの駅周辺は様変わりすることになるだろうが。
――などと、大晦日の早朝に何を純度丸出しの「鉄」ネタ書いてるんだ俺は(-_-)。

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