一昨日(16日)は夕方から池袋の「
自由学園明日館」(←すんげーオシャレなとこ)で開かれた、「
草の実アカデミー」第29 回セミナー「
今、目の前にある危機〜コンピュータ監視法案と共謀罪復活」に参加。
司会は
林克明さんで、講師は沢田竜夫さん。参加者には
寺澤有さんや
三宅勝久さん、
かめよんさんの顔も。

(↑沢田竜夫さん[向かって左]と林克明さん)
なんか「共謀罪」の時とおんなじ顔ぶれやんけ、と言われそうだが、実際そうなのだ。上記のタイトルにもあるように、この「コンピュータ監視法」、我々「
共謀罪に反対する表現者たちの会」が数年前にジタバタと暴れたあげくにどうにか廃案に持ち込んだ共謀罪法案の蒸し返しというか、亡霊的な復活につながりかねないものであったりする。
正式には「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」と銘打ったこの法案が国会に提出されたのは、実に今年の3月11日(!)の午前中のことだったという。無論、狙ったわけではないんだろうけど、結果的にはその日の午後からの震災・原発事故での大騒ぎのドサクサに紛れる格好で、メディアでもほとんど報じられることなく(唯一、東京新聞は「こちら特報部」欄で大きく取り上げていた)、あれよあれよという間に衆参両院の法務委員会を通って6月17日には参院本会議で可決・成立。既に今月から施行されてしまった。共謀罪の時には反対の立場で野党共闘を組んだ民主党も、与党に回った今回は法務省・警察庁や自民・公明両党にまるめこまれる形でほぼ全面的に賛成したため、あっけない幕切れとなった次第。
で、この法律、何が問題なのかというと 概ね以下の通りになる。
●ウイルス作成罪(不正指令電磁的記録作成罪)
刑法に新設。コンピュータウイルスを「意図に沿った動作をさせず、不正な指令を与える電磁的記録」などと定義。そのうえで
@研究などの正当な理由がないのに、それを作成したりバラまいたりした場合は3年以下の懲役もしくは50万円の罰金。
A「正当な理由」なく所持・保管した場合も2年以下の懲役または30万円以下の罰金。
――ただし、その「ウイルス」の定義や「正当な理由」の判断基準は捜査当局まかせ(被害の有無も関係なし)で、捜査当局者も「実害の発生に先手を打つ捜査に欠かせない武器になる」と言っているとか。
●通信履歴の保全要請
刑事訴訟法に新設。捜査機関が電子データを証拠収集するための法律手続きとして、裁判所の令状がなくてもプロバイダーに、
@データ提出を命じて差し押さえられる。
A記録が保管されたサーバからのデータも複写もOK。
B特定の人間の通信履歴を60日間保存するように要請できる。
――要するに、確たる証拠がなく犯罪の嫌疑もない状態でも当局の恣意的判断により、特定個人の通信履歴を(もちろん本人には知らされずに)保全要請ができる。
●IT捜索差し押さえ手続きの簡略化
例えば特定のPCなどで作ったビラとか呼びかけメールを「名誉毀損」で差し押さえた場合、接続する全ての情報が(それこそケータイから呼び出し可能なメールや留守録も含めて)覗かれる。
――アクセスが接続している限り、どこまでも捕捉することが可能になってしまう。
とまあ、要するに警察側にフリーハンドを与え、実質的には憲法21条(「集会、結社および言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」)や同35条の「令状主義」に抵触する法律だというわけだ。
もとをたどれば、これはかつて廃案となった共謀罪法案の際にも理由に挙げられた、国際的な「サイバー犯罪条約」の批准に向けた国内法の整備として出てきたものだった。ところが共謀罪法案がゴタゴタの末、政権交代などあって完全にお蔵入りしてしまったことから、今回はかつての共謀罪法案に関連する部分を巧妙に省きつつ、静かーにそろりそろりと出してきたということらしい。ウィキリークス騒動や公安データ流出、尖閣諸島ビデオの件、ソニーの海外での大規模な情報流出などを口実としつつ、一方では「3.11」後の反原発・脱原発の巨大なムーブメントやに警戒感をたぎらせた法務省・警察当局側の危機感も、おそらくは反映しているのだろう。
それにしても今回の場合、はたして「コンピュータ監視法」に反対する側がどういう形で対抗軸を形成し、運動を盛り上げていくのかというあたりが難しいところだ。まあ、かつての共謀罪法案の時も、2005年の総選挙で小泉率いる自民党に300議席を取られ「もうこりゃだめだー」ってな状況から何とか頑張って廃案に持ち込んだわけだけど、今回は「コンピュータ監視法」が既に国会を通っちゃったところから戦い方を構築していかなければならないのだ。
ただまあ、放っとくと本当に「共謀罪復活!」なんてところに行きかねないし、今のうちから(遅まきながらかもしれんけど)注意しておいたほうがいいだろう。必要とあらば、我々もまた共謀罪の時みたいなバカ騒ぎ(←褒め言葉だよ)もやるかもしれんし(笑)。とりあえずお見知りおきいただければと存じます。ではでは。

1