上の写真は10日ほど前に撮ったもの。今日の午後に通りかかったら、既に解体作業が着手されたらしくて周囲がパネルで覆われていた。
中野駅から南に徒歩3〜4分、中野通りと大久保通りがクロスする通称「中野五叉路」に面したこの古色蒼然とした建物は、ある意味で駅前の丸井本店(現在改築工事中)と並ぶ、中野南口のメルクマール的な存在だった。正面に名前の掲げられた「中野光座」は確か昭和の終わりごろまではポルノ映画館として活きていて、閉館後も時折アングラ演劇の舞台として活用されていた。そのすぐ下には中野名物(?)の「佐世保バーガー」が店を構え、隣りには商店会「新栄会」のもとに八百屋や小料理屋、雀荘などが昭和20〜30年代テイストそのままについ最近まで営業を続けていた。
私が初めてこの街にやってきた20年前から「どうせそのうち取り壊されるんだろう」とは思っていたけど、ここにきて遂に閉鎖→解体に至ったのは、五叉路周辺の道路拡張工事に関連してのことらしい。そのすぐ隣にあった、これまた凄絶に年季の入っていた中野ヘルスクラブ(フィットネスジム、というより「ボディービル」ジムといったほうが正しかった。筋骨隆々の欧米人男性を描いた看板が色あせたままずっと残っていた)は一足先に跡形もなく解体され、今ではフェンスに囲われた空き地に「道路予定地」の看板がぽつんと立っている。
中野は新宿まで電車で5分の便利な街だが、駅周辺の街の活性化には完全に失敗しているところがある(一駅隣りの高円寺の一帯周辺と比べれば明らかだ)。サンモールやブロードウェイなどオタクスポットとして外国人観光客もやってくる北口はまだしも、南口商店街の空洞化は著しい。南口駅前に君臨していた丸井の本店が3年前に建て替え(一時は「これを期に完全撤退」との噂もあった)のため閉店して以降ますます殺伐とした街になったなという印象があったが、今回の中野センター閉鎖によってさらにまたつまらない街になろうとしているのだろうかと危惧してしまう。
といっても、たぶん中野という街はこの先も大規模な再開発でピカピカに生まれ変わったりすることもなければ、古き良き東京の街並みが残されるわけでもない、東京都心近くのいたって中途半端な街として存在し続けるのかもしれない。
なんだかんだで私も中野区内で既に20年以上住んでいる。中途半端な者を受け入れるに相応しい、中途半端な中央線沿線都市――それでこそその名に適う「中野」なのかもしれない。そんな中、静かに消えていく「中野センター」、本当におつかれさまでしたと長年の労をねぎらいたいところである。

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