2018/5/9

「南北和解から、子どもたちは何を学ぶのだろう?」〜連休中に考えたこと3  政治・社会・文化


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ピーテル・ブリューゲル(父) 「死の勝利」(パブリックドメインQ)

 大型連休中、南北朝鮮の標準時が統一されたり、スウェーデンで開かれている世界卓球選手権で唐突に合同チームがつくられて南北対戦が回避されたり、イギリスのブックメーカーの掛け率で今年のノーベル平和賞の候補のトップが金正恩国務委員長と文在寅大統領、ドナルド・トランプ大統領が2位になるなど、世界は平和の雰囲気に満ち満ちています。
 私はこの事態がまったく理解できずに困惑しています。
 こんなに平和の雰囲気を盛り上げておいて、人々はそこにどんな落としどころを思い描いているのか。私はさっぱり分からず、丘の上のバカみたいにあたりを見回しているのです。


【当事者はこんなにも違う】
 一部評論家は「トランプ大統領はアメリカに到達するICBMの廃棄だけを認めさせて、それで手を握るのではないか」と恐れたりしますが、あれほど過去の大統領をバカにしてきたトランプが“北朝鮮の核保有を最終的に認めた大統領”という汚名に唯々諾々と甘んじるとは、とても思えないのです。北朝鮮問題について「誰もなしえなかったことをする」と大言壮語したあの男が、そんな現実的な選択をするとはとても思えない――。

 一方、「北朝鮮の核放棄の意志は本物で、おおむね日米の思い描いた通りことは進む」という人もいますが、「CVID(完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄)」というのは要するに、北朝鮮領内のどこにも核兵器及びその資料が残らないということです。金委員長が北朝鮮領内の軍事情報をすべてさらけ出し(というのは「この施設には核はありません」などという説明は通らないからです)丸裸になって見せるなどということが、どうしてあり得るのでしょう。

 この件に関して一番自信を持っていそうなのは文大統領です。大統領を熱烈に支持する韓国の政治家・政治学者の中にも、具体的なイメージを持っている人は大勢いそうですが、納得のいくような計画を立てたという話はどこからも聞こえてきません。

 日本国内では「置いてきぼり論」「蚊帳の外論」があって、安倍総理は一日も早く日朝会談の道筋をつけるべきだ言っている“専門家”たちがいますが、安倍=金会談が行われたとして、そこで何が話し合われるのか、それも私には分からない。
 金王朝が続く限り、100兆円払っても田口八重子さんや横田めぐみさんは帰ってこられないと私は思うのです。スパイ養成機関で働いていた二人は世界中に散らばった北朝鮮スパイを知っているわけで、そんな人物をおいそれと日本に帰したりはしないでしょう。金政権が滅びれば別ですが。


【人権問題はいつまで不問にできるのか】
 今のところ文大統領は、北朝鮮の人権問題に一切触れないことで南北融和を推し進めています。それも私がこだわっていることです。

 叔父を殺し兄を暗殺し、気にくわない部下を次々と残忍な方法で粛清し、数百万人の国民を飢えさせて、多くの子どもに路上生活を強いた。それなのに国の収入の半分以上を自らの金庫に入れ(朝鮮労働党39号室)自らはブタのように太ってしまったあの男――。
 国外的には、通貨偽造、麻薬・覚せい剤密売、偽造タバコ密売、ハッキングによる銀行預金の強奪等々、国際犯罪組織顔負けの暗躍を指揮するあの男――。
 その政権を保障し、笑顔でつき合うなんて私は真っ平だと思うのですが、メディアも各国政府も驚くほど冷静で、まったく無関心でいられるみたいです。

 もちろん北朝鮮と国際社会が手を結び、経済が発展して交易が盛んになれば、飢える国民も路上生活の子どもも、「39号室」による国際犯罪の必要もなくなるかもしれません。しかしそのときであっても、国家の収入の半分以上が独裁者に吸い上げられる仕組みはなくならないはずです。
 今は世界中が北朝鮮の人権問題を棚上げにして「金委員長にもノーベル平和賞」をなどと言っていますが、この問題をいつまでも放置することはできないはずです。


【私はもう諦めてもいい】
 私はつい昨年末まで、本気で2018年夏までに第二次朝鮮戦争が起こって、それは一瞬のうちに終わり、米中の思惑の狭間で新しい親中政権がつくられ、過去が清算され、拉致被害者は日本に帰され、安い労働力を求めて殺到する外国企業によって北朝鮮は真の復興を果たす、そんなふうに考えていました。

 しかしこのまま進むと根本から違っている米朝会談は決裂し、――というより開かれず、貿易問題や南シナ海問題で米中関係が怪しくなると中国は経済制裁に穴をあけ、それを見た韓国もあれやこれやと援助をしたがって開城工業団地の再開くらいには簡単に行き着いてしまう。
 核とミサイルを保持し中国との仲を回復した北朝鮮は、あえてアメリカを刺激する必要もなくなって、あとは御しやすい文政権とともに南北統一の同床異夢を見る、そんなことになりかねません。

 私はもう韓国を諦めてもいいような気がしています。
「日本のすぐ隣に、核を持った反日統一国ができる」と恐れる人もいますが、文政権が現在のように南北統一にまっすぐ向かい、その文政権を韓国国民が熱烈に支持するなら、もうそれは韓国の内政問題です。
 中国が東アジアに影響力を広げたがって、トランプ大統領が心の隅で「なんでオレたちが金を払って韓国を守らなくちゃいけないんだ」と思っている限り、どうも筋の良い道は見えてきません。


【南北和解から、子どもたちは何を学ぶのだろう?】
 ところで、現在の南北和解の状況から、子どもたちは何を学んでいるのでしょう?

 平和の大切さでしょうか?
 敵対し合った者同士が手を結ぶことの素晴らしさでしょうか。
 それとも南北融和、半島統一といった夢のような話でも、強く願えばかなう、ということなのでしょうか。

 もしかしたらそうではなく、今回のできごとから国際政治の難しさ、政治力学のありよう、大国のエゴイズムや小国のしたたかさなどを学ぶ子もいるかもしれません。

さらにそれらとは別に、
「やっぱ核を持っていなきゃ話にならんよなあ」
 そう思った子もいるのかもしれません。
 今後実現するかもしれない日朝会談も、核を背景に自信あふれる三十代の金正恩と、経済力しか持たない寂しい六十余歳の安倍晋三という構図で捉えられるのかもしれません。
 制裁を加えようにも、もう日本に残る手段はほとんどなくなっています。

 筒井康隆だったと思うのですが、
「かつてアメリカと戦争をして負けた日本は、戦後、飛躍的な経済発展を遂げることができた。アメリカに戦争を吹っ掛けて負けるのが発展の近道かもしれない、そう考えて戦争を始めた小国の物語」
 そういう小説があったと思います。その後の物語の流れも結末にも記憶はないのですが(もしかしたら読んでいない)、今回の北朝鮮と周辺の動きを見ていると、やはり核を持つことが一番重要だと考えた金一族の判断は正しかったと結論づける人たちも出てきそうです。

 核を完成させたばかりに父も祖父もなしえなかった「アメリカ大統領を引き出す」という偉業を成し遂げ、しかもトランプは自分のひざ元にまで来ようとしているのです。
 実際に核兵器を持つ必要はないのです。持つという意志を示し、何らかの行動を起こすだけで世界は注目し、資金を出し、あるいは合衆国大統領ですらひれ伏すのです。

 北朝鮮の開けた風穴を、同じようにすり抜けようとする国は次々と出てくるでしょう。そして飽和状態になった時、日本国内から反核という人は一掃されているに違いないのです。
 日本も核武装すべきという声が国内の津々浦々から上がってきます。

 戦争の危険を冒してでも、金政権をさらに追い込まなければならないと考えるのはそのためです。




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