2018/3/20

「卒業式」〜苦い思い出  教育・学校・教師


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(イメージ PhotoACより)

 卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
 中学校へ進む人も高校へ進学する人も、大学や社会へ進む人も、一歩一歩階段を上るたびに可能性は閉じ、社会は広がっていきます。無限にあるかと思った未来がそうでもないということを思い知る――その点で可能性は減っていくのですが、その分、未来は具体的に見えてきて、自分の生きる将来の姿ははっきりとしてくる、そういう意味です。

 以前にも申し上げましたが、この世界は大人が、自分たちの生きやすいようにつくった大人のための世界です。うまく付き合うことができればきっと面白いことばかり。楽しみにしてください。


【卒業式の苦い思い出】
 さて今日は卒業式。
 卒業式というと一番に思い出すのは、中学校で3回目に卒業させたクラスのことです。
 さすがに3回目ともなるとそこそこの教員に成長していて、安定した学級経営と落ち着いた生活ができていました。ですから卒業式の日も、前2回とは違って生徒の前で涙を流すことなく、微笑んで子どもたちを送り出すことができました。

 校門の前で生徒を見送り、最期の生徒の姿が見えなくなって職員室に戻り、私は昼食会までの時間を卒業生からの手紙を読んで過ごすことにしました。副担任の先生が私に内緒で、生徒一人ひとりに呼び掛けてまとめてくださった手紙の束です。
 読んでいるうちに封筒に名前を書き忘れたものがあって、広げると便箋の真ん中あたりに、小さく数行、汚い字でこんなふうに書いてありました。

「先生、ぼくを病院に連れて行ってくれてありがとうございました。
とってもいい先生でした」

 便箋にも名前がなくて、しかし誰が書いたものかもちろん分かりました。
 物静かでにこやかで、いつもみんなからからかわれながらしかも大切にされているような子でした。いじめにつながるのではないかと心配しながら見ていましたので、他の生徒よりよほど丁寧に見守っているつもりです。
 自分はちゃんとやっているという自信があって、だから見落としていたのかもしれませんが、ある日廊下で教務主任に呼び止められ、
「T先生、あの子、大丈夫かよ。天井を見て歩いているぞ・・・」
 私のなんと愚かだったことか、しっかり見ていたはずのその子は友だちと一緒でないとき、ほんとうに異常な感じで茫然と天井を見ながら歩く子になってしまっていたのです。

 保護者と相談して受診させたのが3年生の2月。
 一緒に病院に行ったのですが、医師からは、
「元気の出なくなる病気だね」
ということで、今から思うと鬱傾向といった話だと思うのですが、薬を処方されて帰ってきました。
 卒業式はその一か月後のことです。

 ほんとうもっともっと早く気づき、手を打たなければならなかったはずです。それをいかんともしがたいところまで放置して、どうしようもなくなって投げ込んだのが病院だったのです。 
 それを、「ぼくを病院に連れて行ってくれてありがとうございました」だなんて、私はもう泣けて、泣けて、涙がボロボロと音を立てて床に落ちるのを止められませんでした。
 ほんとうに申し訳なく、心の置き所がありませんでした。


 それからその子はどうなったのかーー。
 実はよく分からないのです。
 卒業式の翌月、私は100q以上離れた別の土地に転居し、学校も替わってしまったからです。しばらく連絡は取っていたのですが、それもいつか途絶えてしまいました。
 教師は常に多忙ですので、生徒の追跡調査だとか事後対応とかはしません。本当はすればいいのですが、いま担任している子どもとともに、以前の子のことまで考え対応することはなかなかできることではありません。
 のちにその子が施設に入ったという話を聞きましがたがそれも確認していません。さらに平成30年の今、どうなっているかは全くわからないのです。

 同じように、教師としてやってあげるべきことを果たさず卒業させてしまった子は何人もいます。心が痛みます。

 いい仕事だってきっとしてきたはずなのに、困ったことに現職の時代を振り返って思い出すのは、こんなことばかりです。


※世の中の学校が春休みなので、「アフター・フェア」もしばらくお休みにします。
 何か特別のことがない限り、再開は4月1日を予定しています。
 貴乃花部屋の力士が暴力事件を起こしたり(当然、警察には被害届は出されたでしょうね?)、文大統領ばかりでなく、金正恩委員長やトランプ大統領にまでノーベル平和賞を上げようという運動が始まったり(文大統領ノーベル平和賞推進委員会結成へ…トランプ・金正恩の共同受賞も推進)、ツッコミどころ満載の世の中で、いつまで黙っていられるかわかりませんが――。


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