2022/2/28

「更新しました」〜キース・アウト  教育・学校・教師


 ようやく教員免許更新制度の廃止が正式に決まった。「お前たちはバカだから、“自信と誇りを持って教壇 に立ち、社会の尊敬と信頼を得ること”ができるように、更新制を用意したから自腹を切って受講しろ」と強要された制度がなくなるのはいいことだが、この14年間の屈辱を、政府はどう償ってくれるのだ?
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2022/2/28

「子どもたちよ、これが戦争だ」〜今、ウクライナを教えないことは罪だ  教育・学校・教師


 ウクライナ情勢が緊迫して、変化の勢いも激しい。
 難しい問題だが現在進行形の歴史的大事件、
 いま、これについて子どもたちに語らないことは罪だ。
 少し勉強して子どもに知らせ、質問に答えられるようにしておこう。

という話。
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(写真:フォトAC)

【ロシアのウクライナ侵攻、原因と目的】
 ロシアがウクライナに深く侵攻しています。
 昨日のNHKの解説によれば、プーチン大統領は、
1. ウクライナがNATOに加盟することによって、ロシアの喉元にヨーロッパの匕首が突き付けられることに抵抗がある。
2. もともと兄弟国で仲の良かったウクライナが、ロシアに背を向けて“あちら側”に行ってしまうことが我慢ならない。
3. 仲がよかったからこそ曖昧なままにしておいた国境線について、“あちら側”に行くようなら今回こそはっきりさせようという意図がある。
 そんなふうに言っていました。
 何か未練がましい男が去っていく女性を追いかけ、嫌がらせをしているような話ですが、その説明を外してしまうと、いま、この状態で大規模な戦争を仕掛ける理由がどこにも見当たりません。ですから案外、的を得た話なのかもしれません。

 ではプーチン大統領の最終目的は何かというと、これもNHKの解説ですが、
○ ゼレンスキー大統領を拘束または殺害し、ロシア寄りの政権を立て、最終的にはウクライナの非武装と中立(具体的にはNATO非加盟)を実現する。
こと。なるほど、これも分かりやすいと言えば分かりやすい。

 同じことは多国籍軍や米軍がイラクやアフガニスタンでやったと言う人もいますが、国内を強権で抑え、国際的にも孤立していたフセイン政権やタリバン政権と、大統領選挙では72%の支持を受け、現在もわずか19・3%とはいえ第2位に6.4ポイントの差をつけて支持を受けるゼレンスキ―政権は異なるでしょう。
 気に入らなければ力づくで政権を変えてもいいというロシアの論理が通用するなら、領土に野心を持つ国はほかにもありますから、世界はあっという間に力で土地を奪い合う19世紀に戻ってしまいます。そんなことが許されていいはずがありません。


【時代は変わっている】
 幸いにも以前とは異なるさまざまな条件があります。ひとつは、
1. ロシアが曲がりなりにも民主主義国の体をなしてきて、国の内外で反戦の声を上げ、デモを繰り返す人々がいること。フィギュアスケートのメドベージェワのように、SNSを通じて反戦の意思を明らかにする有名人も出てきたこと。
2. 2014年のクリミア併合以来の国際的経済制裁にロシア国民はうんざりしており、この上の制裁にはかなりの抵抗があること。
3. 国民は兄弟国であるウクライナを攻めること大義を感じておらず、14年のような熱狂はまるでないこと。
4. ロシア内外を問わず、これはロシアの戦争ではなくプーチンの戦争だと意識されていること。
5. 2014年以来、ウクライナの軍備増強が進んでいたこと。
などです。
 好材料もあります。状況を見て行きましょう。


【少し勉強して子どもに知らせ、質問に答えられるようにしておこう】
 政治や社会問題の重要度に関して、私はよく、
「これはいつか歴史の教科書に載るような内容かな」
と考えます。もちろん高校の教科書と中学の教科書は違い、小学校の社会科の教科書に載るとなると、私の生きてきた六十余年でも東日本大震災くらいしか考えられません。今回のウクライナ侵攻についても、このさき第三次世界大戦にでも繋がらない限り、中学校の教科書にすら載ることはないでしょう。

 しかしやがて国際政治や歴史を学び、世界を活動の場として生きるかもしれない子どもたちが、現在進行形で起こっている歴史的国際的事象に目を向けておくことは大切です。将来、「ああ、あの時はこういうことがあったな」とか「国際社会はこのように反応したな」という思い出せることは、学習を深める上でも、生き方を決める上でも重要です。

 残念なことに、現代の先生たちは新聞も読まなければニュースも見ません。そんな時間があるなら少しでも学校の仕事を進めておきたいと、皆が思っているからです。
 だから事態がひじょうに大きくなってからようやく気付くのが普通なのですが、ウクライナ情勢もいまや大きな意味での歴史の一齣になりそうです。ちょっと立ち止まって少し調べ、あらましだけでも子どもに語って注目させれば、40人の学級の中の2〜3人くらいは食いついて、以後のニュースに深く注目するかもしれません。それも教師の仕事です。
 それに子どもから先に質問してきて、こちらが応えられないのはやはりまずいでしょ?

(追記)
 27日までにEU・アメリカ・英国・カナダなどはプーチン大統領他の資産凍結を決め、国際的な決済ネットワークからのロシアの銀行の締め出しを検討しました。日本もまた、これに同調する方向で動いています。
 EUはさらに、ロシアの航空機に対し領空を閉鎖、通過や着陸を禁止すると発表し、これにもカナダなどで同調する動きが出ています。
 これはもう欧米諸国対ロシアの、放火を交えない戦争です。
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2022/2/25

「理解はできないが、その思いと誠意は尊重できる」〜明日は2・26  歴史・歳時・記念日


 明日は2・26事件の起こった日だ。
 私はそうとう熱心に調べたことがあるが、共感できるところはなかった。
 しかし思いは尊重できる。
 そしてこの国を、その思いにふさわしい国にしなくてはならないと思った。

という話。
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(写真:フォトAC)

【2・26事件】
 明日2月26日は「2・26事件」の起こった日です。今から86年前の1936年に起こったこのクー・デター未遂事件は中学校レベルで、
「政府の方針に不満をもった陸軍の若手将校が、約1500名の将兵を動かして政府の重臣4名他を殺害するとともに、4日間に渡って首都中心部を占拠した事件。その後クー・デターの恐怖は政界に影を落とし、軍部の発言力がさらに増すこととなった」
と説明されます。

 中学校の学習としてはこの程度にとどめるしかないのですが、教える側としてはもう2割増し程度には学習をしておくべきかもしれません。不満を持ったら大臣を殺して替わりを入れればいいといった単純なものではないからです。


【事件を起こした人々】
 1936年当時の日本は7年前の世界恐慌の影響から脱出できず、企業は次々と倒産して街には失業者があふれていました。農村でも農作物価格が下落し、都市からの帰農者も増えて生活は日ごとに苦しくなります。次男以下の男子は軍隊に入り、女子の中には売春宿に売られる者も出てきます。一方、財閥と呼ばれる巨大企業グループは財を膨らませ、政府の中には財閥と一緒になって汚職をする者も目立ってきます。

 陸軍はこの状況に深刻な危機感を持ちます。軍隊の底辺には貧しい農村出身の兵士がいくらでもいましたから状況の悪化は刻一刻と伝わってきます。また1931年の満州事変以来、中国東北部の運営もうまく行っていませんでしたから、なんとか影響力を増して政府を動かしたいと考えたのです。

 政府を何とかしたいという思いは陸軍内部の共通のものでしたが、方法論の違いによってこのころまでに2つの派閥が形成されます。「統制派」と「皇道派」です。
 前者は既存の政府システムを使って軍の意思を政府に反映させようとする人々で、後者は後醍醐天皇のような天皇親政(天皇による直接統治)を目指した人々です。

 実際のクー・デターを指導した皇道派青年将校の論理は明快でした。天皇は臣民の幸福を一心に祈って無謬である。自分たちも至誠の心をもって国民の幸福を追求している。それなのに政治がうまく行かないのは、天皇と自分たちの間に挟まる政治家たちが、天皇の意思を曲げているからに違いない。したがって彼ら奸臣を廃し、適切な人材を入れれば素晴らしい親政が行われるに違いない――そう考えたのです。なんと初心なことか。


【事件の終了】
 企ては彼らが信頼して止まなかった天皇その人によって封殺されます。陸軍上層部は何とか皇軍相撃つ状況だけは避けたいと妥協の方向に動いたのですが、天皇は「私が最も頼みとする大臣達を悉く倒すとは、真綿で我が首を締めるに等しい行為だ」「陸軍が躊躇するなら、私自身が直接近衛師団を率いて叛乱部隊の鎮圧に当たる」と激しい剣幕で、取りつく島がなかったのです。昭和天皇が意思をはっきりとさせ、直接、政治を動かしたのは、この時と終戦の時だけだったと私は教わりました。
 決起軍はその瞬間に反乱軍となり鎮圧されます。

 2名がその日のうちに自決。指導した他の将校19名と民間人2名が死刑になり、その他多くが無期懲役などの重い罰を受けることになります。何も知らずに参加した兵たちも、のちに繰り返し激戦地に送られ、平均をはるかに超える死者・負傷者を出すことになりました。


【理解はできないが、その思いと誠意は尊重できる】
 私は大学の卒業論文のテーマが天皇制でしたので、2・26事件についてかなり突っ込んで勉強しました。しかし事件を起こした青年将校たちに対する一片の共感も生まれません。多くは時代の制約によるもので、戦後生まれの私と、まさに軍国主義の真っただ中で育った将校たちが思いをひとつにすることはできないのですが、それにしても遠い。愚かな人たちとも思いませんが感じ方・考え方はどこまで行っても平行線です。

 ただし私はこんなふうにも思うのです。
 感じ方も考え方も理解できないし共感もできないが、国や国民を思うその気持ちだけは尊重できる。自分たちの大義のために命を投げ出した、その真摯な思いと誠実さは大切にしたい。

 歴史というものはさまざまな思いや犠牲の上に成り立っています。2・26の将校ばかりでなく、戦争では多くの若者が国と国民のために進んで命を差し出しました。私がいつも思っていたのは、そうした人たちに恥ずかしくない国をつくらなくてはいけないということです。そうした人たちが命を投げ出すにふさわしい人間を育てなくてはいけない――。

 いま自分の半生を振り返ると、ここにも大きなやり残しがあります。半ば手遅れですが、もう一度、心にしまい直そうと思います。
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2022/2/24

「善き行いをして隠す人、それを掘り起こす人」〜幸福な王子と神様の話  教育・学校・教師


 一昨日、「ほら吹き男爵の冒険」について話したあとで、
 他に読み聞かせをしておくべき本はなかったのか考えたら、あった。
「幸福な王子」だ。
 私も王子のようであり、ツバメのようであり、そして神様のようでありたかった。

という話。
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(写真:フォトAC)

【幸福な王子】
「幸福な王子」はオスカー・ワイルドが1888年に出版した子ども向け短編小説集に納められた一編です。

 街の中心にそびえたつ王子の銅像は、人々の不幸をその目で見ながら、無力で何もできずにいることを悲しんでいた。そこに南に向かうツバメが翼を休めるために降りる。
 王子は眼や剣にはめ込まれた宝石を貧しい人々のもとに運ぶことを依頼し、ツバメは快く引き受けるが、貧しい人、苦しむ人々はまだ大勢いた。街中を飛び回ったツバメは両眼をなくして目の見えなくなった王子にさまざまな話を聞かせる。王子はツバメに、全身から金箔を剥がしてその人たちに配るよう依頼する。やがて分け与える宝石も金箔もなくなり、南に向かって旅立つ時期も逸したツバメはその足元で死を迎える。
 人々は惨めな姿になった像を鋳つぶすが鉛の心臓だけは溶けず、死んだツバメとともにゴミだめに捨てられた。
 天国では下界の様子をみていた神様が天使に、
「この街で最も尊いものをふたつ持って来なさい」
と命じ、天使はゴミだめから王子の鉛の心臓とツバメの遺体を持ち帰ってきたのだ。

 この話の肝は隠された善行です。そしてだれも気づかない善き行いを、神様だけは見ていたという話です。


【私のしようとしてきたこと、できなかったこと】
 世の中には善き行いをするたびに、それを隠さなくては気が済まない人たちがいます。誰かのために何かをしたら、その場から後ろ向きにホウキで掃きながら去るのが当たり前と考える人々です。

 学校にもそんな子どもはたくさんいて、いつも言っていることですが、下足箱の靴が常にそろっていたら、それはクラスの中に気のつくたびに直している縁の下の力持ちがいるからに違いありません。当番でもないのに、下校時の少し乱れた机の列を直して帰る子や、なんの躊躇もなく床に落ちているゴミを拾ってゴミ箱に入れる子もいます。
 私は45年も経って初めて開かれた自分の中学校の同窓会で、3年に渡って教室に花が絶えないよう気を配っていた女生徒がいたことを知りました。

 私自身も、誰かを助けたり善きことをしたりした場合は誰にも気づかれないよう配慮します。見られると善行の価値が減るように感じるからです。しかし「幸福な王子」の神様のように、誰かの隠された善行を注意深く見つけ出し、それとなく讃えたり支えたりといった仕事は十分してこなかったように思うのです。
 またひとつ、人生に心残りのあることに気づきました。
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