2021/6/11

「子どもにコンピュータの何たるかを教える」〜”そもそも論””今さら疑問”への対応  教育・学校・教師


 タブレットコンピュータが子どもたちに行き届いて、
 いよいよ教員も研修を深めなければならなくなった。
 しかし世の中にはそもそも論のような疑問もあるのだ。
 子どものそうした“今さら疑問”に、どう答えていくか。

 という話。
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(写真:フォトAC)

【パソコンが行き届いて気になること】
「小中学生に配布のタブレット 当面使用中止に」 (2021.06.10 東海テレビ)というニュースがありました。名古屋市議会で本人の了承なしに操作履歴が記録されるのは「個人情報保護条例に違反」に当たるのではないのかという指摘があり、急遽、使用を中止したというのです。
 確かに、ウチの子のとんでもない成績と母親の年齢は極秘事項、という家庭だってあるかもしれません。しかし操作記録が残らなければ成績が伸びたかどうかも比較できないわけで、おそらくこの先あらためて同意書を書いてもらうということになるのでしょうが、それにしても面倒なことです。

 さて、すべての子どもたちにタブレット端末が行き届いて、中には面倒くさい質問をしてくる子どもも出てこないとも限りません。アプリの使い方ならこれから山ほどの研修がありますからどうにかなりますが(オイ!教師の働き方改革はどうなった!)、「そもそもコンピュータって何なの?」とか「中身はどうなっているの?」とかいった本質的な質問をされると困ります。こちらだってよく知りませんし、大人相手ではありませんから年齢に応じた答え方というものが必要です。


【電子小人の話――小さな子ども向け】
 もし小学校の1・2年生に、
「コンピュータって、なぜこんなにすごいことができるの?」
と訊かれたらどう答えます?

 まさかそんな小さな子に機械の構造とか動き方とかをきちんと教えようとする人はいないですよね。ここは、
「う〜ん、難しいよね。実は私もよく分からないんだよ。だから君が大人になったら、しっかりと勉強して私にも教えてくださいね」
で十分です。
 しかしもう少し捻った回答もあり得ます。

「実はコンピュータの中にはね、電子小人っていう、とっても小さな小人さんたちがたくさんいてね、みんなで一生懸命、キミ押したキーやキミの書いた字とか絵とかを見て、考えたり、相談したりし、それから答えを返してくるんだ。本当に大変なことをみんなでやっているのだから、しっかり応援してあげようね」

 そんなマヤカシが通るのかというと、たぶん通りません。
 しかし子どもは「そんなのウソだぁ」とか言いながらも、けっこう満足して引き下がってくれるはずです。大人がそう言うときはたいてい“今のあなたには分からないからそれなりに答えておくけど・・・”という言葉にはならない前置きがあることを、子どもながら知っているからです。それに、そもそもそんなに真剣な話でもないのです。

 さらに言えば、コンピュータの中を忙しく駆け回るものがあって、一生懸命情報を集め、計算し、それから出力するというのはあながちウソとも言えません。子どもが基礎とすべき印象としてはなかなか悪くないとも言えます。

 実はこれには下敷きがあって、夏目漱石の「吾輩は猫である」の中に『巨人引力』という名で地球の引力を説明する場面が出てくるのです。
*2013/6/11「巨人引力」

 しかし相手が5・6年生でも中学生でもこれでいいのかというと、そういうわけにもいかないでしょう。その年齢にはそれにふさわしい説明があります。私の知る最も簡単な説明を紹介します。


【中坊(中学生坊主)に厨房で説明する】
『コンピュータにできることっていろいろあるけど、突き詰めれば「記憶し」「計算し」「他の装置を制御(コントロール)する」というたった三つの働きしかしていない。しかも装置としては記憶装置と計算装置があるだけだ。その意味ではとても単純な装置で、だから簡単に説明しよう。

 記憶装置にはUSBやSDカードなどいろいろあるけど、普通のパソコンに組み込まれているのはメモリとハードディスクだ。なぜ二種類あるのかというと、メモリは情報の出し入れがものすごく速くて使い勝手がいいのだけど、容量は小さく、何といっても電源を落とすと中身が消えてしまうのが欠点だ。それに対してハードディスクは容量が大きく、電源を落としても中身が消えない、けれどとにかく遅い。電気がバシバシ走っているだけのメモリに対して、中で円盤がブイブイ回っているようではハードディスクには限界があるというものだ。

 計算装置の方はたった一個、聞いたことがあると思うけどCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)というやつがあるだけだ。こいつはムチャクチャ不器用で、決められたことを決められた通りにしかできないくせに、やることがメチャクチャ速いという変わり者。料理に例えれば、切った食材をまな板の端においておけばいいものを、いちいち仮置きテーブルにもどす。レシピも一行一行確認しないと気が済まない。そういう律義さはほとんどアホなのだが、それを矢のような速さでやるからすごい。

 いま、料理を例にしたけど、二つの記憶装置とCPUがやっている仕事は厨房になぞらえられることが多い。ハードディスクが屋外倉庫、メモリが厨房の仮置きテーブル、そしてCPUが料理人というわけだ。その流れで言えばデータが食材、アプリ(プログラム)がレシピということになる。ただし普通の料理と違って、コンピュータではレシピも屋外倉庫に置かれている。だから料理を始めようと思ったら屋外倉庫から食材とレシピを持ってきて、仮置きテーブルに置くところから始めなくてはならないのだ。
 昨日つくったエクセルファイルを開こうとすると時間がかかるのは、食材(昨日までのデータ)とレシピ(エクセルプログラム)を屋外倉庫(ハードディスク)から仮置きテーブル(メモリ)に移しているからなんだよ。

 さて、準備が整ったら調理を始める。新たなデータはキーボードやインターネットから次々と仮置きテーブル(メモリ)に送り込まれてくる(正確に言えば材料の受け取りもCPUの仕事なのだけど、見えない速さでやってるので無視できる)。CPUはそこから食材(データ)を取り出すと、同じメモリ上にあるレシピ(プログラム)をちょっと覗いて適切な処理をし、答えを仮置きテーブル(メモリ)に戻す。例えば5と3を取り出してレシピを覗き、たし算をすると知って計算して答えの5を出す。それをメモリにもどす。またレシピを見ると次の仕事はモニタへの表示なので、再び5を取り出して所定の位置に表示する、といった具合だ。
 次はなんだ?
 キーボードからの入力を待つんか?
 ホイ来た、今度は8だ。メモリに置いとこ。
 で次は? ――ああ、また待ちか。
 おお、6が来た。メモリに入れたぞ、で何するんだっけ?
 え? さっきの8と今の6をまた取り出して、
 今度もたし算をやってメモリの戻すんか、ホイ!

とこんなふうだ。

 そうやって調理が終わると料理のコピーをプリンタやネットに送り、仮置きテーブルの上のものを全部屋外倉庫に戻す(メモリ上のデータをハードディスクに移す)。このことを「上書き保存」という。これでいつでも電源を落とすことができるのだ。
 分ったかい?

 ん? 分からん?
 まあ、しゃあないな。だったら分からないなら分からないまま、この話を覚えておくといい。ある日ストンと、「ああ、これだったんだ」と分かる日が来るから』

 「この話を覚えておくとある日ストンとわかる日が来る」というのは、私が実践してきた中で最も有効な支援のひとつでした。世の中にはそんなふうに、切り上げなくては必ずドツボにはまることもたくさんあるのです。


【この話、意外なところで役に立つ】
 さて、厨房の話は大人にとっても意外な時に役立つ場合があります。
 例えば先日、妻のパソコンが異常に遅くなって作業が進まなくなりました。タスク・マネージャで調べるとハードディスクの使用率が100%のまま、メモリも80%前後です。動かしているつもりのないプログラムが背後でいくつも動いているのです。
 厨房でいえば、同時にいくつもの調理をしているので仮置きテーブルがいっぱいになってしまい、仕方ないので食材を倉庫に戻し、できた料理も倉庫において、必要になるとまた倉庫に取りに行き、ということを繰り返しているのです。これではスピードが落ちるわけです。

 こういう時にすべき第一は不要なプログラムを止めてしまうことです。しかし素人ですのでどれを止めていいのかよくわかりません。今は使わない調理器具のメンテナンスマニュアルなら捨ててもいいのですが、調理器具そのものを捨ててしまうと取り返しがつきません。
 もちろんこういうことも勉強すればいいのですが、老い先短い人間は、この先どれだけ生かせるか分からない学習をするのは面倒なのです。
 そこで必殺技を使います。仮置きテーブル(メモリ)を増やして、食材や料理の置き場を広くすればいいのです。

 私は二階の古いコンピュータから4GBのメモリを外し、妻のパソコンに入れました(これ、簡単です)。すると案の定、速度は一気に上がって問題は解消したのです。4GBのメモリは買っても1万円以下です。

 知恵のある者、知恵を出せ。
 知恵のない者、汗流せ。
 両方ない者、金を出せ
というじゃないですか。

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