2021/4/9

「それでも理解できないブラック校則」〜「わけの分からない校則」にもわけがあるD(最終)  教育・学校・教師


 「すべてのきまりには理由(ワケ)がある」と考える私でも、
 容易に説明できない校則が報道される。
 それは取材不足・説明不足・悪意によってゆがめられた校則だ。
 だからせめて市町村教委の段階に、
 学校教育を説明し、時には外に対して抗議する組織が必要だと思う。

という話。
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(写真:フォトAC)

【学校と世間の立場の違い】

 学校は子どもを学ばせ能力の最大限を引き出す場所で、そのために多くの仕掛けがあります。
 教科書や副教材、実験器具や運動施設、校舎、ソフトウエアとしての授業法やカリキュラム、私が「学校のアカデミズム」と呼ぶ学習の雰囲気、地域と年齢が同じというだけの理由で集まってきた烏合の衆を「学び、成長する」目的集団に変え、団体戦を戦える組織作り。そういったものはすべて学校の本来の目標を達成させるためのものです。

 学校は、その子が将来「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法第25条)を保持したうえで、さらに少しでも豊かな生活が送れるよう技能を高めることを考えて設計されています。
 また、将来、進路選択や職業選択の場で可能な限り自由な選択ができるよう、知的・体力的・人間関係的能力を高めようと心血を注ぎます。というのは、例えば高校選択で最も多くの選択肢を持っているのは最も成績の良い子だからです。学区のどの高校へ進んでもいいのですから。職業選択も同じ。社会が求める能力が高ければ高いほど、自由な選択ができます。
 そんな将来の自由のためなら、中高生である今の、目先の自由など多少犠牲にしたってかまわないと本気では思っているのです。そこがマスメディアや人権派教育評論家と決定的な違いです。
 彼らにとって大切なのは目先の子どもの自由です。あとのことは学校が何とかしてくれるし、ダメならそれも自己責任です。


【それにしてもわけの分からない校則は多すぎはしないか】
 校則が過剰に児童生徒を制限したがる理由については昨年、記事にしたばかりなのでそちらを参考にしてください。
2020/7/20「教員が、ものさしを持ち出して髪の長さを調べる日が来る」〜東京都議会ツーブロック問題@ 
2020/7/21「校則は、くだらなければくだらないほどいい」〜東京都議会ツーブロック問題A

 しかしそれらすべてを受け入れていただいても、なお残る「本当にわけの分からないブラック校則」の数々――。ネットをちょっと検索するだけで続々出て来ます。
『体育でのブラジャーの着用禁止』(女子スパ!)、
『タイツの着用禁止』(女子スパ!)
『肌着の着用禁止』(ハウスポスト)
『中学生なのに体育前の着替えは男女同じ教室で行います』(ハウスポスト)
『セーラー服をまくったり、ブラウスのボタンの間からのぞいたりする肌着検査』(沖縄タイムス)
『生理で水泳を休む時は女性の教員が一人ずつ保健室に呼び、ナプキンをしているか下着を触って確認した』(沖縄タイムス)
『廊下に1列に並ばされて、シャツの胸を開けて下着をチェックされる』(FNNプライムオンライン)
『男女一緒の体育館で下着の色をチェックされる』(FNNプライムオンライン)

 こうしてみると学校はほとんど狂気の場です。とてもではありませんが子どもを安心して預けられる場所ではありません。これはいったいどうなっているのでしょう?
 問い詰められると私にも答えられませんが、どうやらメディアは情報集めるだけで、直接、当該の学校に行って調べたりしないようなのです。取材するにしても知り合いの校長や教育委員会に電話をかけて聞く程度のことで、だからブラック校則はいつまでたっても『わけが分からないまま』なのではないかと、そんなふうに私は思うのです。


【取材不足・説明不足・悪意が増加させるブラック校則】
@ 取材不足
『体育でのブラジャーの着用禁止』だの『タイツの着用禁止』だの、これだけの情報では私にだってわかりません。前後に落とされた情報があるとしか思えません。極端な話、前に「水泳の授業では」とつけただけで『体育でのブラジャーの着用禁止』は理解可能になります。
「そんなヤツがいるのか?」「そんなヤツがたくさんいたからきまりになったんだろうな」「それにしても明文化するほどのことでもないだろう」などと議論になるにしても、「わけの分からない」と言った状況からは解放されます。
 ありえないとことのほとんどは実際に「有り得ない」のいです。きちんと調べれば理由が浮かんできます。

『中学生なのに体育前の着替えは男女同じ教室で行います』
『生理で水泳を休む時は女性の教員が一人ずつ保健室に呼び、ナプキンをしているか下着を触って確認した』

 これにはきちんとした理由があるはずです。私には心当たりがあります。しかしハウスポストや沖縄タイムスはきちんと調べて報道する気はなかったのでしょう(*具体的説明は欄外に置きます)。

A 説明不足
 ブラック校則の多くは、学校がきちんと説明すれば納得の得られるものばかりです。しかし学校も教育委員会もきちんとした説明ができていません。
 それには理由があって、校則の多くが経験から生み出されて長く続いてきたもので、制定当時は分かっていたもののいつの間にか不明となり、そのまま今日まで続いている例が少なくないからです。
 小学校の低学年の体育の時間の肌着禁止などはその典型で、きちんと調べれば説明できるはずなのに、学校にも教委に余裕がありません。ですからすぐには説明できないのですが、説明が難しいからといって安易に変えられるものではありません。そこに何が隠されているか分からないからです。

 私は初めて小学校の担任になったとき、5年生にもなって理科室に行くのに教室から並んでいくのがバカらしくて(私自身も理科室で準備する必要があった)、中学校と同じように直接行くように指導して大変な目にあったことがあります。迷子にこそなりませんが、休み時間の遊びに夢中になって遅れたり、教室に忘れ物をしたりといった児童が続出して、授業にならなかったのです。
 結局、1カ月ほどして方針を変えたのですが、4年生までできたことが再びできるようになるまでにまた1か月ほどもかかってしまいました。校則や学校ルールは、動かすときには相当な研究と覚悟がいるのです。

 こうした経験から、私も校則の見直しは必要だと思うようになっています。廃止するという意味での見直しではなく、説明できるようにするという意味での見直しです。
 自信があります。「すべての決まりには理由(わけ)がある」からです。


B 悪意によって増えるブラック校則
 悪意に満ちた偽情報も多くあります。
『セーラー服をまくったり、ブラウスのボタンの間からのぞいたりする肌着検査』(沖縄タイムス)
『廊下に1列に並ばされて、シャツの胸を開けて下着をチェックされる』(FNNプライムオンライン)
『男女一緒の体育館で下着の色をチェックされる』(FNNプライムオンライン)
 話半分としても重大な人権侵害、もしくは犯罪でしょう。特に下の二つはFNNの独自取材ではなく、福岡弁護士会が調査したもので、弁護士会は記者会見を開いただけで刑事告発もしなかったという悪質なものです。

 なぜ偽情報だと思うのかというと――、状況を思い浮かべてみてください。
廊下に1列に並ばされて、シャツの胸を開けて下着をチェック
ですよ。
男女一緒の体育館で下着の色をチェック
ですよ。
 わざわざ人目につくところで行う以上、そこには他の教師もいるわけです。その全員が変態だという可能性を飲んだとしても、女性教員は何をしていたのでしょう。ただ指をくわえて見ていたのですか? まさか一緒に楽しんでいたというわけでもないでしょう。
 中でも児童生徒の心と体に責任を持ち、日ごろから相談を受けることの多い養護教諭の罪は軽くありません。もし黙って見ていたとしたら、その罪は実際に検査した教員よりも重いと言ってもいいくらいでしょう。
 しかしそんなことはあり得ません。この情報は真っ赤な偽物か、もしくはごく少数の生徒の心象風景です。
 このニュースは、本来なら教育界が総力を挙げて批難すべき偽情報です。


【学校を説明し誤解を解き、場合によっては抗議する組織が必要だ】
 教員は忙しすぎてニュースも見ません。見て怒っても、抗議をする時間さえもありません。だからただ「なぶり者」にされているだけです。しかしこんなことが続けばブラック校則は教職をさらにブラック化し、深刻な教員不足を招きかねません。
 きちんとした企業には必ず「広報」があるように、せめて市町村教委レベルに広報係を置いて、学校の正しい情報を伝えていかなくてはならない、もはやその時期だと私は思います。

(この稿、修了)

《文中で説明しきれなかったこと》
『中学生なのに体育前の着替えは男女同じ教室で行います』
『生理で水泳を休む時は女性の教員が一人ずつ保健室に呼び、ナプキンをしているか下着を触って確認した』

 更衣室が一つか二つしかない普通の学校では、全校体育だの清掃だので着替えるときに、すべての生徒を更衣室に向かわせることができないのです。そこで男女一緒にということになり、それが体育の授業でも行われるようになるのですが、男女一緒というのは正しい情報ではないでしょう。
 運動着への着替えでは、女子のほとんどはスカートの中でズボンに履き替え、上半身は頭からかぶってブラウスの袖を抜くという実に見事なやり方で着替えますが、男子はまるでダメだめです。ズボンからズボンですから必ずパンツ姿になってしまう。そこで男子は教室内、女子は廊下としたり、男女時間を区切って交互に教室で着替えたりといったことになります。いずれにしろ男子を女子の目から守るような工夫がなされるのが普通です。女子だって見たくはないでしょうから。
 本質的な解決方法がないわけではありません。各教室に男女別の更衣室をつくればいいだけのことです。現在の教室を二つに分けるわけにも行きませんから、やはりすべての学校の改築が前提となりますが(他に解決策があるなら教えてください)。

 生理の確認については厄介です。
 女子の中には水着姿になるのが嫌で、連続3週間、9授業時間にわたって「生理のため」や「風邪」によって授業を休む子がいます(必ずいます、それもかなりいます)。特に男性が教科担任だとそうした申し出に抵抗できません。そこで養護教諭にお願いするわけです。養護教諭にしても言葉だけで許可を出すわけにはいきませんから確認ということになります。
 「地毛証明」もそうですが、少数の逸脱者のためにみんなが我慢するのは世の常です。みんながマスクなしで大声でしゃべるようなことをしなければ、緊急事態宣言も「マンボウ」もなかったのです。


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