2020/11/13

「瞬間湯沸かし器と電子レンジの生活革命」〜モノによってもたらされる幸せ@  生活


 娘からドラム式の洗濯機を買ったら生活が天国のようになった、
 と連絡があった。
 モノによってもたらされる幸福というのが確かにある。
 私の場合、それは「瞬間湯沸かし器」と「電子レンジ」だった。

という話。
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(写真:フォトAC)

【シーナ、舞い上がる】
 娘のシーナの家について前々から気になっていたのですが、年がら年じゅう洗濯物と格闘していて休むいとまがない。
 何しろ小さいとはいえ汚し盛りの男の子が二人いて、特に下の一歳児は給食やおやつの時間に自分が食べるのと同じくらいの食物をシャツやズボンに浸みこませ、帰りには自分の体重と同じくらいの汚れものを抱えてくるのです。基本的な量が違う。

 自宅は東京の小住宅らしく小さなベランダが東側にしかなく、しかも南に隣家が覆いかぶさっているために洗濯物が陽に当たる時間はほんの数時間、おまけにアレルギーの家系で外に干せない日も多々。部屋の中はいつでも大型のクリスマス・オーナメントのごとき洗濯物に溢れてあちこちにつるされています。全自動洗濯機を持っているのでそれで乾かせばいいものを、量が多すぎて縦型の全自動ではうまく乾せないようなのです。

 そこで今回、ずいぶん昔からほったらかしにしていた貯金のひとつが満期になったのを機に、娘のためにパワーの大きなガス乾燥機を買ってやろうと思ったのです。退職してから気付いたのですが老人というのは本当に金のかからない存在で、私が使わない分を娘に使ってもらおうと思ったのです。

 シーナはもちろん喜んでくれました(こういうことではまったく遠慮することのない娘です)。しかしいざ調べてみるとガス乾燥機はパワーのある分、毎日のフィルター掃除は欠かせず、高い位置なので小柄なシーナには大変だとか、現在手持ちの洗濯機の蓋がまっすぐに立ち上がるタイプで乾燥機に引っかかってしまうとか――後から考えると計略のひとつなのかもしれませんが、結局、ガス乾燥機を諦めて代わりに洗濯機をドラム式に買い替えることにしました。乾燥機としての機能は縦型の比ではないそうです。しかし値段の方もガス乾燥機や縦型全自動洗濯機の比ではありません。

 私の目算だとガス乾燥機は配管排気工事を含めて12〜13万円程度ですが、ドラム式洗濯機だとその倍でもすみません。
 一瞬、気持ちが萎えたのですが、生来の見栄っ張りで“高いのは勘弁してくれ”とは言えず、そのまま買うことになってしまいました。
 けれどそれは案外悪いことではなかったのかもしれません。シーナの感激が半端ではなかったからです。

 とにかく何もかも投げ込んでスイッチを入れれば数時間後にはふっかふかの洗濯物が仕上がってくる。
 濡れた衣類を洗濯機から出す必要がない、ひとつひとつをハンガーやピンチハンガーに掛ける必要がない、屋外や室内の竿に引っ掛ける必要もない、屋内に戻す必要がない、ハンガーから外す必要がない、洗濯ものを畳む必要がない――ということはないけれど、もう天国だと、電話の向こうではしゃぎっ放しです。こんなことならもっと早く買ってあげればよかった。
 シーナの縦型洗濯機は私の家に送られてきて、ちょうど買い替えの時期だったので多少は資金を回収したようなものです。


【瞬間湯沸し器と電子レンジの生活革命】
 シーナは革命的に生活が変わったと言っていましたが、そこでふと、私自身の生活が革命的に変わったのはいつのことだったかと考えたら、40年近く遡らなくてはならないことが分かりました。
 もちろんその間に自家用車を買ったとか家を買ったとか、あるいはコンピュータを何台も買い替えたとかインターネットにつなげたとか、さらには携帯電話を購入したとかスマホに替えたとかいろいろありましたが、たいていは便利と同時に苦労も背負い込んだ感じで、浮き立つような嬉しさというものはなかったように思うのです。

 例えばインターネットのおかげでさまざまなことが簡単に調べられるようになりましたが、同時にいつまでたっても諦めがつかず際限なく調べ続けなくてはならなくなりました。書籍だけが頼りの時代は、市立図書館まで行って調べても分からないことはたいていそれ以上調べても分からないことでした。

 では私の生活に革命的な変化をもたらした道具は何だったかというと、それは「瞬間湯沸かし器」と「電子レンジ」だけです。

 「瞬間湯沸かし器」の方は今はほんとうに見かけなくなりましたが、いくつかのお宅では構造的には同じものが屋外についているはずです。簡単に言うと点火するとガスの力で瞬間的にお湯が出てくる装置です。本当に一瞬でお湯が出て来ます。

 それの何が画期的かというと、瞬間湯沸かし器のおかげでいつでもお湯で食器洗いができるようになったのです。それまでは水で我慢するか、やかんのお湯を右手でゆっくりかけながら左手一本で皿の表面をこするくらいのことしかできませんでした。――ということは、私のようなものぐさは皿を洗わない、ひいては自炊をしないということなのです。それが多少、自炊ができるようになったのです。
 瞬間湯沸かし器でいつでもお湯が出てくる暮らしは、本当に豊かな感じがしました。冬に顔を洗うのも嫌ではなくなったのです。

 電子レンジの便利さは今も大半の人が享受していますから改めて言うまでもありません。しかし初めてこの機器に出会ったときにどういう使い方が一番ありがたかったかというと――案外、理解されていないと思いますが――冷たいご飯がいつでも温められるということでした。
 もちろん当時も炊飯器に保温機能はついていましたが、一人暮らしはいったん炊くと2日くらい残ってしまうのでもたなかったのです。それが電子レンジだと一瞬にして温まる。買ってきた惣菜も作り置きした味噌汁も、すぐに食べられる――。

 電子レンジと瞬間湯沸かし器のおかげでようやく自炊ができるようになり、エンゲル係数のぐんと下がった私は、次第に貯金さえできるようになったのです。
 それはものすごく幸せなことで、以後、モノによってそれほどの幸せを味わうということは、たえてありませんでした。
 しかし実は、さらに遡ればもっと幸せな時代もあるにはあったのです。

(この稿、来週に続く)

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