2020/11/10

「理念の封印、怪物の出現」〜アメリカ大統領選挙とパンドラの箱A  政治・社会・文化


 私が子どもだったころ、すべての起源はアメリカにあった。
 政治・経済・文化のあらゆる面で、アメリカは私たちの目指す目標、憧れの対象だった。
 それはアメリカが真に偉大だったからだ。
 怪物トランプの出てくるまでは。

という話。
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(写真:フォトAC)



【アメリカ・アメリカ】

 今の若者にとってアメリカ合衆国がどういう意味を持つ国なのか分かりませんが、私たちの世代にとってはすべてが存在する夢の国でした。文化と水は一緒で高いところから低いところへ降りてくるものですから、あらゆるものがアメリカから流れ下ってきたのです。

 テレビの黎明期、小さな受像機から流れてくるドラマやバラエティの半分近くはアメリカの吹き替え版で、「ザ・ルーシー・ショー」だとか「サーフサイド6」「奥さまは魔女」「かわいい魔女ジニー」「ミステリーゾーン」、そういったさまざまな番組から私たちはアメリカを学んできたのです。

 オープンスペースのキッチン、巨大な冷蔵庫、トースター、オーブン、電機掃除機、それらのほとんどは私たちには未知のもので、当分は手の届きそうにないものでした。
 中でも驚いたのはティッシュ・ペーパーで、女主人公が泣く場面では信じられない勢いでバンバンと引き抜かれゴミになっていいます。一般家庭で行われるバカげたほどのムダ遣いに圧倒される思いでした。

 映画も音楽もアメリカがなくては始まりませんでした。
「007シリーズ」を始め「時計仕掛けのオレンジ」「アメリカン・グラフィティ」「イージー・ライダー」「燃えよドラゴン」「ジョーズ」「ゴッド・ファーザー」「タクシー・ドライバー」「未知との遭遇」「エイリアン」「ロッキー」「ポセイドン・アドベンチャー」「スター・ウォーズ」「サタデー・ナイト・フィーバー」「地獄の黙示録」「ランボー」――。
これらの映画を観ずに終わっていたら、私の青春はとても貧しかったに違いありません。

 音楽では、エルビス・プレスリー、バーバラ・ストライサンド、ビリー・ジョエル、マイケル・ジャクソン、エリック・クラプトン、シカゴ――。
 もっともそのころの私はむしろビートルズやエルトン・ジョン、クィーン、ピンク・フロイドといったいわゆるブリティッシュ・ロックに魅かれていて、アメリカン・ポップスで耽溺したのはサイモン&ガーファンクルとイーグルスくらいのものですが、ブリティシュロックも含めて、それらはすべてアメリカ経由で日本にやってきたのです。

 花柄のシャツ、ベルボトムのジーンズ、厚底の靴、サングラス――。それらもすべてアメリカあってのものでした。

 しかし若いころの私が知らなかったもうひとつの側面がアメリカにはあるのです。それは「イージー・ライダー」や「ゴッド・ファーザー」「タクシー・ドライバー」「ランボー」といった映画の中にいくらでも発見できるものだったのに、見ないふりをしてきたものです。


【Another side of America】
 アメリカは多民族国家である上に現在でも毎年100万人以上の合法移民と70万人〜150万人もの不法移民が流入してくる国です。
 民族も違い生活のレベルも違い、異なる価値観をもち、この国で異なる夢を実現しようとする人々が、3億3000万人もいて目をギラギラさせているのです。
 その一人ひとりのエネルギーがアメリカ全体の活力なのですが、力の行く先を間違えたり抑圧されると、とんでもないことになります。

 合衆国で1年間に摘発される子どもの虐待事件は67万件に及ぶとされています(日本は相談数で7万件ほど)。家出をふくむ18歳未満の行方不明事件は年間約80万件(日本は3万件)。そのうちの7万件は誘拐です。

 アメリカ一生の間に一度はDV被害を経験する女性が4人に1人、年間約100万人から300万人がDVによる傷害を受け,毎日3人以上が夫によって殺されていいます。

 全土に3億丁以上の銃があり、銃に関連した事件や事故・自殺で毎日100人以上、年間では3万〜4万人が命を落とします。その3億丁は減るどころか今回の選挙期間中にさらに増えてしまいました。

 合衆国は死刑を廃止したり知事が執行しないことを公約にしたりしている州がいくつもあります。しかし死刑が少ない代わりに、裁判も行われず警官に殺される市民が年間1000人以上もいます(2019年度)。
 警察官の横暴というだけの話でもないでしょう。容疑者が銃を持っているかもしれないと思ったら警察官も怖いのです。

 昔の日本には「東京砂漠」という歌がありましたが、これではまるで「アメリカン・サファリ」「ニューヨーク・ジャングル」です。


【理念の封印、怪物の出現】
 合衆国はこの状況を、しかし理念の封印で制御してきました。そこがアメリカの凄いところです。
「自由」「平等」「人権」「民主主義」「自由主義」「開かれたアメリカ」「多様性の中の統一」
 ありとあらゆる理念・概念が動員され、常に更新し続けてこの厄介なエネルギーをコントロールしようとしてきたのです。

 自由と民主主義の騎手、平和の守護者としての地位は、これによって保障されていたのです。まさに「偉大なアメリカ」の根幹がそこにあったのです。
怪物トランプの出てくるまでは・・・。

(この稿、続く)

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