2020/9/11

「防疫成功国、中国と韓国の場合」〜新型コロナのデータに見る世界の今B  政治・社会・文化


 新型コロナウイルス防疫に一応成功したと言える国や地域は、
 中国や韓国など、ごくわずかだ。
 しかし成功者であり続けることは、
 それなりに苦しい。

という話。
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(「春節の飾り」フォトACより)

【中国の場合】
 中国については昨日も少し書きましたが、グラフをつくっても少しもおもしろくありません。感染者については2月7日に14840人というとんでもない数を報告し、死亡者については4月12日に1290人という今日までの死亡者の六分の一にもあたる数を出してきて、グラフを一気に見えないものにしてしまったからです。

 私が数字をいただいている日経新聞のサイトには、
「感染者数や死者数は各国の発表やWHO、米ジョンズ・ホプキンス大のデータを基に日本時間の昼ごろに更新している」
とありますから、中国は今日まできちんとした訂正資料を出していないわけです。それを出させることのできないWHOも「何なのかな〜」という感じですが、もしかしたらデータ全部がすでに破棄されているのかもしれません。
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 ちなみに死亡者1290人が出されたあとは4月26日にひとり、5月16日にひとりが報告されただけで、4カ月間、新たな死亡者はゼロということになっています。
 感染者の方はこのチラホラ報告されていますが、すべて外国からの渡航者だと説明しているようです。

 中国政府は新型コロナを完全に抑え込んだと自信満々ですが、普通、この国から出てくる数字はどんな場合にも眉に唾をつけて見なくてはいけないとされています。だから完全制圧も疑わしいと言えば疑わしいのですが、こと都市に関してはうまくいっているのかもしれません。いかに情報統制の徹底している国とは言え、発熱患者が次々と病院に押し寄せる状況で噂にもネット情報にもならないということはないでしょう。
 しかしあれほど広大で巨大な人口を擁する中国で、都市における新型コロナ感染が制圧されているとしたら、それはそれで恐ろしいことです。

 数万人規模の野外コンサートから指名手配犯をいくらでも拾えるという優秀な顔認証システムや、全国に張り巡らされた防犯カメラ網、「健康コード」と呼ばれるスマホアプリやキャッシュレス決済の記録等をすべて政府が統合し、感染者があればその行動履歴を果てしなく後追いして濃厚接触者を炙り出せる、そんな仕組みがきちんと働いているということです。

 もしかしたら中国は、映画「バイオハザード」のような事態が起こっても、自国民を完全に守れる唯一の国なのかもしれません。
 新型コロナウイルスの国内感染者および死亡者がずっとゼロのまま続く国――羨ましくはありませんが、恐れながら注意深く見て行きましょう。


【韓国の場合】
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 韓国は今、新型コロナウイルスの第三波を凌ごうとしているところです。
 「K防疫の崩壊」などという人もいますが、この程度で抑えられているのはやはりすごいと言うしかない。死亡者のグラフが「歯の欠けた櫛」みたいになっているのも数が少なく、しばしば間が空くからです。縦軸も最大値がわずか「10」という大したものです(日本は最大値40)。

 第一波は2月の中旬、大邱の宗教団体から始まりました。それを大量のPCR検査と人員配置によって封じ込め、一カ月後の3月中旬に大統領が勝利宣言したら再び燻って4月中旬まで続いてしまった――これが第一回「早すぎた勝利宣言」です。
 第二波は、5月10日の文大統領就任3周年記念の演説の中で、「K防疫は世界標準になった」と勝利宣言をした直後に始まりました。グラフでは低い丘のようになっている部分です。
 その第二波が落ち着きを見せた7月20日に、大統領がフェイスブックに「勝利は間近」と書いて第三波が始まりました(一般にはこちらの方が第二波とされています)。三回目も第一波同様、反政府系の宗教団体の集会から始まり、8月15日の反政権デモでさらに拡散したとされています。ただしこれも間もなく終息に向かうでしょう。


【韓国で大量に実施できるPCRが日本ではできない理由】
 K防疫の核心は、一般に圧倒的な数のPCR検査だとされています。一か所でクラスターが発生すれば周囲に網羅的に検査を実施して根絶やしにする――そこから日本でも検査の数を増やせという声がいつまでたってもなくなりません。

 しかしそれを言うなら日本の検査能力は今や1日62316件にもなっているのです(厚労省「国内の発生状況など」)。
 それなのに実際に行われた件数は飛び抜けて多かった8月14日で55240件、2番目が8月5日の39723件。普段は週日で2万件程度、民間の検査機関が休みの土日も合わせると平均で検査能力の2割程度しか実施していないのです。
 なぜか?

 世田谷区長がおっしゃるように「(区民なら)誰でも いつでも 何度でも」公費で受けられるとなれば、全国で1日6万2千件はすぐに消化できるでしょう。しかし世田谷区民94万人の1%(9400人)が毎週受けるようになるだけで、1回4万円と言われる検査料は週3億7600万円にもなってしまいます。予算潤沢な世田谷区ならできるかもしれませんが普通の市町村に耐えられるものではありません。

 絨毯爆撃のように全国民のPCR検査を「誰でも いつでも 何度でも」できる国などありません。そこでどうしても選択的にならざるをえないのですが、日本の場合は濃厚接触者や歌舞伎町のホストクラブのようなハイリスクな人たちの検査を終えてしまうと、次にだれを検査したらいいのか分からないのです。だから実際の検査数は増えていかない。


【K防疫のすごさと危うさ】
 K防疫のすごさはそこにあります。
 韓国では感染経路をたどる際、個人の携帯電話の位置情報、防犯カメラの映像、クラスターが起きた現場付近のクレジットカードの決済記録などを当局が把握し、警察官を多数動員して追跡し検査を受けさせます。PCR検査という大切な資源を実に有効に使用しているのです。これこそがK防疫の核心で、日本の真似できない部分です。中国のやり方に近いとも言えます。
 しかしだったらなぜ、韓国は中国のように新型コロナを完全制圧できなかったのでしょう?

 私の言う第二波の伝搬者たちはいわゆる性的マイノリティ(LGBT)でした。彼らは仲間の集まる場所に行くのにスマホの電源を切り、店の入り口では名簿に偽名を記しました。さらにキャッシュカードから足がつかないように現金で決済したのです。
 8月15日の反政権デモでも、参加者の多くがスマホの電源を切って光化門に向かいました。
 そのため政府は反政府系宗教団体や右派政治団体をコロナ拡散者として厳しく糾弾し、LGBTの人々は一部市民によってさらに差別されるようになったのです。

 個人情報を政府に握られることの危険は繰り返し言われてきたことです。しかしその“危険のイメージ”はなかなかつかみにくいものでした。韓国の現状はそれを驚くほど速く、驚くほどはっきりと示すものです。

 世の中には政府に捕捉されることを本気に恐れる人がたくさんいるのです。彼らはどうしてもK防疫の網から逃れなければならなりません。そのためにはスマホの電源を切り、キャッシュレス決済をやめ、防犯カメラの目から逃れざるをえません。まるで戦前の日本の非合法共産党員みたいなものです。
 彼らはやがて差別され、孤立し、沈潜しなくてはなりません。反政権だから、右派だから、LGBTだからではなく、K防疫という優れたシステムに従わないからです。そして孤立した人々が感染すると、感染者は防疫網の埒外になってしまいます。

 それが今、韓国で起ころうとしていることです。

(この稿、続く)

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