2020/3/28

「『日本の検査能力=1日300件』はどういう意味だったのか」〜今さら聞けない新型コロナD  政治・社会


 どこの国だって国民全員のPCR検査なんかできっこない。
 感染者の濃厚接触者、高リスク群から順にやっていくしかないのだ。
 日本の場合はこれまで検査対象者が少なすぎた。
 だから検査数も感染者数も少なかったのだが、これからは急激に増えていく。
 検査能力はそれに合わせて増えていくに違いない、それだけ。

というお話。
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(「電子顕微鏡で見た2019新型コロナウイルス」パブリックドメインQより)

【怪しいところから検査するという常道】
 昨日は全国に感染者が100人程度しかいない状況でPCR検査を求めるのは、真夏にインフルエンザの検査を求めるようなものだというお話をしました。

 しかし真夏のインフルエンザ検査を渋る医師の判断を、簡単に変える方法はあります。ひとことこう言えばいいのです。
「実は一昨日オーストラリアから帰ってきたばかりで、向こうではインフルがものすごく流行しているんです」
 あるいは、
「先生のところにはまだ届いていないかもしれませんが、ニュージーランド帰りの兄貴が昨日インフルエンザの判定を受けて、タミフルが処方されています」
 このどちらかで、医師は必ず検査をしてくれます。インフルエンザには特効薬がありますから、医師としても検査を拒否して重症化されても困るのです。

 新型コロナに関して日本は長く「PCR検査は、37.5℃以上の発熱または呼吸器症状のある人で、新型コロナウイルス感染が確定した人や流行地域に渡航または居住していた人と濃厚接触のある人など」を対象としてやってきました。
 それは当たり前すぎるほど当たり前で、可能性の高いところから行うのは、検疫の基本中の基本です。

 燃え上がる現場を手薄にして、火のないところに消火剤を撒いてはいけません。



【韓国:ドライブスルー方式の実際】
 韓国でドライブスルー方式の検査を始めたと聞いた時、私は大きな勘違いをしていました。
 マクドナルドと同じように検疫所に希望者が列をなし、一台一台検査を行っていくようなものを想像したのです。
 しかし考えてみたら韓国とて5164万人もの人口があるのです。国民の1%でも恐怖に駆られて検疫所に押し寄せたら、それだけで51万6千人。全国に1千個所の検疫所をつくっても各500台の大渋滞ができてしまいます。何らかの規制がなければあっという間にパンクしてしまう。どうなっているのでしょう?

 そこで調べてみるといくつかの記事が見つかりました。
@ 現在、韓国では「ドライブスルー検査」を実施している選別診療所が約70カ所2020.03.23ニッセイ基礎研究所
A 検査は、事前のアンケートで症状や感染地域への訪問歴、感染集団との接触歴などから高リスクと判断された人を対象に行われる。2020.03.03 CNN
B 医師の紹介がある場合または結果が陽性だった場合、検査は無料2020.03.18 AFP )

 つまり全国約70か所のドライブスルー型検疫所には、誰でも行けるが事前アンケートで高リスクと判断されないと検査自体は受けることができない。さらに医師の紹介のある場合は別として、結果が“陰性”だったら料金を払わなくてはならない――そういうことなのです。
 費用は昨日もお話ししたように16万ウォン(約1万4470円)。「自分は新型コロナ蔓延国の人と付き合いがあって、ちょっと心配だから受けてみよう」というわけにはいかない金額です。ちゃんと歯止めがかかっている。
 検査能力に自信のある韓国でも、無暗に検査を増やしているわけではないのです。


【結局、検査の必要数が少なかったとしか言いようがない】
 そこで私の頭に浮かんだ第5の「今さら聞けない新型コロナ」が、
「日本でPCR検査の実施数が少ないのは、そもそも検査をする必要がなかったからではないか」
というものです。
 
 ほぼ同時期に最初の感染者を出した韓国と日本のその後の違いは、初めて遭遇した集団感染の規模の大きさです。
 韓国では2月26日までに新興宗教「新天地」の集団感染を中心として、1000名を越える感染者を出してしまいました。そこで政府は20万人に及ぶ信者全員のウイルス検査を決定し、わずか2週間足らずで全数検査を終えたのです。ターゲットがはっきりしていたとはいえ、驚くべき検査数です。

 一方日本が最初に出会った集団感染は屋形船のわずか12名。濃厚接触者を含めても「新天地」とは「天地」ほどの差があります。その後も小さなクラスターがあちこちに生まれますが、巨大なクラスターには、ついに出会わないまま今日に至っています。つまり検査の必要数も少なかった。

 そうした事情は計算からも導き出されます。

 昨日(27日)発表の新型コロナによる日本国内の死亡者は47名でした。先日もお話しした通り新型コロナの死亡率ははっきりわからないのですが、WHOの公式発表3.5%で計算すると、推定感染者は1342人ということになります(47÷0.035)。ところが実際に捕捉されている累計感染者は1402人、ほぼ全員を補足していることになります(*)。

 もちろん計算上の話ですが、おそらくそれが日本の現状です。
 そんな状態ですから、1日の検査能力を7000件以上に伸ばしても、実際に行われるのは2割程度(2020.03.18 NHK)しかありません。

 「帰国者・接触者相談センター」で対象を絞っているという事情もありますが、対象を絞るのは韓国のドライブスルー検疫も同じです。必要のない人には検査をしないのです。


【「日本の検査能力=1日300件」はどういう意味だったのだろう】
 フランスは来週までに検査能力を1日3万件に増やすそうです。2月中旬までは1日400件といっていた国です。
 中国は武漢だけでも1日2万件、韓国は1万2000件、イタリアでも1万件の検査能力がありました。それなのになぜ日本は1日300件だったのでしょう? そして今、なぜ7000件なのでしょう? なぜヨーロッパ並みに増やせないのでしょう?
 それが私の、最後の「今さら聞けない新型コロナ」でした。

 もっとも、そうは言っても7000件の能力に対して検査依頼は2割程度しかないのですから、能力を2万、3万と増やしても、本来の患者をほったらかして遊んでいる検査技師や医師が増えるだけです、。

――と、そこまで考えてようやく分かりました。私はなんと愚かだったのでしょう。
 可能な検査数というのは検査キットの数ではなく、検査に充てる医師や技師の数だったのです。配置転換で人数を増やせば、1万2万は軽く増やせるものなのでしょう。
(ただし、非専門の医師や技師まで動員するので精度は落ちる)

 なぜそんな簡単なことに気づかなかったのか――。
 検査能力において日本が特段劣っていたわけではないと気づいて、私はなんだか急にうれしくなってしまいました。
(この稿、終了)

(付記)
 阪神の藤波投手がコーヒーの香りがしないことに違和感を持ってPCR検査を受け、「陽性」と判定されました。有名人の感染は影響力が大きいものです。
 今後、味覚・臭覚の違和感から感染を疑い、関係機関に相談する若者が増えてくるかもしれません。相談センターの医師も積極的に検査依頼を出すことでしょう。
 用意した1日7000件の検査能力が、ようやく生かせることになります。必ずしもいいことではありませんが。


*に関する追記(2020.03.30)
 この計算が正しいかどうか、あやふやになってきました。というのは感染者の数は現在の数字、死亡者の数は約2週間前までに感染した人の数だからです。
 ただしWHOの3.5%という数字も現在進行形の数字なので、やはり上の計算で合っているのかもしれません。
 ちなみに2003年、SARSが拡大中の時、WHOは致死率は4%だと発表していたましたが、最終的な致死率は9.6%となったそうです。
 致死率が上がり続ける仕組みについては、
2020/3/24「新型コロナの死亡率って、ホントはどうなのよ」〜今さら聞けない新型コロナ@
の中国に関する部分にあります。







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