2020/3/2

「新型コロナ報道:マスメディアの実力が問われる秋」  メディア評論


休校は感染拡大防止に役立たないのか、
十分な時間を確保して「3月第2週からの休校を要請する」とでも言えばよかったのか、
PCR検査を片っぱし受けさせて、陽性患者をどこに置こうというのか。
危急存亡の秋、政府の判断力と同時にマスメディアのジャーナリストとしての見識も問われる。
という話。
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(「マイク 集中砲火 記者会見」フォトACより)

【休校は感染拡大防止に効果がないのか】
「学校を休校にすれば地域に感染が広がらないという科学的根拠はない」
 先週の金曜日、あるテレビ番組で語られた医師の言葉に、3日たってもこだわっています。こんな発言がすんなりと流されたままでいいと思わないからです。

「学校を休校にすれば地域に感染が広がらないという科学的根拠」はもちろんありません。学級閉鎖・学年閉鎖は数多くあっても感染症による休校というのは極めて稀ですし、科学実験をすることもできないからです。
 どうしてもデータが欲しいということであれば、インフルエンザの流行期に日本中の学校を「学級閉鎖も学年閉鎖も許さない」実験群と、「従来の規定に従って適宜、学級閉鎖や学年閉鎖を行う」対照群とに分け、地域の感染状況の差を見るしかありません。でもそんな非人間的な実験はできないでしょう。
「学校を休校にすれば地域に感染症が広がらないという科学的根拠がない」のはそのためです。学校は早め早めに対策を打ってしまう。

 しかし私たちは狭い空間で長時間、罹患者と一緒に過ごせば感染しやすいということを知っていますし、そこには科学的根拠もあります。だから学級閉鎖や学年閉鎖は学校全体に感染症を広げないことに有効であると思っていますし、何百人もの子どもが感染を免れることができれば、家庭、ひいては地域にも広げずに済むと信じているのです。

 それでもこうしたことは科学的に証明されたものではないから無意味なのでしょうか? 学級閉鎖や学年閉鎖、さらには休校といった処置は、学力保障や家庭の負担を考えるとやはり避けるべきことなのでしょうか?
 そんなことないですよね。


【PCR検査拡大はどれほど良作か?】
 マスメディが私たちをどこに連れて行こうしているのか、非常に疑問に思っていることのもうひとつは、PCR検査をもっと受けさせろという話です。

 先週テレビで繰り返し流れた映像のひとつは、一般の診療所で風邪症状を訴える年配の男性の求めに応じて、医師が保健所に電話をかけたところまったく通じず、あとで連絡がついたもののやはり断られた、というものでした。
 コメンテータたちは保健所の対応に憤っていましたが、どう見てもお年寄りは軽症、入院の話もせずにそのまま自宅療養となる人です。この程度の人まで検査にかけていたら、ほんとうに必要な人の順番はいつになったら回ってくるか分かりません。

 あるいは、もう一週間も高熱が続いていて、病院を三つも替えて保健所に連絡を入れてもらっているのにすべて断られている、という話もあって、同情しかかるのですが、よく考えたら高熱が続いた状態で三つも病院を変えてはいかんだろう、と思い直しました。かりに新型コロナだと分かったところで、何が違うのでしょう? 特効薬があるわけでもないのです。検査をもとめてドクターショッピングするくらいなら、一か所で継続的に診てもらう方がよほどいい。検査を求めてあちこち出歩くのもの困りものです。
 スタジオには専門の医者もいるのに、そのくらいのアドバイスがなぜできなかったのでしょう?


【一度手に入れたベッドは絶対に手放さない】
 韓国ではすでに日本の100倍近い勢いでPCR検査を行っており、感染者も4000人に迫ろうとしています。その結果何が起きたかというと、病院が満床になって入院待機が出てきたのです。土曜日にはその中から死亡者も出てしまいました。
 病院でレベルの高い治療・観察が受けられるとなれば、一度入院したひとは絶対にベッドを譲ろうとしません。食事も出て来ますし医師や看護師は家族に比べたらはるかに高い防疫対策をしているはず。家族にうつす心配もなく迷惑もかけないで済む――そんなすばらしいところが目の前にあって入院させてもらえないなら、悪い私だったら、
「入院させてくれなきゃ今すぐ駅に行ってウイルスをばらまくぞ、あちこちに唾をつけてくるぞ」
と脅します。
 もちろん私は“悪い私”ではありませんが、1万人にひとりの我がまま者が1万1700人もいるのが日本です。その中の十分の一がベッドを占拠しても1170床が使えなくなります。
 そうなるとほんとうに治療の必要な人も自宅で死んでもらうしかありません。

 ダイヤモンド・プリンセスの時もそうでしたが、3600人の移送先が確保できなければ全員を船に留め置くしかありません。同様に軽症者・無症状を含めて感染者を全員炙り出せということなら、それだけの収容施設を保障しなくてはならないのです。韓国のように毎日300人、500人と感染者が出てきても受け入れるだけのベッドを用意しておくとか、この程度の軽症者は絶対に入院させないという明確な基準をつくって厳しく守らせるとかいった準備をしない限り、安易に検査対象者を増やしてはいけないのです。
 非常に難しくきわどい話ですが、今は重症化しやすい感染者だけを拾い上げて入院させるという政府の方針を支持するしかありません。そんなことはだれだって理解できることです。


【マスメディアの実力を問う】
 メディアは一部の人々の不満を拾い上げては煽り、あとの責任はとりません。
 まだ横浜停泊1週間目くらいの時期から、ダイヤモンド・プリンセスの乗客のうち陰性の人だけでも早く下船させろと言い続け、2週間たって下船した乗客を「公共交通機関で自宅に帰すとは何事か」と非難するのがマスメディです。
 建設的な提案はなにもしません。

 今回の休校措置についても、唐突すぎると非難しきりですが、だったら3月第2週から休校にすると言えば誉めてくれたでしょうか? あるいはもっと早く、2月の中旬くらいから、「3月2日から休校とします」と予告しておけばよかったのでしょうか? 全国一律ではなく、新潟県や高知県のようにまだ感染者の出ていない都道府県では休校にしなくていいと弾力性をつければよかったのでしょうか?(新潟・高知は29日になって初めての感染者が出た)
 私には、とてもではありませんが考えられないやり方です。

 今は緊急事態です。それだけに政府・自治体の判断力が問われるときです。そして同時に、こんな時こそ、マスメディアのジャーナリストとしての実力を問われるときでもあります。 


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