2019/10/25

「『試験が始まったらトイレに行ってはいけない』は非人間的な規則か」  教育・学校・教師


 「試験開始後25分以内にトイレに行った者は欠席扱いとする」
 が問題となった
 重大な人権侵害として学校は謝罪し ルールは撤回された
 しかしこれは「生徒の生理現象に学校が介入するのはおかしい」
 といった類の話だろうか?

というお話。
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(「青空と学校校舎」PhotoACより)

【試験が始まったらトイレに行ってはいけない】
 10月20日の京都新聞に『テスト中にトイレ行ったら欠席扱い 高校が独自規則「生理現象への介入おかしい」の声』という記事がありました。それによると、
 滋賀県彦根市の彦根総合高で、定期試験で開始後25分以内にトイレなどで退出すると、欠席扱いにする決まりがあることが21日までに分かった。10年以上前からある独自の規則といい、識者は「生徒の生理現象に学校が介入するのはおかしい」と指摘している。
とのことです。

 うっかり見過ごしていたのですが、関連の記事はすでに10月10日にも出ていて(『試験中トイレ退室の生徒は1割減点 校長「非人権的な規則」と取材受け廃止に、滋賀の県立高』)、こちらはNHKの全国ニュースでも扱われ、
学校では中間テストが終わる11日、全校集会を開いて生徒に謝罪するという
と説明されたようです。
 謝罪と言うからにはこうした決まりをつくったことは「罪」だという認識なのでしょう。

 校長は「昔からの規則として取り扱っていたが、生徒にはトイレの我慢を強いることになり、人権上の配慮を欠き申し訳なかった」と話しています。


 世の中の人はこのニュースをどう評価したのでしょう?
 私は納得できません。


【トイレに行きたい子の人権を守れば公平性という別の人権が失われる】
 試験が始まったあとで受験生が次々と席を立ってまた戻ってくるようでは、公平性は保てません。
 すぐに頭に浮かぶのはこんなやり取り――。

「先生! トイレへ行っていいですか?」
「ああ、行ってこい」
「先生! オレもトイレへ行っていいですか?」
「待て。いま行ったヤツが戻って来るまで我慢しろ」
「そんなァ! オレはずっと我慢してたんです。それをアイツが先に言ってしまって・・・こんなの人権蹂躙です!」
「いや、二人同時だとカンニングが疑われるだろ?」
「先生はオレたちを信じないんですか? それこそ誹謗中傷、名誉棄損、人権蹂躙です」
「あの、なあ・・・」
「あのォ、お取込み中すみませんが、ボクもトイレに行きたいんですけど。ボクの方がさらに緊急事態です」

 校長が謝罪したことですから3人同時も認めるとして、試験が終わった後、
「先生! なんでアイツらのトイレ認めたんです。なぜ信用なんかしたんです? あいつら絶対に相談してるって、カンニングしてるって!」
 そんな状況を教師はどう凌いだらいいのでしょう。不信を強く訴える生徒をどうやってなだめたらよいのか。

 そんなバカな、と感じる方もおられるかもしれません。確かに全国的に話題となった今しばらくは生徒も教師も慎重になるはずです。しかし人が全部入れ替わってしまう数年後はわかりません。制度に抜け穴があればそこを突くのが人の常ですから。


【きちんと準備できるのは大切な能力じゃないのか?】
 ところで「テスト開始25分以内にトイレに行った者は欠席扱い」はそこまで不合理な決まりでしょうか? “欠席扱い”は重すぎるかもしれませんが“1割減点”くらいはやむをえない話だと思うのですがいかがでしょう?

 決まりがあるなら生徒は守るように努力すればいいだけのことです。試験前にトイレに行っておくとか、心配な子は前もって水分を控えておくとか。

 心因性頻尿の子などは予め担任と相談しておけばいいのです。病気だということで例外扱いしてもらえばいい。
 別室受験にしてもらうとか、それが無理なら試験前に身体検査をしてもらって何も持っていないことを証明してから試験に臨むとか。
 どうせ日ごろから1時間の授業も持たない子です(私がそうでした)、周囲の生徒だって「またアイツ、トイレか」で笑って済ませてくれるでしょう。
 〇〇君はこういう事情で例外とすると前もって言っておけば、それを許さないほど高校生は狭量ではありません。

 いずれにしても、ルールを熟知し、最悪の場合を考えて十分な準備をしておく――それは若いうちに学んでおくべき重要な能力の一つです。高校生になってもたった25分のための準備ができないようでは困ります。


【運命だとあきらめる】
 もちろん全く予期せぬ急な腹痛だとか、十分用意したはずなのに急激に襲ってきた尿意だとかも考えられないわけではありません。しかしそうなったら仕方ないでしょう。1割減点を甘受してトイレに駆け込むだけです。
 「1割減点」があれば友だちからカンニングを疑われる心配もありません。1割を減点で失って2割分をカンニングしてくるなどと誰も思ったりしないでしょう。気の毒がってくれるのがせいぜいです。

 部活の大切な大会の最中、急な腹痛に襲われたら選手交代で外に出してもらうだけで、よもや試合を止めて、全員に待ってもらうことなどありえません。
 好きになった異性を横取りされることだってありますが、ボクが先だと先住権を主張する人はいないでしょう。
 苦労して作った作品が一瞬にして壊れてしまうこともあります。

 人生にはそういうことはいくらでもあるのです。
 努力は必ず実を結ぶとは言えない、運の悪い時だってある、うまくいかなければ次の機会、人生はあざなえる縄のごとし――そういうことを子どものうちから学ぶのも悪くはないでしょう。
 もちろん入試のような決定的な場面での1割減は大変ですが、どうせ定期テストです。一回二回の失敗は取り戻せなくてはならないのです。

 これは「生徒の生理現象に学校が介入するのはおかしい」という類の話ではありません。ですから学校は謝罪などすべきではなかったのです。
 私はそう思います。



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