2018/11/14

「ゆとりですが何か?」〜羽生・大谷・藤井・梨花  政治・社会


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(ローレンス・アルマ=タデマ 「ホメロスの朗読」)

 エンゼルスの大谷翔平選手が大リーグの新人賞を取ったそうです。大したものです。心からお祝いを申し上げたいと思います。

 スポーツ界はこのところ活気にあふれ、10日(土)にはフィギュアスケートのNHK杯で16歳の紀平梨花さんがシニア・デビュー戦で金メダルというとんでもない成果を上げ、翌11日(日)には競泳の池江璃花子さんが100メートルバタフライで「世界女王」サラ・ショーストロムに勝利、さらにその翌日(12日)には錦織圭が宿敵フェデラーにストレート勝ちと、毎日、快挙の報せが届いています。

 その前の11月4日には卓球の伊藤美誠選手がスウェーデン・オープンで中国の強豪を次々と撃破して、12日も女子ダブルス決勝で伊藤美誠・早田ひなペアが王者中国を破って優勝しました。女子卓球界にはまだ平野美宇という、昨年4月のアジア選手権で中国勢を総なめにして優勝した選手もいます。

 さて――。


【1994年の奇跡】
 雑誌『文芸春秋』(12月号)には「『羽生結弦世代』最強伝説」という記事が載っていて、おもしろかったので少し紹介します。
 それによると今年スポーツ界を沸かせたアスリートたちは皆1994年生まれだというのです。

 ざっと羅列すると、スケート界からは羽生結弦、高木美帆。球界から大谷翔平、鈴木誠也、藤波晋太郎。サッカーで中島翔哉、南野拓実。競泳では萩野公介、瀬戸大也。バドミントンの桃田賢斗、奥原希望。パラリピアンではテニスの上地結衣。柔道のベイカー茉秋、プロバスケットボールの渡辺雄太。

 私は特にスポーツファンと言うわけではなくむしろ疎いくらいですが、その私でも全員の名前を知っているということは、いかにこの人たちが凄いかということです。
 ちなみにスポーツ界以外の1994年生まれを調べると、芸能界に川島海荷、宮沢氷魚、伊藤沙莉、福田麻由子、山崎賢人、二階堂ふみ、清野菜名、広瀬アリス、栗原類、など、これまた錚々たる陣容です(他にも拾い出せたのですが、私の知っている人だけにしました)。

 ではなぜ1994年生まれにこれほど突出した人材が集中したのか――それについて月刊文春はこんなふうに説明しています。

 専門家の間でひとつの理由として指摘されるのが、彼らが「ゆとり世代」だからではないか、というものだ。
(中略)
 1994年生まれの羽生世代は小学校2年生から「ゆとり教育」がはじまり、中学卒業までずっと続いた年代になる。小学2年生から完全週休二日制となり、学校生活に縛られないことで、子供たちがスポーツなど勉強以外の何かに打ち込みやすい環境になったという指摘がある。
 実際、大谷が少年野球チームに入ったのは小学二年生からである。
 また、ゆとり教育の目標のひとつに「子供たちの個性を伸ばすこと」があった。そのため、「ゆとり世代は集団行動をとることができない」という批判もあったが、裏返せば、個の力が増したとも言える。
 ゆとり教育はスポーツ界に効果があったという考え方は、あながち荒唐無稽とは言えないだろう。


 集団よりも個を伸ばすことに力点が置かれたから、というのはどうかと思いますが(ゆとり教育のために学校で、集団より個が尊重されたといったことはなかった)、完全学校5日制がスポーツや芸能に打ち込むのに有利だったことは間違いないでしょう。
 隔週土曜休みなどといった変則的な日程ではきちんとした練習計画など立てられません。完全五日制になって多くのスポーツ・芸能教室が経営として成り立ってきた事情もあります。

 そう考えると五日制の恩恵を受けたアスリート・芸能人は1994年以前にも、以後も、かなりいたはずです。


【改めて「ゆとり世代」】
 「ゆとり世代」の範囲については諸説あって、厳密に言えば“小中高等学校において2002年施行学習指導要領による教育を受けた人”ということになりそうですが、2002年に小学校に入学した95年生まれの子でも高校1年生からは「脱ゆとり教育」を受けていますから厳密な定義に当てはまる人はいません。

 ただし私の娘は1990年生まれで2002年を小学校6年生で迎え、中高は「ゆとり教育」の真っ只中で過ごしましたから、本人もゆとり世代だと思っているし周囲からもそう見られてきました。

 したがって大雑把に、高校3年間を「ゆとり教育」ですごした1987年生まれから、小学校に入学したときにまだ「ゆとり教育」をやっていた2003年生まれまでを「ゆとり世代」と呼ぶのが一般的なようです。年齢で言うと31歳から15歳までの人たちです。
 一番最初に名前を挙げた、紀平梨花、池江璃花子、錦織圭、伊藤美誠、早田ひな、平野美宇といった人たちはすべてここに入ってきます。

 年長の方から言えば、田中将大、前田健太、福島千里、香川真司、内村航平、入江陵介、福原愛、石川遼、松山英樹、石川佳純、浅田真央、大迫勇也といった面々も皆“ゆとり”です。AKBグループは全員、ももいろクローバーZ、きゃりーぱみゅぱみゅ、Perfume、佐々木希、堀北真希、長澤まさみ、岡田将生――芸能人は挙げたらきりがありません。

 学術・芸術面では今のところ五嶋龍、辻井伸行といった音楽家、史上最年少で直木賞を受賞した朝井リョウくらいで一般に名の知れた人は少ないですが、ピアノ、バイオリン、あるいはバレエなどの国際コンクールで毎年のように入賞者を出している現状をみると、彼らが一流アーチストとして活躍する日も近いはずです。スポーツ・芸能に比べると世に出てくるのが遅い領域です。

 ひとり重要なメンバーを忘れていました。ゆとり世代の異常ともいえる才能を体現する人、藤井聡太7段(2002年生)を落としてはいけません。


【時代は終わる】
 ゆとり世代は最強世代ではないか、ということは密かに語られてきたことです。そして今まさにその最強世代が終わろうとしています。
 政府も国民も、ゆとり世代の多様性・華々しさを捨て、地道で実りの少ない道を選んでしまったのです。
 卓越したコンピュータ技術者や英語使いを生み出すために、みんなで頑張ってプログラミングや外国語を学ぶ道です。世の中の大半はプログラミングも英語もほとんど必要ない人生を送るというのに。
 
 夏休みを減らされ、土曜日の授業を奨励され、おかげでスイミングスクールや少年野球に通っていた子どもたちは土曜日の練習に出られなくなり、夏も勉強漬けです。第二第三の藤井聡太を目指していた子どもたちも将棋道場は週一回と、そんなふうに自己規制をしなくてはならなくなります。

 私たちがバブルを語るように、今の若者たちは歳をとってから、
「平成の時代はほんとうに凄い人たちがいっぱいいたんだよ」
となつかしく自慢するに違いありません。




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