2018/5/18

「きれいは汚い、汚いはきれい」〜多少の不潔に慣れる教育2  教育・学校・教師



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「手を洗う子供」(photoAC)

【寄生虫が役に立つ】
 人間の体内に寄生虫(ぎょう虫や回虫)の成分を注入してアトピー性皮膚炎などのアレルギーを克服しようという研究が行われています。中国や東南アジアの国々で、寄生虫の罹患率とアレルギーの逆相関が報告されているからです。
“何万年もの間たえず人類の体内にいた寄生虫に対する防衛システムが、対象を失って暴走し、自分自身を攻撃してしまうようになった、それがアレルギー反応だ。だから寄生虫を戻せばアレルギーは治まる”
 それが研究を支える基本的な仮説です。ただしずいぶん前から言われているのにいまだに日の目を見ないのは、どこかに根本的な問題があってのことかもしれません。画期的な考え方だと思ったのですが、もうしばらく様子を見ることにしましょう。

 この研究のもっとも独創的な部分は、寄生虫が人間の役に立つのかもしれないと考えたところです。日本国内では昭和30年代半ばくらいまで「日本人は寄生虫によって滅ぼされるかもしれない」と言われるほど困っていましたから、誰も寄生虫が必要だなんて考えなかったのです。それでほぼ全滅に追い込んだ――。
 しかし人類誕生この方、私たちはこの地球の環境の中で進化を遂げてきたわけです。環境のどこかをいじると別のところに深刻なひずみが出るかもしれない、そう考えるのはある意味当然のことでした。


【きれいは汚い、汚いはきれい】
 もっと確実な例があります。それは手の上の雑菌です。これについては以前もお話ししましたが(2015/2/25「研究授業と手洗い・歯磨き・インフルエンザ」A)、人間の皮膚の上には表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌といった10種類を越える「常在菌」がいて、私たちを常に守ってくれています。

 常在菌は皮膚から出る脂肪をエサとして脂肪酸の皮脂膜をつくるのですが、この皮脂膜は弱酸性で、多くの病原菌は酸性の世界では生きられないのです。つまり皮脂膜はバリアとなって病原菌が付着するのを防いでいる――そんなふうに人類は体を守ってきたのです。
 もちろん常在菌も傷口などから体内に入れば問題を起こしますが、普通の状態で無害で、これを除去することは病原菌に対して無防備になるのと同じなのです。
 それが手をよく洗う人は風邪をひきやすいと言われる所以です。

 皮膚の常在菌は石鹸を使うと、一回の手洗いで9割までが洗い流されてしまうといいます。しかし残った1割は半日ほどで一気に原状を回復しますから、目安としては寝る前に風呂に入って石鹸を使い、翌朝バリアをほぼ回復して外に出かけるというのが適切なサイクルとなります。そのサイクルを越えて常在菌を流してしまうと、今度は無防備になった手ですから、むしろ果てしなく清潔にしていなければならなくなるのです。
 ノーマンズ・ランドになった手に新たに付着する菌は無害とは限りません。しかも高濃度の病原菌が着く可能性もあるので、理想的な手洗いは手術前の外科医並みになってしまいます。
 そんなことできるでしょうか?

 これについて書かれた『手を洗いすぎてはいけない』(2017 光文社)の著者、藤田 紘一郎先生によると、目に見える汚れがあるときは石鹸を使うものの、帰宅時やトイレを使った後は流水で10秒間、それで十分なのです。

 実際に時計で測りながらやってみると10秒はかなり長く、真冬に学校の水道でそれをさせるのも酷な気もします。ですから「手を洗いなさい」と口で言うだけで、いい加減な洗い方の子も指導しない、というのが現実的な対応なのかもしれません。
 トイレを使った後ですらまったく洗わないというのは、やはり印象が悪すぎますから、一応、声はかけておきましょう。


【結局保護者の姿勢】
 学校というのは常に忙しく、教師はめまぐるしく仕事をしていますから「口で言うだけで、いい加減な洗い方の子も指導しない」といった話をすると先生たちは必ず守ってくれます。他にやるべきことはいくらでもあります。

 問題はやはり家庭でしょうね。



                              (この稿、続く)


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