2018/3/12

「なんだか本当に不安になってきた」〜北朝鮮の情勢  政治・社会


 先週金曜日、北朝鮮情勢は急転直下、5月の米朝首脳会談まで取りざたされるようになりました。
 金委員長は朝鮮半島の非核化に前向きな姿勢を示し、米韓合同訓練にも理解を示すとともに今後の核実験や弾道ミサイル発射を凍結する、と約束してきたと報道されています。どう理解したらいいのでしょう、喜ばしいことなのかどうか――。

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【北朝鮮は譲歩したのだろうか】
 何かそんな気はしません。

 そもそも北朝鮮が米韓合同訓練を嫌がったのは、訓練がそのままアメリカの先制攻撃に移行することを考えてその間ずっと臨戦態勢のままいなければならない、相応の支出もしなくてはならないという事情があってのことで、5月に米朝首脳会談が決まればそれまでは攻撃もないわけで、目の前で大規模演習をされても枕を高くして眠れるわけです。
 その意味で「米韓合同訓練への理解」など、なんの譲歩でもありません。

 また「今後の核実験や弾道ミサイルの発射の凍結」というのも、ほとんどの実験は済んでおり、原爆の小型化や最終的なミサイルの再突入試験などはそこまで技術革新が進んでいなければ単なるお題目です。そもそも北朝鮮にとっては何の痛痒もないことなのかもしれません。

 さらに「朝鮮半島の非核化」というのは北朝鮮がかねてから言っている通りだとすると、自身の核放棄と米軍による核攻撃の可能性の除去ですから、徹底しようとすれば少なくとも在韓・在日米軍の撤退くらいはやらなくてはならない話です。ほとんど現実性のない話で、今まで言い続けてきた話という意味ではこれも“譲歩”ではありません。

 つまりこれまでと何の変りもない提案でしかもアメリカ大統領との会談を勝ち取ったのですから、北朝鮮外交の大勝利ということもできるのです。

 早くも朝鮮総連の機関紙・朝鮮新報では、
「分断の主犯である米国が繰り返してきた北侵略戦争騒動に永遠の終止符を打つ平和談判が始まろうとしている」
「トランプ大統領はすべての選択肢がテーブルの上にあるとして朝鮮に対する軍事行動の可能性を表してきた」
「しかし実際には米国の安全のために武力衝突を避け、核保有国の朝鮮と対話をすること以外に選択の余地がなかった」
「最高司令官(金正恩委員長)は『取引の達人』を自負する大統領(トランプ大統領)に歴代の前任者が繰り返した失策から抜け出す方法を提示し、決断を促すことになる」

と完全な上から目線。金委員長が水を向けたらトランプ大統領がまんまと引っかかってきたという論調で、そちら側に立って事態を見直すと、何やらそんな気もしないではありません。


【核とミサイルさえなくなればいいのか】
 北朝鮮は繰り返し「軍事的脅威が解消され、体制安定が保障されれば、非核化について米国と対話する用意がある」と言い続け、日本国内にもこれに同調する動きがあります。非核化とミサイル開発をやめてくれれば、体制は保障しようという動きです。
「とにかく戦争につながるようなことは絶対にやってはいけない」とか「一刻も早く北朝鮮の非核化を達成して、平和を取り戻したい」といった言い方で、テレビのワイドショウを見ていると各局のコメンテーターの中には必ず一人はそういう人がいます。

 しかし私はずっと思ってきたのですが、核とミサイルさえ放棄したら、ほんとうに世界は彼の国と普通のお付き合いを始めるつもりなのでしょうか?

 日本には拉致問題があるから別格ですが、仮にそれも解決したとして、それらの懸案がなくなったらこの国――大量の生物化学兵器と近中距離ミサイルを保有し、偽ドルをつくり、覚せい剤や麻薬を輸出し、サイバーテロで銀行から現金を盗み出すことをいとわない国、自国民を抑圧し、貧困を強い、情報を統制して選挙も行わず、収奪する一方のこの国、気に入らない者を次々と粛清し、ついには外国の空港で堂々と身内を暗殺するようなこの国と、ほんとうに仲良くしていくことができるのでしょうか?

 アメリカもヨーロッパ諸国も韓国も日本も、政府は北朝鮮の人権問題に切り込むことなく、国内から沸き起こる人権団体やマスコミや国民の声を圧殺して、平然と国交を回復し、平和条約を結び、金政権の安定を保障することなどできるのかということです。

 そんなこと不可能ですよね。


【結局の落としどころ】
 北朝鮮が核とミサイルを放棄したら必ず次は人権問題に手を入れる、独裁政治をやめて選挙を行えという、かつての後ろ盾、中国でさえ改革開放をやれと言っていたくらいですから、次々と北朝鮮に要求を突きつける、そうなるに違いありません。
 つまり世界の(少なくとも日米の)要求するところは最終的に「現体制の転換ないしは転覆」なのです。核とミサイルだけではありません。
 そしてそんなことは北朝鮮も百も承知のはずです。

 だから両者は絶対に交わることはない、今のままでは確実に話し合いにならない・・・そう踏んでいたのですが豈はからんや、お調子者のトランプ大統領が、北朝鮮の一番欲しがっていたものをすんなり差し出してしまいました。米朝首脳会談です。いったい何を話し合い決めようというのでしょう。

 何か本当に不安になってきました。

                                (この稿、続く)


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