2018/1/22

「過熱の要因=三位一体」〜アクセルを踏ませたまま、ブレーキをかけてはいけない 3  教育・学校・教師



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【親の問題、子の問題】
 部活動が過熱することに関して、親や子どもが責められることはありません。

 マスメディアは「学校」「行政」といった狭い範囲の人々を非難することはあっても、「保護者」「児童生徒」といった広範な読者・視聴者を敵に回すことはないのです。また「学校」「行政」は強者・支配者、保護者・子どもは弱者・被害者という暗黙の前提があります。

 部活動について保護者や子ども発言するとしたら、それは体罰やケガや過剰練習で子どもが苦しめられた場合だけで、部活のおかげで助けられた、顧問の先生によって救われたといった話はスター選手の昔話の中にしか出てきません。
 そのためとにかく教師・学校を抑えなくては部活動過熱の問題はどうにもならない、教師・学校を抑えさえすれば何とかなるといったいった思いが政府・マスメディアにはあります。

 しかしそんなことはないでしょう。普通は親も子も、部活動に熱中していきます。チームが強ければ強いほど、活動がしっかりしていればしっかりしているほど、みんながのめりこんでいく、それが自然な姿です。

 顧問が真剣になって部員も夢中になり、保護者も巻き込まれていく――そうした三位一体が部活動過熱の実態であって、どの要素が欠けても現状のようなふうにはなっていないはずです。

 しかしだからといって私も、保護者や子どもを非難しようとは思いません。
 親ならわが子の、子どもなら自分自身の、才能と可能性をとことんまで追求し花開かせたいと考えるのは当然だからです。むしろ喜ばしい。

 アルベールビルの銅メダリストで国会議員の橋本聖子さんは、子どものころから父親がべったりとくっついて指導した選手でした。そのお父さんは娘が中学生のころ、
「スケートに差し支えるなら、勉強はさせないでくれ」
と学校に申し入れたそうです。それも正しい道です。自己実現の方法は、何も学校の勉強だけではありません。

 来月始まる平昌オリンピックの選手や家族たちも、きっと同じように全員で盛り立て、苦労を分かち合ってきたに違いありません。将棋の藤井聡太四段、卓球の張本智和選手、みんな同じです。


【アクセルを踏ませたまま、ブレーキをかけてはいけない】
 さて、先週から三日間に分けて部活をやりたがる人々の話をしてきました。

 部活動を通してスポーツのすそ野を広げ、レベルを上げたいと考える人たち、
 悪の道に進みそうな子を何とか運動の力で引き留めたいと邁進する人々、
 私のように「子どもに恥はかかせられない」「惨めな思いをさせたくない」とそれだけの理由で頑張る人、
 子どもが成長していくことが、何より楽しくてしょうがない人たち、
 わが子の可能性を限りなく広げたい保護者、
 自分の能力を可能な限り伸ばしていきたい子どもたち、

 だから部活を自由にやらせろという話ではありません。
 彼ら全員が部活動過熱の犯人だということです。

 彼らが三位一体の全員がグイグイとアクセルを踏んでいる。エネルギーは常に追加され、充満している――、その状態でブレーキをかけようとする、休養日を設け、時間制限をしようとする、それは無理なだけでなくかえって状況を悪くする、アクセル全開のままブレーキをかけても本体が傷むだけという話です。


【彼らは抜け道を探る】
 エネルギーの進む先を抑えれば、充満したパワーはべつのところに活路を見出そうとします。縛ろうとすればするほど、三位一体の人々は抜け穴をつくろうとするに決まっています。これまでがそうでしたから。

 平日の部活動は2時間と制限されれば、地域に新しいスポーツクラブをつくり、帰宅後、改めて練習に出かければいいのです。クラブ員もコーチも部活と同じ。もちろん希望参加ですが、ライバルである仲間が参加しているのに、不参加を決め込むのは容易ではありません。
 休日の部活動が禁止なら、これもそのスポーツクラブで練習すればいい。地域の自主組織ですから学校や教委に報告する必要もない。

 言っておきますが、私はそんなやり方には反対です。教員にはやるべき本来業務があるからです。
 部活指導が終わった後、大急ぎで職員室を片づけて帰宅し、夕飯を食べてからまた8時からのスポーツクラブなんてまっぴらです。

 けれど隣町のライバル校の顧問がスポーツクラブを始めたと聞けば、私も落ち着きません。顧問である私が努力を惜しんだばかりに、自分の生徒がコート上でなぶり者になると思えば、やらざるを得ないのです。

 部活動のアクセルをそのままに、ブレーキをかければ、傷むのは間違いなく教師です(2018/1/4「更新しました」〜部活を外部に移管すると、教員がボランティアとしてこき使われる)。保護者や生徒も大変ですが、3年間我慢すれば卒業。しかし教師は果てしなくそのままです。


【ではどうしたらよいのか】
 解決策として私は、教員の数を増やし、学級担任は部活顧問をしない、部活顧問は学級担任を持たないというようにするのがせいぜいだと思っています。
 部活顧問も大変ですが、学級担任の仕事もハンパではありません。両方を同時にやろうとするから大変なのです。1校に配属される教員を大幅に増やし仕事を分担させる、それがある意味で一番現実的な考え方です。

 教員を増やせないなら外部講師に十分な手当てをつけ、部活指導と日中のアルバイトでなんとか生計が立てられるだけの道筋をつけてやるのも方法かもしれません。
 時給4000円で一日2時間、月25日間の就業なら月収20万円。これなら顧問をそろえる可能性もみえてきます。中規模の中学校で男女部活動が8つあるとしたら一校一か月160万円、年1920万円。予算がつけられるかどうか。

 部活動を学校から完全に切り離す可能性についても考えてみましたが、これもなかなか難しいことです。
 切り離したうえで、「少なくとも10年間、教員が地域スポーツにかかわることを禁止する」といった極端な方策でも取らない限り、どうやっても教師は取りこまれてしまいます。生徒や保護者からすれば、他に頼むところがないからです。

 また、教員を部活動や地域スポーツから遠ざけるということは、市立船橋高校時代の小出義雄監督から陸上競技を取り上げるようなものです。こうなるともう、“それはしてはならないこと”のような気さえしてきます。
(こうした話をすると必ず、「やりたい先生はやればいい」ということになりますが、私のような人間はどうしましょう。代わりにやってくれる人がいればやりたくないのです。いないので仕方なく一生懸命やっているのです)

 最後に、
 根本的な解決策として、全開のアクセルを緩める方法をひとつ。

 要するに教員・保護者・部員生徒の熱を冷まさせればいいのです。冷や水をかける。
 具体的に言えば都道府県大会を越える上位の大会をなくしてしまう。

 強豪チームは関東・東海などのブロック大会でも、さらにその上の全国大会でも勝てるよう、力を高めていきます。そのために私のような、せいぜいが市内大会を抜け出して地区予選(県大会の下位大会)に進めればいいといった程度の顧問でも、引きずられように頑張らざるを得なくなります(どんな相手にもボロ負けはしないために)。
 それが県大会止まり、県外の強豪と戦う可能性はないということになったらどうでしょう。
 強豪校も県大会レベルで終わり、それ以上に実力をつける必要はなくなります。それに合わせて下位大会のレベルも熱も、ぐんぐん下がっていくはずです。
 私の中学生時代がそれでしたから、よくわかります。

 もちろん全国大会がなくなれば全中スケートで鍛えられた小平奈緒や高木姉妹のような逸材は育ちません。でも金は出せない、人も入れない、(指導要領も変わるから先生たちには授業に集中してほしいから)部活動は制限したい、ということであれば、そのくらいの犠牲はやむを得ないでしょう。


 日数制限も時間制限も外部指導者導入も、口先だけで学校に丸投げするならやめてもらいたい。これまでそうだったように、事態はいっそう悪くなるだけだから、それが私の言いたいことです。






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