2017/7/31

「男の子ってヘビ、好きだよね」  教育・学校・教師

    〜毒蛇はどこじゃ?

 兵庫県の伊丹市で小学校5年生の男児がヘビに噛まれ、一時期意識不明になったというニュースがありました。
 朝日新聞(「男児かんだヤマカガシ?強い毒性 死に至る恐れも」2017年7月30日)によると「ヘビは一緒に遊んでいた友人らが捕まえてリュックサックに入れていたが」ということで、おそらく理解できな人は理解できないと思うのですが(私もホントは理解できない)、一部の男の子はホントにヘビが好きで困ったものです。


【ボクの大好きな生ごみ】
 思い出すのは教員になったばかりのころ、当時赴任していた中学校で行われた「地域清掃ボランティア」です。地域清掃といっても単に町をあるいてゴミを拾うだけなのですが、その最中一人の男の子が近づいてきてこう言うのです。
「せんせー! 生ごみも拾ってきていいですかぁ?」
 そしてビニル袋を振り回すので何かと思ったらヘビが入っていました。“生”には違いありませんが“ごみ”かどうか・・・。
 要するに人に見せて、相手が嫌がるのがとてもいいらしいのです。
 私が嫌な顔をして「捨ててこい」と言うとう、「うふふ」と笑いながらまた別の餌食(驚かすための相手)を探してどこかへ行ってしまいました。

 もっとも男の子がヘビを好むのは単に人を驚かすというだけでなく、男らしさを誇示したいという子もいればさらに単純に“滅多に出会えないものに出会えてうれしい”というだけの子もいます。ニュースになった伊丹市の5年生――特にリュックに入れて保管していた子など、その最後の典型的なタイプなのかもしれません。


【毒蛇はどこじゃ?】(←大昔のテレビCMのセリフ)
 私自身はヘビなんてちっとも好きではないのですが、あるとき、必死にヘビを探し捕まえたことがあります。小学校で担任をしていて、クラスの子が噛まれたときです。
 3年生の男の子で、休み時間に校舎のテラスで20pほどのヘビを見つけ、捕まえてしっぽを持ちグルグル振り回していたら、ヘビが首を反転させて手首に噛みついたというのです。
 私は室内で児童の日記を読んでいたのですぐに気がついて保健室へ連れて行ったのですが、養護教諭の第一声が、
「救急車を呼びましょう。先生! そのヘビを捕まえてきて!」
「え?!」

 それでヘビを捕まえに行くハメになったのです。好きでもない、というか基本的には見るのも嫌なヘビを、です。

 無知だったのですが、ヘビに噛まれたとき、一番最初にやらなくてはならないことは当のヘビを捕まえることなのです。ヘビの種類が分からないとそれが毒なのか、毒だとして何の血清を打てばいいのか分からないからです。
 特に海外の場合、それが決定的な生死の分かれ目になることがあるのだそうです。

 幸い、児童が噛まれた瞬間に私は近くにいましたのでヘビを目撃しており(なのに捕獲しなかった)、逃げた方向も見ていましたので一緒に探してくれた同僚にも詳しく説明することができました。
 またさらに幸いなことに捜索の結果、先にその同僚が発見・捕獲してくれたので私はビニル袋に入った「生ごみ」をもって病院に駆けつけるだけで済みました(それもすごく嫌だったけど)。
 ただし残念なことに、その「生ごみ」はまだ子どもでマムシかどうか判定できなかったようです。
「マムシらしいが違うかもしれない、そのうえ子どもヘビだ(だから毒はないかもしれない《?》)」
ということで血清は取り寄せたものの使うことはなく、一晩病院で様子を見て翌日には元気で家に帰ってきました。

「毒を持ったものもいるので、ヘビは見つけてもやたら捕まえてはいけません。遊び相手にしてもいけません。そもそも生き物のしっぽを持って振り回すのはイジメです!」
 翌日の私の学級指導ですが、内心、(だから田舎は嫌なんだ!!)とか思ったりしていました。


【三種の蛇器】
 そのとき調べたのですが日本には毒ヘビは三種類しか生息しておらず、沖縄のハブを別とすれば本土にはマムシとヤマカガシくらいしかいないようなのです。

 マムシは生息数も多く、ハブのほど好戦的ではありませんがその三倍の猛毒を持ち、毎年死亡例があるような危険なヘビです。気がつかずにうっかり踏みつけて逆に噛まれたりするのはたいていがマムシです。
 今回ニュースになったヤマカガシは毒性も低く(かといって死亡例がないわけではない)、臆病な性質で人間から攻撃されない限り噛むことはないみたいです。
 ただし被害例が少ないというのは困った面もあって、事例がないので血清を置いてある病院もほとんどないのです。以前調べたときには「全国に三か所しかない」ということだったと思うのですが、今回ネットで調べ直したら「ジャパンスネークセンター(群馬県太田市)に置いてあるだけ」という記述がたくさんあって、どうやらここに連絡して空輸してもらうのが一番確実な方法のようです。
 またヤマカガシは個体差もものすごくあって、赤い斑点のあるものからアオダイショウにそっくりなものまで千差万別。したがって噛まれても、無害なヘビと勘違いすることが少なくないみたいです。
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 やはり「噛まれたら、まず最初にすることに一つは当のヘビを捕まえること」のようです。
 私はもう真っ平ですが。
  
*写真は「ヤマカガシ−危険生物 MANIAX」からお借りしました。


*8月1日追記
 今朝のニュースで「ヤマカガシの毒はマムシの4倍」とか言っていたので慌てて調べ直したらやはり「マムシの3〜4倍の毒性で国内最強」だそうです。
 訂正し、お詫びいたします

(しかしとんでもないところで間違いを犯してしまった・・・)

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2017/7/26

「更新しました」  教育・学校・教師



「キース・アウト」

2017.07.26
夏休みも休めない、残業も「自発」…先生の「働き方」

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2017/7/21

「ご苦労様でした」  教育・学校・教師

     〜一学期終業式

 先生方、長い長い一学期、ご苦労様でした。
 とは言え、まだ来週いっぱい前期研修(校外)がありますからこのクソ暑い中、もうひと頑張りしなくてはなりませんが――。
 しかしとりあえず、終業式が終わって通知票さえ渡せば気は楽になります。
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 ところで今年の夏、皆さまはどんな計画を立てておられるのでしょうか。
 私は毎年毎年、夏休みに入ったとたんに「ああ今年も計画立て損なった!」と嘆いてばかりいました。夫婦そろって天性のケチですから立てたとしてもロクな計画ではなかったでしょうが――。
 今となればもっとたくさん海外旅行をしておけばよかったな、といったことは思います。そうすればもっと子どもたちに夢のある話ができたものを。

 さて、私にとってはさほど意味のあることではありませんが、今年も皆さまと同じように夏休みを取っておこうと思います。
 再開は学校の後期研修の始まる8月21日(月)ごろを予定しています。
 もっとも例年の通り、気になることがあれば明日にも記事をアップするかもしれません。気分次第というのも夏休みらしくていいですね。

 それでは皆様、暑い夏、どうぞお体にお気をつけてゆっくりお過ごしください。

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2017/7/21

「7・18NHK『クローズアップ現代+』のどこが微妙だったのか」A  教育・学校・教師

      〜いじめ問題は金で解決できる

 7月18日の「クローズアップ現代+」、「なぜ続く“いじめ自殺”〜子どもの命を救うために〜」は、最後にいじめ問題の根本的な解決につながるかもしれない取り組みとして、大津市の例を紹介しました。
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 大津は6年前、全国に大きく報じられることとなったいわゆる「中2いじめ自殺事件」のあった市です。市はこの事件に対する痛切な反省から「大津市 子どものいじめの防止に関する条例」を定め「大津市 いじめの防止に関する行動計画(地方いじめ防止基本方針)」を策定して二度と同様の事件を起こさないよう、「子どもをいじめから守るために二重三重の体制で対応」していこうしてきました。
「クローズアップ現代+」が取り上げたのは、そのうちの二つの制度です。


【「いじめ対策担当教員」と市役所「いじめ対策推進室」】
 番組では「いじめ対策の専門の教員」という言い方をしていましたが、大津市は市内の全小中学校55校に担任を持たない「いじめ対策担当教員」を配置し、日常的にいじめや、いじめに発展しそうな事例を拾い出し、対応する体制を取っています。

 一般に学校において「○○教員を配置する」といったら眉に唾をつけて調べなければならなりません。
「司書教諭を配置する」「特別支援コーディネーターを配置する」といっても必ずしも教員の数が増えるわけではなく、単に現有の職員に資格を取らせるだけ(その先生は忙しくなる)ということもありますし、「副校長を配置する」が「教頭を廃止する」と同じ意味であって結局やることも人数も変わらない、といったことがままあるからです(というかそれがほとんど)。

 しかし大津は実際に1名ないしは2名を増員しているらしく、番組は彼らが空き教室(体育や音楽の授業で生徒がそちらに移動して空になっている教室)を回って掲示物へのいたずらなどいじめの兆候がないかを確認したり、休み時間に起こった生徒間トラブルに即応して本人から話を訊き、必要に応じて担任たちを集めて対策会議を開いたりしている様子が映されていました。
 もちろん「担当教員」には生徒指導のベテランを当て、その不足分を市が増員した講師で補っているのです。

 そうした「いじめ対策担当教員」を各校に配置する一方で、大津市は市役所の中に市長が直接指揮を執る「いじめ対策推進室」を置き、弁護士・臨床心理士などによる4人の相談員を常駐させて常に第三者の目で学校をチェックしようとしています。
 児童・生徒・保護者も直接に相談ができ、内容に従って相談員が家庭に赴き、あるいは学校に働きかけて問題を小さなうちに解決しようとしています。
「クローズアップ現代+」ではこの制度について、市長の、
「学校の中の閉鎖的な組織から離れて違う見方をすることが大事」
という発言を紹介しています。「推進室」が市長直属、つまり教育委員会の外にあって外部からチェックするというところに大きな意義を感じているからでしょう。


【評価】
 私は大津市のこの取り組みを非常に優れたものだと感じています。
「いじめ対策担当教員」が発見して対応するのはいじめ問題に留まりません。児童生徒の悩みや人間関係のトラブル、家庭のこと、学業――問題が小さなうちならパッチをあてる程度で済みますが、傷が大きくなって開いてからでは縫ってもきれいに治るとは限りません。

 また市庁舎に「推進室」があって、子どもや親が直接相談できるというのも優れた仕組みです。教師の方がいくら敷居を低くしても、それが高すぎると感じる人はいくらでもいるからです。本来は教育委員会の中に置くべきものですが、“市教委による隠ぺい”が大きな問題となった大津市では難しかったのでしょう。「教委の外」ということが市民に安心感を与えているのかもしれません。
 とりあえず大津市のこの試みが、最低基準として全国に広まっていってほしいと、私も願います。


【しかしやはり「クロ現+」もダメだった】
――と、ここまでには大きな不満はないのです。細かな点で異論はあっても25分の番組ですべてを網羅せよとは言いません。
 しかしこの回の「クローズアップ現代+」はまったくビミョー。はっきり言ってまるでダメな番組でした。それは最後の10分間のまとめの部分で起きたことです。

「こうした取り組みを全国に広めていくための課題は?」
という司会者の問いかけに尾木直樹氏はこう答えるのです。
「大津のみたいに(学校に)ずーっと深く入っていくことを躊躇する首長さん、市長さんがおられるんですね。教育委員会は独自性を戦後ずうっと保ってきましたから、あまりにも介入してはいけないんじゃないかと考えている。
 また責任を持ちすぎて重荷になるのは嫌だなあと思われる市長も少なくないような気がします。命のことが第一ですから縄張りのようなことは言っていないで、やってほしいなと思います」

 私は最初、何が語られているのかさっぱり分からず戸惑いました。そしてようやく尾木氏やNHKが、大津市の取り組みの広がらない理由として、「首長直属の『推進室』が教育委員会の領域を侵すことへの首長自身の抵抗感」を考えているのだと気づいてびっくりしたのです。

 司会者はさらに
「いじめそのものをなくすためには何ができるでしょう」
と問いかけ、尾木氏はこんなふうに答えます。
「一番は大切なのは先生方の感性。先生方がパッと心が動いて、『ああ、あの子は笑っているけどつらいんだな』とパッと気づける感性。人間性豊かな先生になってもらいたいと思います。
 ところがいま労働問題などでも一日11時間半も働いているとか、もうこれでは完全に無理なんですね。
 だから社会的な支援というものをいろいろな形で、PTAもメディアも『社会的支援で学校をバックアップしているよ』ということを、メッセージで出していくことも重要です。スポット(広告)でもいいから『いじめなくしましょう』というのでも、テレビで流してもらえると嬉しいですね。
 そして人権が尊重される、誰もが安心安全な学校を作っていくという一点で、みんな力を出しててもらえると嬉しいと思います」
 
さらに、
「いじめをなくすことはできますか?」
「これは出来ます。世界の動きを見ていると必ずできます」


 ここまでくるとほとんど支離滅裂としか言いようがありません。

 結局教師の感性・人間性に帰納するとしたら、大津の例など必要ないはずです。しかも教師の感性・人間性を高めても
一日11時間半も働いているとか、もうこれでは完全に無理なんですね
という話になるなら、そもそも何のためにその話を持ち出したのか――。
 さらにその結果「労働時間を減らす」方向に話が行くと思ったらそうではなく、
PTAもメディアも『社会的支援で学校をバックアップしているよ』ということを、メッセージで出していくことも重要
 つまり声で応援していくという話になる――。それで
人権が尊重される、誰もが安心安全な学校を作っていけるものでしょうか?

 いじめをなくすことは――出来ます。世界の動きを見ていると必ずできます
 世界の動きが人権尊重に向かっているとは思っていませんでしたが、、トランプ大統領やプーチン大統領、金委員長やドゥテルテ大統領、移民の流入を嫌ってEUを離脱したイギリス国民、劉暁波氏を手厚く葬った習近平主席らととともに、私たちはいじめのない世界をつくっていくしかないのでしょうか?


【大津市のすごさ――いじめ問題は金で解決できる】
 大津市から学ぶべきことは、全国の首長は教育委員会の領域を侵すことを恐れず、直接介入して指導をせよということではありません。そんなことを言えば、教育勅語をやらせたい首長さん、国歌を全員にきちんと歌わせたい首長さん、あるいは自分好みの教科書を使わせたい首長さんなど、みんな喜んでホイホイ行ってしまいます。

 そうではなく、大津市の取り組みで最も優れていて他市町村が真似できそうにない点は、「いじめ対策担当教員」配置のために毎年2億円もの予算を当てて講師を確保しているということです。「いじめ対策推進室」が使う年間予算も合わせると、たいへんな金額がこの事業につぎ込まれています。

 しかもこの事業はうまく機能している限り“何も起きない”
 道路建設やイベント実施のように、“予算をつぎ込んだら何かが起きた”というなら説明しやすいのですが、“何も起きない”ことが成果だと説明するのは非常に難しい。
 仮に大津市のいじめ件数や不登校が大幅に減ったとしても、それが「担当教員」や「推進室」のおかげだということや、2億円の価値があるということを証明するのはとても困難なのです。
 それを大津市はやり続けている−―。
 皮肉な言い方をすれば2011年にあれほどの大きな事件を起こした大津だからできたことなのかもしれません。それでも他の市区町村に広げられないものか――そこが一番の課題です。
 30年もやっている一流の(と言われる)教育評論家なら、まずそこから答えるべきでしょう。

 私は尾木直樹という人がバカだとは思いません。ずるい人だと思っています。
「日本全国の市区町村は大津に倣って『いじめ対策担当教員』を配置すべきだ」などと言ったら日本中のどこからも講演会に呼んでもらえません。自分が招いた講師がそんなことを言い出したら、首長は困るに決まっているからです。
 逆に「首長はもっと直接的に学校教育に関わるべきだ」と言えば、喜んで声をかけてくれます。

 NHKもバカではありませんからそんなことは百も承知ですが、尾木レベルの評論家を最後に置かないと、番組が締まらないから来てもらったのでしょう。

 一番最後の司会者のまとめ、
「いじめをなくし子供の命を守ることは待ったなしの課題です。子どもを学校任せにするのではなく、私たちも当事者として、社会全体で支える段階に差し掛かっています」
 この言葉の虚しさは、そうした妥協から生まれたものなのかもしれません。


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2017/7/20

「更新しました」  教育・学校・教師



「キース・アウト」

2017.07.20
理科実験で爆音、生徒18人病院へ 加東の中学

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2017/7/20

「7・18NHK『クローズアップ現代+』のどこが微妙だったのか」@  教育・学校・教師

             〜取手事件から学ぶこと

 7月18日の「クローズアップ現代+」は「なぜ続く“いじめ自殺”〜子どもの命を救うために〜」というタイトルで、茨城県取手市で女子中学生中島菜保子さんが自殺した事件を通して、なぜ学校・市教委はいじめを疑わせる多くの証拠がありながら当初これを「いじめ」と認めなかったのか、どうすればいじめ問題の根本的な解決につながるのかを考える番組でした。
 子どもを亡くされた家族に一方的に寄り添うのではなく、学校・教育委員会などの立場も配慮しながら深く突っ込んでいこうとする意欲的な番組だったと思うのですが、それでもなお違っていた、ピントがずれていると感じたのでそのことについてお話しします。
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【取手市女子中学生自殺事件】

 取手市の女子中学生自殺事件というのは先月のこのブログで扱っており(2017/6/2「取手市教委で何があったのか」)、事件の概要はそちらにまとめてありますので参考にしていただければよいのですが、「クローズアップ現代+」はその中で、市教委が行ったとされる聞き取り調査を問題にします。調査用紙には「いじめ」や「自殺」という具体的な文言は使われておらず、そのために大切な証言が引き出せなかったのではないかというのです。
 例えば質問項目のひとつ、
「菜保子さんが学校生活で悩んでいるようだったのですが分かることはありますか」

 そこで当時調査に当たった教育長に質すと、子どもたちを動揺させないための配慮だったと証言するのです。
「あまりそのことがはっきり分かるような調査ができないというところに(生徒たちへの)配慮があったために、質問がぼやけてしまったり、もうちょっと突っ込んで調査もしなくてはならなかったと思う」
 このとき調査に当たった別のひとり、次のように言います。
「生徒にいじめの疑いをかけるということは非常に重たいかなと。いじめの疑いがあるとすると、生徒は『自分たちがやったことで亡くなったのか』と思うじゃないですか。何かあったときにも、生徒たちを決して犯人扱いしないのが原則なんです。目の前で見てないかぎりは。もし万が一間違ったら大変じゃないですか。」

 何かあったときにも、生徒たちを決して犯人扱いしないのが原則
 NHKもあとで同じ言葉を断定的に使っていましたが私はそうは思いません。目の前で起こらなかったことは不問というのでは正義は通りませんし、たいていの悪事は大人の見えないところで行われます。
 不問に付した陰で犯人がせせら笑っているようならその子に間違ったメッセージを与えたことになりますし、深く後悔しているのなら、そんな子に贖罪の機会を与えず放置するのはあまりに酷です。何かあった時には必ず犯人をあぶり出し必要な対応を行わなくてはなりません。


【調査が甘くなった理由】
 ただしそれにもかかわらず、私は徹底した調査をためらった学校や市教委が理解できないわけではないのです。
 菜保子さんが亡くなったのが中学校3年生の11月11日。翌月には調査結果がまとめられたといいますから、生徒への聞き取りは11月中旬から12月にかけてのいずれかの時期に集中的に行われたと思われます。しかしそれは私立高校では願書提出・入学試験も始まろうという時期です。
 学校や教委が極端に神経質になっていたのも分からないではありません。「受験をひかえた菜保子さんの個人的な悩み」という可能性に心惹かれたとしてもやむをえない側面もあったのかもしれません。

 もし万が一間違ったら大変じゃないですか。
の深刻さは、調査がこの時期でなかったら起こらなかったのかもしれません。もちろん間違ったら大変なのはいつだって同じですが、無実の者が犯人扱いされ、動揺して受験に失敗でもしたら取り返しがつきません。学校や市教委が犯人扱いしなくても、子どもたちが自らが「自分のあのときの一言が彼女を追い詰めたのかもしれない」と思い詰めるとしたら、それも心配です。
 
 もちろんだからと言って調査の甘さを認めるわけではありません。要はやり方次第ですから、調査にあたってはもっともっと慎重に、しかし遺族に寄り添うものでなければなかったはずです。


【もう一つの要素】
 「クローズアップ現代+」は学校・市教委・第三者委員会がいじめを認めなかったもうひとつの原因を拾い上げます。それは「いじめを認めるとそれが自殺の原因と認めることになりかねない」という組織の論理です。
 それをゲストの教育評論家尾木直樹氏が次のように補足します。

 そこにある大きな原因というのが、担任(自分)が責任を取るのは取れるけれども、でもこれは校長にも迷惑がかかるし、教育長にも迷惑かかると。結局は損害賠償とか係争になったときには、大変な金額の損害賠償も関わってくるということを、どんどん入れ知恵されてくると、先生方の口が固くなってしまって、悩みながらも本当のことが言えない、そういう状況に追い詰められてるというのが真相じゃないかなと思いますね。

 それはもちろんその通りかもしれませんが、それでは担任が(あるいは校長や教育長が)積極的に「いじめ」を認めることがいいことかというと、必ずしもそうは言えないと思うのです。

 十分な調査検証もしないでままいじめの事実を認め、いじめが自殺の原因だと暗示(または明示)することは、担任や学校が防ぎえた自殺を防がなかった認めることです。さらに言えばそこには必ずいじめの犯人がいますから、彼(または彼女)が被害者を追い詰め死に至らしめたと教師が(校長が、教育長が)断定することになります。
 これについてはもう何度も書いてきたのでこれ以上の深入りはやめますが、責任を取るべき範囲と人が明らかにならないうちになんでもかんでも認めてしまうのは、結局、不誠実であるのと何ら変わりがなくなります。

                              (この稿、続く)

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