2016/12/16

「成績を上げると意欲も自信も活動も落ちる?」〜PISA2015報道のまやかしと失望D  教育・学校・教師


 国立教育政策研究所の発表したPISA2015(OECD生徒の学習到達度調査)に関する報告はいくつかのファイルから成り立っていますが、全体を俯瞰した「PISA2015年調査国際結果の要約」がもっとも重要であり、「PISA2015年調査補足資料」がさらに細かな分析として付随しています。しかし「補足資料」は開けばわかる通り、副題に「生徒の科学に対する態度・理科の学習環境」とあってPISAの三つの柱(数学的リテラシー・科学的リテラシー・読解力)のうちの科学だけを取り上げて分析したものなのです(三つともやってくれればありがたいのになぜ科学だけなのでしょう)。
 しかし科学のみにしてもかなり面白い分析であって、各国の生徒がどんな環境にあってどんなふうに学んでいるか、四つの観点から示しているのです。

 ひとつ目は昨日あつかった「科学の楽しさ」――「科学の話題について学んでいるときは、たいてい楽しい」とか「科学についての本を読むのが好きだ」とかいったふうに、科学について知識を得たり学ぶことを楽しんで行っているかどうかという示す指標。
 二つ目は「理科学習に対する道具的な動機付け」――「将来自分の就きたい仕事で役に立つから、努力して理科の科目を勉強することは大切だ」とか「理科の科目を勉強することは、将来の仕事の可能性を広げてくれるので、私にとってやりがいがある」とか、つまり理科の学習が道具として自分の将来に役立つと感じているかどうかという指標。
 三番目が「理科学習者としての自己効力感」――「地震がひんぱんに発生する地域とそうでない地域があるのはなぜかについて説明する」「病気の治療で使う抗生物質にはどのような働きがあるのかを説明する」など、ある文脈で科学の知識を使うことができるという自分の能力への信頼。
 そして最後が「科学に関連する活動」――「科学を話題にしているインターネットを見る」「科学を話題にしているテレビ番組を見る」など、関連する活動に積極的に取り組んでいるかどうかという指標

 一般的には「科学は楽しい」と思っている子、動機づけの強い子、自己効力感が高く、科学に関する活動が多い子ほど成績もよい、と想定されると思います。
 しかし私はこれまでの経験から、成績の良い子ほど、科学なんて楽しいと思ってはおらず、生きていくうえで役に立つとも思わず自己効力感も低く、科学番組なんてあまり見ていない(そんな時間があったら勉強している、またはゲームをしている)と考えました。

「科学は楽しい」については昨日見た通り、私の予想が当たっていました。そこでほかの三つの指標についても、同じやり方で調べてみたのです。
 結果は以下の通りです(「科学に関連する活動」の下位、網掛けの部分はデータのない国・地域です)。
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 見ての通り、大枠で私の予想通り。
 成績の良い子は、科学なんてちっとも楽しいと思っておらず、役に立つとも、自分はできるとも思わず、科学番組や科学雑誌などにはほとんど興味を持っていません。おそらくただひたすら誠実に学習をしているだけなのです。
 特に日本はその傾向が強い、何しろ成績は全体で2位、OECD加盟国ではトップなのに、ほかの指標はほぼ最低なのですから。

 さて、ここまでやって「補足資料」を閉じようとしたら、最期のページに何の説明もなく、「表15『理科の授業の雰囲気』指標」というのが載っていました。
「生徒は、先生の言うことを聞いていない」「授業中は騒がしく、荒れている」「生徒は、授業が始まってもなかなか勉強に取りかからない」といった質問への回答の集計です。そのトップがなんと日本!――でドキッとしたのですが、この項のみ、点数が高いほど「そうではない」ことを表しているのです。つまり日本の学校で授業は非常に整然と行われている、しかも数値を見ると飛び抜けていいのです。
(どんなもんじゃいマス・メディア! 報道しろや!!)
 
 ではそのことと成績とはどういう関係にあるのか――。
クリックすると元のサイズで表示します とうぜん授業のしっかりしている国・地域ほど成績が良いはずだ、そう思ってつくったのが右の表です。

 呆れたことに、今まで見てきた中でこれだけが正の相関も逆の相関もなさそうなのです。
 そのためか、日本の学校の優秀さを示すデータなのに、どこのメディアも扱っていません。

                                (この稿、終了)




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