2016/12/14

「落日のフィンランド、顧みられないアジア」〜PISA2015報道のまやかしと失望B  教育・学校・教師


 PISA2015で明らかになったことのひとつは、かつて学力大国と言われたフィンランドの明らかな凋落です。

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 表はフィンランドの学力低下がもっとも顕著にみられる「数学的リテラシー」における上位15か国・地域の順位・得点ですが、すでにPISA2009でその予兆が見え、PISA2012で傾向がはっきりし、今回でもう二度とかつての栄光を取り戻すことはないだろうということが明確になったと言えます。点数としても最も高かったPISA2006に比べると37点も落ちています。

 PISA2006と言えば日本が大いに順位を落とし、「ゆとり教育の弊害」だとか言われて学校がものすごく叩かれたときです(実は「ゆとり教育」は始まっていなかった)。
 あのとき、遠いフィンランドくんだりまで出かけて行って、「フィンランドでは子どもたちに自由に討論させている」とか「テストはほとんどが記述式かレポート」とか「教師が全員院卒でものすごく優秀」だとか、あるいは「教育者としての教師の自覚の高さが学力を支えている」とかいって盛んに持ち上げた「専門家・識者・マスコミ関係者」の皆さま、反省していただきたい。

 あなたたちは見てきたはずなのに、
「フィンランドの小学校は9割が児童数『99人以下学校』で『49人以下学校も半数近くある』」
とか、
「その超小規模学校に担任教師以外に校長・教頭・学校カウンセラー・心理カウンセラー・ソーシャルワーカー・スクールナースと潤沢な人員配置がなされている」
とか、
「就学猶予が小学校や高校であって十分な力がない子は力がつくまで進学しないでいい」
とか、
「留年も多く、卒業延期も恥とされない。学校教育は無償なので留年が経済的負担になることもない」
とか、
「『教員資格は修士以上』と言ってもフィンランドの大学は(学部3年、修士2年の)5年制で、基本、大学を出た人はみんな『修士』。つまり教育改革で『修士が義務付けられた』というのは『大卒であることが義務付けられた』というのと同じ意味で、それまでは高卒でも正規教員になれた(「フィンランドの教育力」の著者がまさにそういう人。のちに大卒資格を取得した)。しかし非正規の講師だったら現在も高卒で可」
 とかいった情報は一切出さず、日本の教員の無能さ、意識の低さばかりをあげつらっていた。

 今、フィンランドの学力低下が明らかになってみなさまはひたすら黙っていますが、ほんとうはこういう時こそ語るべきでしょう、フィンランドは何を間違ったのか――。
(私自身は、2006年ころから始まった小規模校の統合政策がダメだったのではないかと想像しています。お金も気力もないので調べに行きませんが・・・)。


 PISAやTIMSSに関する政府・マスメディアのあつかいについて、私がしつこくこだわっていることのもうひとつは、あれほどフィンランドを持ち上げながら、もっと安定的に上位の成績を保っているほかの国や地域――具体的に言えばシンガポール・香港・台湾・マカオ、そして今回はやや成績を落としてしまいましたが上海・韓国など――について、ほとんど言及しないのはなぜか、ということです。。

 まさか「アジアなんかに学べるか!」とか「旧植民地や発展途上国なんて、見習うべき相手じゃない」「黄色人種じゃないじゃないか」とか、上から目線で見ているわけではないでしょう。

 これらの国に学ぼうとすると、「やっぱ小学校4年生からの進路別学級編成だよな」とか「苛烈な進学競争がないとだめかもしれん」とか「学歴社会にならんと子どもは勉強せんわ」とか、ろくでもない結論が出て来そうで怖いだけなのです。


                                  (この稿、続く)



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