2016/10/7

「公務員は手を汚さない」〜豊洲・五輪・全国学テ D  教育・学校・教師


 全国学テの成績を上げるために、半年以上前の今から準備をしてほしい、試験対策をしてほしいと依頼した3人の先生たちは、しばらくして私を訪れ、
「先生、あれから3人で検討しましたけど、あの『全国学力学習状況調査』テスト、試験対策によく馴染むんですよ。
 こう聞かれたらああ答えるとか、資料がいくつか出てきたらこうしろとか、あるいは(基本的なことですが)文章で書くところは絶対に白紙で出すな、2行でも1行でもいいから書いておけとか、基本的なノウハウを教えるだけですぐにできるようになりますから、大丈夫です。今からやっても無駄になりますから、今は今の勉強をしっかりやっておいて、試験対策は来年の4月に入ったらすぐにやりましょう」
 私は半信半疑でしたがこれといって代案があるわけでもないので先生たちに任せ、それきり口出しをしませんでした。

 翌年、蓋を開けてみると予告された通りの大躍進。市内15校中ダントツの最下位から、わずかに鼻差で敗れた第2位、ざっと13校抜きなのです。市教委からも担当者が飛んできて、
「いやあT先生(私のこと)、やりましたなあ。よく頑張ったねえ。すばらしいことだ」
と大はしゃぎ。しかし私は、ただただほっとしただけでした。もうあんな煩雑な反省文と改善計画書はまっぴらです。

 この件から私はいくつかのことを学びました。
 ひとつは、全国学テが「日常の学習をしっかりやっていれば確実に点数が取れる」といったものではないということです。それはとりもなおさず「学習指導要領の差し示すところと、『全国学テ』が要求するものとは異なる」ということに他なりません。

 第二は、しかし「全国学テは、それなりに訓練すれば成績を取るのはさほど困難ではない」という前述の話です。試験対策といっても、事前に数時間の特別授業を行えばいいだけで、さほど大変なものでもありません。また、試験を受ける態度の学習と思えば、あながち無駄な学習とも言えないのでしょう。

 第三は、「点数さえとっておけば誰も文句を言わない」ということです。今日まで、保護者が全国学テの成績について尋ねてきた例を、私はひとつも知りません。児童・生徒も受けた切り忘れてしまいます。何か月もたってから届けられる試験の成績など、あまり興味はないのです。
 気にしているの県や市の議員だけ、それに突き上げられる県教委・市教委も穏やかではありませんが、市民・地域の人々にとってもどうってことのないテストです。目くじらを立て、血眼になって取り組むような価値のあるものでもありません。


 報道によると4月20日、記者会見で当時の馳文科大臣は、
 今年の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)を巡り、成績を上げるために2月ごろから生徒に過去の問題を解かせていた地域があったと指摘し、「学力テストは点数の競争ではなく指導改善につなげるためのもの。本末転倒だ」と怒りをあらわにした。
といいます。
 学力テストを巡っては、指導に生かすという名目で過去の問題を解かせたり、学校で類似のプリントを作ったりしている自治体があると以前から指摘されていた。現場の教員からは「テストに備えるためのテストに追われ、授業時間が削られる」といった声も上がっている。
 こうした状況に馳氏は「うわさには聞いていたが、現場から憤りの声をいただいたことはなかった。基礎学力をどこまで身につけたか、その結果を受けどのような授業を展開するかといった、学力テストの本質を見失わないでほしい」と訴えた。
毎日新聞 2016年4月21日
 
 大丈夫です。全国学テに対する対応の仕方はだいぶ分かってきましたからこれ以上加熱することはないでしょう。

 ただし、それは現在の全国学テが日常の学習と切り離され、また高校入試や調査書と関連付けされていないからこそ言える暢気な話で、もしこれが「試験内容を教科書の範囲(つまり指導要領に示したもの)に限る」とか「試験結果は持ち点として、高校入試のひとつの資料とする」とかいうことになったら穏やかではありません。児童・生徒そして保護者が目の色を変えますから、教師もまた対応せざるを得ません。
 そのとき何が起こるか――。

 おそらく政府も議会も知っているから無茶をしないのでしょう。
 しかし万が一、日常の学習をテストに乗せ順位付けをしたら、日本の小中学生は息もできなくなってしまいます。日本の教員はまじめで熱心で、能力も高く手を抜くということをしませんから、とことん極限まで進んでしまうのです。
 70数年前は、そうやって子どもを戦場に送り積極的に開拓団に入れたのですから、今の教師だって子どもを勉強漬けにして潰すなど簡単にできてしまいます。
もっといい加減でチャランポランな教師になれとは言えない以上、教員をどう動かすかは政府と国民の考えひとつで決まると言ってもいいのです。


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