2016/9/16

「昭和歌謡とオタクが世界を救う」B  政治・社会


 私が高校時代に夢中になったことのひとつはエア・チェックです。エア・チェックと言っても乗用車や自転車のタイヤの空気圧を調べることではなく、ラジオ放送を録音し、聞いて楽しむことを昔はそう言ったのです(たぶん正しい英語です)。

 高価なレコードの買える時代ではなかったので、友だちは皆同じようにしています。そうやって歌を覚えたのです。今と同じで流行はめまぐるしく変わっていきます。ですから毎週きちんとやっていないとあっという間に置いて行かれてします。
 ビートルズにビーチ・ボーイズ、フランス・ギャルにサイモンとガーファンクル、レターメン、ジリオラ・チンクェッティ、フランク・シナトラにルイアームストロング、セルジオ・メンデスとブラジル66、ミッシェル・ポルナレフ――そう並べてみると、もう多彩と言うよりはほとんどメチャクチャです。
 ロックにカンツォーネにボサノバにシャンソン、ジャズ。
 若者に交じって一世代前のフランク・シナトラやルイ・アームストロングがいるのは「My Way」と「What a Wonderful World」があるためです。
今思い出してもわくわくするような、それでいてたびたび場違いな曲が入り込んできてノッキングを起こしてしまいそうな、不思議な時代でした。

 日本国内も同様で、テレビのベストテン番組はポップスと演歌とムード歌謡が交互に出てくるような、今から考えるとよくあれでやれていたなあと思うような不思議な取り合わせ。グループサウンズやアングラ・フォークは出てきませんでしたが、非行文化として排斥されたり逆に大衆文化として敬遠されたりと様々に事情はあったのでしょうが、番組として多様性も飽和状態だったというのが本当のところかもしれません。

 ところがそれが、洋楽については70年代からずいぶん整理され、イタリアもフランスもブラジルもいなくなり、コーラスグループも歌い上げるタイプもなくなって、今やロック一辺倒です。
 国内でもムード歌謡は死滅して演歌は蚊帳の外に連れ出され、AKBやジャニーズ事務所の寡占状態です。ジャンルとしてはKポップのJポップも確固たる地位を占めていますが、それとてアメリカン・ロックの亜流で、独自性という点では演歌や昭和歌謡とは比較になりません。

 本題にもどって、こうなるとアメリカン・ロック(イギリスも含む)にもJ-popにも乗れない人たちはどうしたらいいのでしょう? 生活のすべての面で、弱く、傷つきやすく、陰気で後ろ向きな人間は、どんな音楽を聴き、何に励んだらよいのでしょう?
 そこで、
「昭和歌謡とオタクが世界を救う」のです。私はそう思います。
「寂しい日本人は昭和歌謡を目指し、寂しい欧米人は“オタク文化”を目指せ!」――そういう言い方でもかまいません。

『水曜日のアニメが待ち遠しい』(誠文堂新光社)の著者のトリスタン・ブルネ氏は
「日本のアニメの大きな特徴は“共感”をベースにしている。そこでは、悪党さえも人間的に友人になり得たかもしれない人物として描かれる。僕が使う“親しみ”“共感”は、人間として認め合うことを基礎にした巻き込まれを指しています」
と言っています。それは最終的な“裁きの日(ハルマゲドン)”に善と悪、二者択一を迫られる欧米の文化には薄い要素です。

 昭和歌謡とオタク文化がすべてではありませんが、穏やかでもの侘しく、遣る瀬ないものも大切にしていきたいものです。




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