2016/2/26

「大学ランキングは美人コンテストである」b〜自分の目で見るD  教育・学校・教師


 世界大学ランキングは何をもって順番をつけているのでしょう?
クリックすると元のサイズで表示します 右は定評のある「タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)世界大学ランキング」の評価指標です。

「研究者の評価」というのが二か所に出てきますが、これはアンケートのことです。自分の精通している研究分野で、教育と研究の観点でそれぞれ優れていると思う大学を複数(回答欄は10大学まで)挙げてもらうという簡単なものです。したがってそもそも有名大学かどうかが問題となります。
「論文引用」は、各大学の研究者の作成した論文がどれくらい引用されたかという指標で、コンピュータのデーターベースから分析されます。優秀な論文ほど引用が繰り返されますから各大学の研究の質を示すと考えられています。
 他の項目については説明の必要はないでしょう。

 これをTHE2014―2015の東大に当てはめると、
1 教育   81.4
2 論文引用 74.7
3 研究   85.1
4 国際   32.4
5 産学連携 51.2
  総合評価 76.1

となります。

 極端に得点の低いのが「国際」ですので、そこから「国際化を急げ」とか「東大9月入試」とかいった話になります。具体的には留学生を増やし外国人教員の比率を上げることですから当然そうなるわけですが、表を見れば分かる通り「国際」の割合などたかが5%です。どんなにがんばっても順位を大きく押し上げる要素にはなりません。

 より重要なのは「論文引用」32.5%と「教育」「研究」の中にある「研究者の評価」あわせて34.5%で、大学ランキングの上位に英語圏の大学がずらっと並ぶ理由がここにあります。
 海外の研究者が参照するのは基本的に英文の論文ですから、母国語でしか書かれない論文の数多くある国(日本・フランス・ドイツなど)は非常に不利なのです。
 また、世界中の研究者の若いころの留学先となるとやはりアメリカが一番ですからアメリカ国内の大学は注目度が違います。
「教育や研究で優れた大学を」と問われて、鳥取大学や横浜国大(いずれも601位−800位)を思い浮かべる世界の研究者は少ないのです。逆に601位以下となるとアメリカの大学の比率が極端に少なくなってしまいます。もう数が残っていないという感じです。
 そう考えると東大の23位は飛び抜けて優れた成績と言えるのかもしれません。

*ちなみに「研究者の評価」をもっと高めるためには別の方法が必要だと考える人々がいます。「自分の精通している研究分野で、教育と研究の観点でそれぞれ優れていると思う大学を複数(回答欄は10大学まで)挙げてもらう」というとき、頭に浮かべやすいのは有名大学だと私も言いました。そのためには例えば「世界大学ランキング」を発表している「タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)」などの高等教育総合誌へもっと広告を出さなければいけないというのです。事実だという気がしないでもありません。

 さて、ここまで「統計の一部を出して間違った方向に誘導する」ということで政府やマスメディアを非難してきましたが、私自身が意図的にごまかした部分があります。それは昨日今日と扱った「THE世界大学ランキング」が最新版ではないということです。1年古い2015年版が扱い易かったので敢て使いました。最新版(2015―16年版)ではとんでもないことが起きて説明が複雑になってしまったからです。

 それは産経新聞の次のような記事で表されます。

【世界大学ランキング】
 北京大にも抜かれ…東大、アジア首位転落 京大も88位に後退(2015.10.1産経)
 英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が1日発表した今年の「世界大学ランキング」で、東京大は43位(昨年23位)と大きく順位を落とし、26位のシンガポール国立大(同25位)にアジア首位の座を明け渡した。42位の北京大(同48位)にも抜かれた。


「北京大にも抜かれ」――2001年の中国新聞と同じ発想です。あたかも「シンガポール大ならまだしも北京大に抜かれるとは(情けない)」と言わんばかりの記事です。
 ところでいったい何が起こったのでしょう。


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