2014/10/21

「富士フイルムの話」〜己の資質を見極めよう  政治・社会


「富士フイルムがエボラ出血熱対策に向けて治療薬アビガン錠を追加生産」という記事が出ていました。アビガン錠というのはインフルエンザ薬として日本で認可されている薬ですが、エボラ出血熱にも効果があるのではないかと期待されている薬です。
と、ここで「富士フイルムが薬を追加生産」について、あちこちから「?」が浮かんでくるかもしれません。

 まず、もしかしたら若い人には「富士フイルム」自体が分からないかもしれません。最近では「フィルム」と言えば液晶画面の保護フィルムとか、包装フィルムとか、ラミネートフィルムとかで、写真フィルムに思いが至らないかもしれないのです。
 そもそも「フィルム(イが小さい)」は知っていても「フイルム(イが大きい)」は知らない、昭和か大正の匂いがするといった方向に流れると、もう本筋には戻れません。「富士フイルムが薬を追加生産」と聞いて薬を何かのフィルムで包んだものを想像する人も出てくるかもしれないのです。

 一方、年配の人にとって、「富士フイルム」はかつて日本市場で「コダック」と並ぶ写真フィルム・メーカーでしたから会社は分かる、しかしそれが「薬を追加生産」の方が分からない、そんなふうになっているのかもしれません。

 案外この双方を理解できるのは中年の女性で、「『富士フイルム』は化粧品も作っているくらいだから薬も作っているのかもしれない」と自然に思いつくかもしれないのです。
(ちなみに、「コダック」と聞いて、若い人はポケモンのキャラクターしか思い出さないのではないかと私は恐れています)

 20世紀が終わり新世紀に入ったころ、世の中は一斉にデジタルカメラの時代に入ろうとしていました。写真用フィルムの売り上げが落ち込んでいく中で、「コダック」と「富士フイルム」はまったく異なる対応をして行きます。
「コダック」は自社の知的財産の中核をカメラ技術と定め、デジカメ市場へと切り込んでいきます。実際にデジタルカメラの発明者は「コダック」だったからです。しかし考えてみると“デジカメ”はレンズを除くと徹頭徹尾、電気機械です。その方面ではさらに技術を蓄積したメーカーがいくらでもあります。発明者は「コダック」でも電機技術となると電機メーカーの比ではありません。

 一方「富士フイルム」は自社の知的財産の中核を、画像フィルム、そして数千種に及ぶ化学薬品とその活用に求めたのです。
 画像フィルムの技術は液晶ディスプレイに使用される偏光層保護フィルムを生み出し、現在では世界で80%ものシェアを誇っているそうです。医療分野(画像、検査用機器等)などへの進出も激しく、世界のトップブランドのひとつにもなろうとしています。
 薬品に関するノウハウは化粧品を生み出すとともに、富山化学工業をグループに取り込むことで、本格的な製薬メーカーとして世界に君臨しようとしています(アビガンがエボラ出血熱の特効薬となれば世界に名を馳せます)。
 一方「コダック」の方は紆余曲折の末、昨年8月に倒産してしまいました。

 この話は昨年の「コダック」倒産の際に仕入れ、「己の資質を見極めよう」という題名で子どもに話そうと温めていたものです。温めたまま忘れていたのですが、今回、思わぬことから「記憶の倉庫」に行って掘り出してくることになりました。


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